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魅惑のダンスバトル大会 IN ツァンダ!

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魅惑のダンスバトル大会 IN ツァンダ!

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◇序章 真偽 −1−◇

「ねぇねぇ、荘太。僕、この大会に参加したいんだけど?」
「んっ、何?」
 バイトから疲れて帰ってきた瀬島 壮太(せじま・そうた)はパンの耳を食べていた。そして、モグモグと口を動かしながらも、パートナーのミミ・マリー(みみ・まりー)の方へ視線を向けると、引っ込み思案のミミが一枚の一枚のチラシを手にしていた。そこには『魅惑のダンスバトル大会 IN ツァンダ』と書かれている。
「……魅惑のダンスバトル大会? やめとけよ。つまんなーそーだぜ」
 頭の悪そうな文章と軽薄そうなルール。考えた奴をシメてやりてーけど、荘太はミミを養うためのバイトで忙しい。
「そう……」
 ミミは荘太の言葉を聞くと部屋の隅に座り、壁に向かって独り言を呟き始めた。ブツブツとハンバーガーがどうのこうのと語り、時折、笑う。その居た堪れない空気に荘太は決意するしかなかったらしい。
「わ、わかったよ! 参加、参加してやるから!! お前もメシを食え!」
「ほんと? やったぁ!!」
「でもよ、ダンスなんて……俺は踊った事ないし、どーすんだ? まぁ、俺はミミの好きな踊りでいいけどよ」
 悪ぶっても引っ込み思案のミミが、自分から大会に出たいと言い出したのを喜んでいたのは【友達思い】の彼ならではだろう。
「大丈夫だよ。僕、もう踊りも歌も決めているんだ」
 ミミがビシッと指差した先にはモニターがあった。それを見た荘太はパンの耳を咥えたまま固まってしまう。ミミの指差した先、そこにはネット配信の子供向け番組『オネイサン☆TO☆いっしょ』が映し出されていたのだ。
「マ、マジデェッツッツッツ〜ッツ!!!?」
「マジだよ☆」
 どうやら、荘太はミミに支配されてしまっていたらしい。

 支配……
 『この世の中は多数の真実と少数の大きな偽りで支配されている』
 太古の昔、この世の中の仕組みに気づいた賢者が言った言葉である。

 ――我(藍澤 黎(あいざわ・れい))がこの大会の話を聞きつけ、関係者と話合いを行ったのは何時であっただろうか? 心に激しい怒りを感じたのを覚えている。だからこそ、我は少々手荒な手を使い、解説者として潜り込んだのである。
 同じ頃、我のパートナーであるエディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)は会場にいた。エディラ(エディラントの呼び名)には厳しく不正行為を見張り、大会のサポート全般を行うように話しておいた。
「オレだって、やれば出来るんだもん。……みてろ〜!」
 まだ経験の少ないエディラは仕事に一生懸命であった。この時点では一部の人間を除いて、エディラも参加者も誰一人知らないであろう。大会の始まる前に優勝者が決まっている。この大会は『出来レース』だと事実にだ。

 そんな事とは露知らず、無邪気な『彼女』らは日の当たらない僅かに黴臭いジメジメとした校舎裏で揉めていた。
「ちょっと、ちょっと待ってよ! 喧嘩しないで!! 痛い、痛い、痛い!!」
「そうだよ。みんな仲良くしようよ!!」
 張り詰めた空気を切り裂くように小谷 愛美(こたに・まなみ)マリエル・デカトリース(まりえる・でかとりーす)は叫んだ。それも仕方がないだろう。なんと、十人までしか組めないチーム編成なのに愛美とマリエルの周りには――
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)
 飛鳥井 蘭(あすかい・らん)
 クロード・ディーヴァー(くろーど・でぃーう゛ぁー)
 朝野 未沙(あさの・みさ)
 朝野 未羅(あさの・みら)
 朝野 未那(あさの・みな)
 シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)
 雨宮 夏希(あまみや・なつき)
 トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)
 風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)
 テレサ・ツリーベル(てれさ・つりーべる)
 の計十二人ものメンバーが集まっていたのだ。

「どうしてぇ〜? 掲示板に書き込んでおいたのは私たちだけでしょ!? 皆、愛美さんとマリエルさんから離れてよ!!」
 朝野 未沙が声を張り上げながら、愛美の左腕を引っ張った。
「何を言ってるの!? 愛美は未沙たちのモノじゃないでしょ!!!」
 自分が目立つこと大好きな小鳥遊 美羽も負けてはいない。反対から愛美の右腕を引っ張って未沙に渡さない。
「ほほほっ、愛美とマリエルはわたくし達と一緒に踊るのよ!!」
 一緒に踊る相手を探していた飛鳥井 蘭は愛美の左足を引っ張ると愛美のスカートが捲れ、彼女の純白の下着が姿を……
「ちょい待ち!!!」
 愛美のパンチラを制したのはトライブ・ロックスターだった。トライブは善でも悪でも筋の通らない事を嫌う義理人情に厚い狭義の人でもある。もちろん、そんなハレンチな事は許さない(かもしれない)。
「皆、待てよ。俺は襲ってくる不届き者共から愛美たちを守る為にこの大会に参加しよーと思ったんだ。お前らも愛美たちと一緒にこの大会を楽しみたくないのか?」
「そうだよ。僕もトライブの言うとおりだと思うよ!」
 声を大にして叫ぶのは風祭 優斗である。孤児院育ちの彼は困っている人を見ると自然と手助けをする癖があった。だから、このような揉め事はほおっておけないのである。
「しっかし、どーすりゃいいんだ? 大会のルールは十人まで。それ以上は失格なんだぜ?」
 シルバ・フォードは当然の言葉を口にした。残念ながらメンバーの予想よりも愛美とマリエルが人気者すぎたらしい。だが、このままでは大会に参加する事が出来ないのも事実だ。すると、朝野 未沙のパートナーである朝野 未羅がこんな事を言いだす。
「……こうなったら、アレしかないのー!!」
「アレ……ですか?」
 小鳥遊 美羽のパートナーであるベアトリーチェ・アイブリンガーはキョトンとしながら答えた。果たして、【アレ】とは如何なる事であろうか? それにはこの先を語らなければならないだろう。
 この世のほとんどは出来レースで造られている。
 しかし、まだ状況は流動的だ。もちろん、これから先はどのようにでも変化するのだろう。