空京

校長室

重層世界のフェアリーテイル

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重層世界のフェアリーテイル
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リアクション


第四世界・2

 町の場所は直ちに調査団本部にもたらされ、多くの団員がその場所へと向かった。
 ノート・ブック(のーと・ぶっく)コミック・ブック(こみっく・ぶっく)もそのうちのひと組である。
 入口の近くにはレンガ造りの建物が多く、看板も掲げられて、ここを訪れるものに立派な街をアピールしようとしているようだ。
 しかし、街の真ん中あたりにある鉄道の駅を境目に、その先は木造の平屋や、テントなどが並ぶ下町と化している。
 印象は、かなり騒がしい町だ。多くのものが行き来しており、さらには少なくない人数が腰や胸に銃を吊している。
「どこに行きますかな」
 コミックが呟いた。
「適当に歩いていれば、そのうち気になるものが見つかるさ」
 ノートは答え、とにかく人々が居るあたりをぶらつく。
「調査は進んでおられますか?」
 その背中に声をかけるものがあった。オットー・ツェーンリック(おっとー・つぇーんりっく)だ。
「い、いやー……」
 ただぶらついて町の様子を見ていただけのノートは、返答に詰まって頭を掻く。
「そっちは、何か分かりましたか?」
 聞き返すコミックに、ヘンリッタ・ツェーンリック(へんりった・つぇーんりっく)が頷いて答えた。
「この町は人が多く見えますが、平時よりもかなり多くの人が居るようです」
「というと、他の町から人が押し寄せてるってこと?」
 聞いたのはノートだ。オットーは市場らしき一角に目を向けた。
「近く、何かのイベントが催されるようでございます。それに合わせて、他の町から鉄道や街道を伝って人々が集まってきている……と、こういう状況のようですね」
「なるほど。それじゃあ、いい時期に来たかもね」
「いい時期とは?」
「もうすぐお祭りがあるんでしょ?」
 のんきに答えるノート。やれやれとオットーは肩をすくめた。
「そういうものなら良いんですが。どうも、荒っぽい雰囲気を感じます」
 呟いて、道の先にオットーは目を向ける。気づけば町を一周して、入口近くまで戻って来たらしい。
 見てみれば、なにやら人垣ができている。
「ちょ、ちょっと開けてくださーい」
 好奇心をひかれたノートは人垣を押し開け、その中心をのぞき込んだ。
「うう、水……」
「えぅ〜、食べ物……」
 人垣ができていたのも当然。見慣れない服装をしたふたり組が、町の入口近くに倒れている。
「生き倒れですね」
 コミックが冷静に呟いた。
「ん? この人って……」
 ノートも少しだけ冷静になって、生き倒れの顔をのぞき込んでみた。
「誰か……」
 と、倒れたまま呻いているニット帽の成年は蔵部 食人(くらべ・はみと)
「お腹が減って動けないんだよ……」
 と言っているツインテールの美少女は魔装侵攻 シャインヴェイダー(まそうしんこう・しゃいんう゛ぇいだー)
「やっぱり調査団の人だ! ど、どうしよう。どこか飲んだり食べたりできる場所……」
「と、言えば、酒場ですわね」
 ヘンリエッタが答えた。
「……酒場……?」
 意識はもうろうとしていたが、食人は聞こえた言葉を繰り返した。
「では、そこへ行きましょう!」
 ノートは道の先を指さす。
「こっちでございますす」
 オットーに指摘されて、ぐるっと指の向きを変えた。