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【4周年SP】初夏の川原パーティ

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【4周年SP】初夏の川原パーティ

リアクション

 川の家『若葉休憩所』にて、アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)は売り子を担当していた。
「アレナさん、次はこっちのユニフォームを〜。あ、脱いだ服は畳んで籠の中に入れておいてくれよぉ、売り物だから、持ち帰らないでくださいねねね♪」
 若葉分校庶務のブラヌ・ラスダーがアレナに可愛らしいブラウスとスカートを渡す。
 ブラヌ達にアレナは頻繁に着替えさせられ、写真を撮られていた。
 集客目的なんだそうな。
「他にも理由ありそうだがな」
 レン・オズワルド(れん・おずわるど)が苦笑する。
 レンは水着売りを……担当しているわけではなく。
 彼は救護スペースを設けて、気分が悪くなった者、怪我をした者の介抱に当たっていた。
「楽しんでいるか? 体調はどうだ」
 レンがアレナに問いかける。
「はい、楽しいです」
 そう答えるが、アレナの顔に笑みはない。
 ……先ほど。
 先日優子をランチに招いた時、彼女と話したことを、レンはアレナに話して聞かせていたから。
「……レンさんは小難しい顔をして怖い印象を受けますけど、本当にアレナさんのことを心配してるんですよ」
 ノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)がそっとアレナに近づいて言う。
「アレナさんだけじゃなく神楽崎さんのことも」
 そしてその周りの人達のことも――。
「きっとパラミタ大陸全ての「若い人達」のことが心配なんですよ。
 だからちょっとウザいですけど、相手してあげて下さ――痛っ、痛い痛い痛いーっ」
 話の最中。
 ノアの頭をレンが拳でぐりぐり、ぐーりぐり!
 ノアは悲鳴を上げて、逃げていった。
「ちゃんとした治療を受けるか? それともやめておくか?」
 救護スペースで治療を担当しているリィナ・コールマン(りぃな・こーるまん)もアレナに問いかける。
「その時間を私に与えてくれるか? 今この場で決められないのであれば神楽崎と相談の上で決めてくれても構わない」
「……あの、今日はパーティするために集まったので、皆さんも楽しんでください」
 その話はまた今度。
 アレナはそう言うと、仕事に戻っていった。
 また、先ほどリィナはアレナの封印を解除した人物について聞いたが、軍病院でのことについては、アレナは知らないとのことだった。5000年の呪縛からは、優子との契約の力で解き放たれたそうだ。
「アレナさん」
 窓から声が響いてきた。
「キャンディスさん」
 アレナは少しぎこちない笑みを見せた。
「あれ? キャンディスさん濡れてます」
「ちょっと、イロイロあったのヨ」
 キャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)は豪華なろくりんくんの着ぐるみを重ね着して、カンゾー主催のかき氷早食い大会に出場した。
 しかし、着ぐるみの間に流し込んで食べる量を減らすというズルがバレてしまい、失格となってしまった。
「いい場所みつけたのヨ。あとでちょっとお話シナイ?」
「あ、はい」
「アレナちゃん、休憩いっておいで。今空いているし」
 ゼスタ・レイラン(ぜすた・れいらん)がかき氷を作りながら明るい声でアレナに言った。
「はい、ありがとうございます」
 ぺこっと頭を下げて、アレナは外へと出ていく。
「…………」
 客席からはリーア・エルレンが、笑みを消してアレナを見ていた。

「!!!」
 奥の席の方に避難していたノアは、エリュシオンの第七龍騎士団の騎士達がいることに気付いた。
 そおっとレンの方を見るが、レンはこちらに目を向けることなく作業に戻っていく。
「レンはそこまで馬鹿じゃないですよ」
 そうノアに笑顔で声をかけたのは、メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)だった。
「は、はい……」
 ノアはドキドキレンを見守っている。
 レンが龍騎士団員と喧嘩をするのではないかと心配して。
「こんな所で喧嘩をすれば、これまで信頼してきてくれた人達やギルドの皆を裏切ることになるから……。
 だから安心してください」
 微笑んで、メティスはぽんと、ノアの肩を叩いた。
「はい……」
 ノアは大きく息をついて自分を落ち着かせると、メティスと一緒に救護スペースに戻っていった。
 レンは龍騎士団員の方は見ずに、無論挨拶することもなく、次の休憩時間までの間、介抱に専念していた。

 キャンディスはアレナを川原を見下ろせる高台へと連れてきた。
「花火見物の特等席だけど、今は誰もイナイネ」
「はい……。皆さん、楽しそうですね。後で私達も美味しいもの食べましょう
 川原でパーティの準備をする人々。
 釣りをしている人達や、巨大魚と戦っている人達を、アレナは楽しそうに眺める。
 特に優子の姿を。
 こうしてのんびり見ていることが、アレナはとても好きだった。
「ゆるキャラの、キャラの寿命は10年と言われてる。
 次のろくりんピックが最後になるかもしれない――もたないかもしれない」
 共に人々を見ながら、キャンディスは語る。
「でもそんないつ来るか判らない事を考えても仕方ないので、今できることを頑張り今日を楽しむ。自分が楽しまないと見てる客さんも楽しくないから」
 アレナの目が、キャンディスに向けられる。
 キャンディスも、アレナに顔を向けた。
「大事な、そして使命である『ろくりんピックに殉じ』る。
 そいう覚悟があれば道は開けるノヨ」
 それは、建前7割、本音3割の言葉だった。
 アレナはしばらくキャンディスを見ていた。
「はい……。今を、大切にしたいです。大好きな人達と、過ごせる今が大事、です。悩んでばかりいたら、時間もったいない、ですよね」
 そして。
「キャンディスさんは、私が私じゃなくなっても、友達でいてくれそうな気が、します」
 そう言って、笑みを浮かべた。