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【借金返済への道】美食家の頼み

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【借金返済への道】美食家の頼み

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 琥珀亭の外では、シャーロットがバーベキューセットを出し、猪肉やキノコに串を打っている。
「バーベキューは美味しいのですぅ」
 なんとも楽しそうに調理をしていくのだった。

 厨房に場面は戻りまして、朝野 未沙(あさの・みさ)朝野 未羅(あさの・みら)が調理中だ。
「美味しく作ろうね!」
「はいの!」
 未沙はお吸い物の、未羅は焼きジャタ松茸の準備に取り掛かる。
 まずはお吸い物。
 沸騰したお湯に昆布をさっと通し、出汁をとる。
 軽く炙ってあるジャタ松茸を少し厚めに切り、出汁の中へと。
 醤油と塩で味を調える。
「うん、こんな感じだよね」
 賽の目に切った豆腐を入れ、三つ葉を添え、完成となった。
 続いて、未羅が1人で作る焼きジャタ松茸。
 これには生のキノコを使用するので、匂い袋を側へと置いておく。
 下処理の終わっているキノコを4等分に割く。
 塩、それから日本酒をさっとかけ、直火で焼いていく。
「あ、熱いの〜」
 焼けたら、更にキノコを裂いて皿に盛り付ける。
 添えるのをスダチ、醤油、三杯酢と用意して完成した。
「お互い美味しく出来たよね」
「お姉ちゃんは流石ですの。とても素早く出来ていたの」
「そんなことないよ〜。未羅ちゃんだって十分、手早かったよ」

「良いパラミタ猪の肉じゃないですか」
 織機 誠(おりはた・まこと)は丸々と太り、脂ののった猪を叩きながら、少し考え調理を開始する。
「やってみたかった料理があるんですよね。三国志の創作料理で本来は豚を使うって書いてあるんですけど豚もイノシシ科だから大丈夫ですよね」
 そういうと1頭丸ごとを使い料理を始めたのだ。
 腹を裂くと内臓を取り出す。
 空いた所に、食べられる内臓とチンゲン菜、パクチョイ、白米、ジャタ松茸、セロリ、塩を詰め込みタコ糸で縛る。
 ここに来て、場所を琥珀亭の外へと移す。
 コンロを置き、猪を炙れるように器具をセッティングする。
 頭からお尻に1本の棒を通すとくるくると回して均等に焼けるように調整していく。
 暫くすると良い香りが空京へと満ちて行く。
「上手に焼けました〜」
 焼き上がりを満足そうに確認してつい声を上げると後ろから拍手が起こった。
 人だかりが出来ていたのだ。
「あはは、どうも〜」
 いそいそと猪の丸焼きを中へと戻した。

 白衣を着て料理を基本から学んでいるのは一ツ橋 森次(ひとつばし・もりつぐ)だ。
 教えているのは何故か板前の格好をしたセシル・グランド(せしる・ぐらんど)
「何でボクが作る料理っていつも食べてもらえないんだろうね? 美味しいのに。だから今日こそ皆に食べてもらうんだ」
「森次の料理は美味しくないんです」
 面と向かってセシルが事実を口にするが、森次ににっこり微笑まれる。
「……ごめんなさい!」
 目を反らして謝る羽目になったのはセシルの方だった。
「料理が微妙なのは認めるから手伝ってね!」
 先行き不安な料理が開始されたのだ。
「普段、料理とかしているのに包丁の握り方も知らないのですか!?」
 セシルがびっくりして声を掛ける。
 森次は包丁をまるで誰かを刺すかのような持ち方をしていたのだから当然だろう。
「違うの?」
「こうですっ! 今までどうやって食材を切っていたのですか?」
 セシルは実際にやって見せる。
 森次はそれを習ってちゃんとした持ち方へと変える。
 基本を教わりながら、ジャタ松茸入りの茶わん蒸しは形になっていく。
「さ、あとは蒸すだけです。森次の器も入れて下さい」
「うん!」
 見た目はそんなに変わらずに出来ている。
 しかし、蒸しあがり、蓋を取ってみると何故か森次の作った茶わん蒸しは紫色をしていた。
「な、何故……」
 セシルは愕然とする。
「有難う! ここまで作れたのもセシルのおかげだよ、これ食べてみて」
 笑顔の森次に紫の得体の知れない茶わん蒸しをすすめられる。
「え、遠慮させて頂きます! 森次の料理で何度トイレに逝く羽目になったことか――」
 セシルがダッシュで逃げ出す。
 その後ろを茶わん蒸し(?)を持った森次が追いかける。
「ねえー! 食べてーー!」
「嫌ですーー!」

「よーし! ホィッピーの為に美味しいものを作っちゃうぞ〜!」
 響希 琴音(ひびき・ことね)は拳を上げて気合いを入れた。
「ん〜、キノコだから……シチューだよね!」
 暫くするとジャタ松茸、ジャガイモ、ホウレンソウ、ニンジン、猪肉、その他諸々を入れたシチューが出来あがった。
 何故かシチューの色は青色をしている。
「うん、見た目は悪いけど味は大丈夫! ……たぶん。皆のぶんも作ったし振る舞うの楽しみだな〜」

 こうして全ての調理は終了したのだった。