リアクション
■□■ (ようやく、ここまできました) ヒラニプラ郊外の小さな建物の前で、 ルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)は感慨にふけっていた。 周りには自分の子供と身寄りのない子供たちが一緒に遊んでいる。 子供たちはルースの孤児院で引き取ることにしたのだ。 教導団を辞めたルースはこの10年間、妻のナナと共に、 孤児院という夢に向かってまい進していたのだ。 もちろん、自分たちだけで出来た訳ではない。 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)をはじめとする 教導団時代の仲間の協力もあったのだ。 そうして得たこの孤児院は、ルースにとっては自らの人生も同然であった。 (愛する妻と子供たち。 ……この日々が永遠に続いてくれればいい。 俺は今、確かに此処で必要とされている、愛されているのだから……) ルースに初夏の風が優しく吹き付ける。 それはまるで、夢の叶ったルースを祝福するかのようだった。 ■□■ 百合園女学院・ユグドラシル校。 放課後になった学校から女生徒たちが溢れだした。 「七瀬先生、さようなら!」 「さようなら、また明日ね。 留学先考えておいてね」 「分かりました!」 百合園女学院の教師となった七瀬 歩(ななせ・あゆむ)は この10年間で各地に作られた分校を飛び回っていた。 静香帝国(後述)の成立により、百合園女学院は世界中に広まった。 でも、歩はそんなことはどうでも良かったのだ。 (10年前も今も、世界から争いはなくなっていない……でも) 各地にある百合園女学院で育ち、絆を深めた生徒たちが政界や社交界に出た時、 世界は変わるのではないかと思うのだ。 そのために歩は率先して各地の百合園を巡り、 学校間のネットワークはもちろん、 生徒たちが気軽に各地の分校に留学できる仕組みを整えてきた。 (世界は広いけど、人の絆はどんな距離があっても切れることはない。 だから、みんな。たくさんの友達を作ってね) 去りゆく生徒たちを、歩は慈しみを込めながら見つめていた。 |
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