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リアクション
■□ 試練 その3 □■
【只今より、東エリア東門付近に居る桜の森公園の精・さくらが鍵を配布します。園内のどこかに設置された10個の宝箱のカギ穴に貰った鍵を入れればオニの解放を阻止できます。開かなかった宝箱一つに付き10人オニが追加されます。】
【ただし、鍵は一人ひとつしか受け取れません。制限時間は十分です。】
「東だね!」
丁度東エリアで待機していた騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が喜びの声を上げた。制限時間は短い。ダッシュローラーで一目散に東門へと向かう。果たしてそこには、ピンクの髪に白いワンピース姿の、五歳ほどに見える地祇の女の子が偉そうに腕を組んで仁王立ちしていた。会場となっている桜の森公園に住まう地祇である。
「早かったわね、はい、どうぞ」
偉そうに鍵を差し出すさくらから鍵を受け取ると、詩穂はさくらの正確な位置を一斉メールで送信する。
その際に、「東西の陣営の区別なく掛からないと全滅しちゃうよ!」とメッセージを添えて根回しすることも忘れない。なにせ全て開けることが出来なかった場合オニ100人追加だ。どこから100人も集めたのだろうか。
「さて……どこから探そうかな……」
トントン、とダッシュローラーを装着した足を鳴らしながら考えていると、詩穂の銃型HCがメールの着信を告げる。
開いてみると、参加者の一人から宝箱を見付けた、という旨の連絡だ。恐らく、さくらの元へ向かう途中で見付けたのだろう。丁度東エリアの情報だ。詩穂は鍵を握りしめてそのポイントまで向かった。
その様子をじっと見詰めている、傀儡が居た。
シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)の操る傀儡だ。傀儡には小型のカメラが取り付けられており、傀儡の見ているのとほぼ同じ景色がシオンの携帯へと送られている。
シオン自身は西エリアに身を潜めているが、パートナーの月詠 司(つくよみ・つかさ)へと携帯電話で連絡を取る。
「ツカサ、そっちの方向に一人いるわ」
「うん、分かったよ」
シオンの指示で黒サングラスに加えて黒いスーツを着込んだ司は、東エリアに居た。携帯からの連絡を元に、参加者を追う作戦だ。
「……ところで、追いかけるのは好いけど――別に、お持ち帰りしてしまっても良いんだよね?」
携帯を切ってから司はニヤリと呟く。
それから、軽い足取りで情報を貰った参加者――詩穂の元を目指す。
司が詩穂を発見した時、詩穂は丁度宝箱に鍵を差し込んでいる所だった。
「発見ー。うん……可愛い子ですね」
詩穂の姿をじっと観察して呟く。と、その異様な気配を察したか、詩穂が顔を上げた。二人の目が合う。……サングラス越しに。
「目が合った……! 運命的ですね!」
得意の妄想を爆発させ、司は潜んでいた物影から躍り出る。何かおかしいその雰囲気に、詩穂は咄嗟に踵を返して走り出す。
が、見る間に二人の距離が縮まっていく。
このままではまずい、と判断した詩穂は、ぱっとその場にしゃがみ込んだ。
そして、両の腕に装着していたリストバンドを外す。すると、どん、どぉん、と二つのリストバンドが、重たい音を立てて地面にめり込んだ。片方実に五十キロある。
重石から解き放たれた詩穂は、先ほどまでとは比べものにならないスピードで走り出した。
一瞬呆気にとられた司は、その一瞬が仇となって見事に巻かれてしまうのだった。
【一つめの宝箱が開きました。残り九個】
さて、先ほど偶々見付けた宝箱の情報を一斉送信したザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)もまた、さくらから鍵を受け取っていた。
先ほど情報を流した宝箱は誰かが開けてくれた様だが、ザカコのトレジャーセンスが、まだこの辺りに宝箱があることを告げている。
ザカコは光学迷彩を展開した上でバーストダッシュを使い、極力オニに発見されないように東エリアを探索する。
すると、花壇の影に隠された宝箱を発見することが出来た。
急いで宝箱を解錠する。
が、宝箱に気を取られて光学迷彩が緩んだ。しかも運悪くそこに通りかかった黒サングラス。
「……まずいですね……」
オニとばっちり目が合い、ザカコは苦笑を浮かべる。
オニの足がこちらへ向くと同時に立ち上がると、光術を炸裂させる!
サングラス越しとはいえ目を眩ませるには十分な光量で、思わず足を止めるオニ。その隙にザカコは、バーストダッシュで一気に距離を取ってその場を逃げ出した。
【二つめの宝箱が開きました。残り八個】
詩穂が流したさくらの位置情報のお陰で、鍵の受け取りは割合スムーズに進んでいる。
火村 加夜(ひむら・かや)もまた、さくらから鍵を受け取った。
トレジャーセンスを持つ加夜は、自分のセンスを信じて北エリアへと向かった。
東エリアの情報が回っていたことと、二つの宝箱が開いたという情報から考えると、既に東は数人が探索しているだろう。
この辺りか、と思い切ってエリアを絞って探してみれば、それらしき箱を木の陰に見付けることが出来た。が、タイミング悪く、付近を一人のオニがうろついている。
「なんとか居なくなっていただけないかしら……」
じれったい思いで物陰に潜んでいた加夜だったが、そうだ、と名案を思いつく。
ミラージュが発動するギリギリ遠くに自分の影を映し出す。そして、それがオニの視界に入るよう……かつ、本体はオニの視界に入らないよう、上手く木や植え込みを使って移動する。そして、オニが走り出す足音が聞こえると同時に素早く影が植え込みに突っ込むよう移動して、ミラージュを解除した。
それからオニが植え込みを探している隙に宝箱の元へと戻ると、手早く鍵をカギ穴へと差し込んだ。
【三つ目の宝箱が開きました。残り七個】
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