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都市伝説「地下水路の闇」

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都市伝説「地下水路の闇」

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SCENE・7

 化け物捜索班は奥へと進んでいく。奥に行き次第、細くなっていく道に一列となって進んでいくが、
「きゃっ!」
 突然、曲がり角から小鳥遊美羽が飛び出してきた。前衛にいた九条と有沢は一応警戒するが、小鳥遊は有沢たちの姿を見て叫ぶ。
「逃げてっ! クロスボウを乱射してる奴がいるの!」
「げっ、クロスボウっ?」
 九条は顔を引きつらせた。
 その時、傍の水路に向かって光が一閃する。水路を挟んだ向かいの通路で、光条兵器のクロスボウを構えた椎名が立っていた。
「化け物めっ!」
 椎名は叫び、クロスボウの引き金を引いた。光の矢はちょうど列の中央の水路に突き刺さる。ゆっくり黒い塊がせり上がってくる。 椎名は再び矢を射ってくるが、
「危ない! つっ!」
「ラティ!」
 九条の後ろについていたラティは、九条を庇って矢が肩をかする。すでに椎名には化け物しか見えていなかった。
 有沢と斎藤の言葉が重なる。
『散れっ!』
 列は左右に別れて逃げて行った。
 
 
 椎名はクロスボウを構えたまま、じっと水面を見つめていた。再び化け物が姿を現すのを待っている。しかし、管野の時と同じく神経が張り詰めている椎名は、背後の気配に気づき、クロスボウを構えたまま振り向く。
「光条兵器!」
 ラティが光条兵器の拳銃を光らせ、椎名の目が一瞬眩むが、ローグで足に自信のある九条と斎藤が左右に別れるのを見る。。椎名は一瞬、どっちに標準を合わせるか迷う。その隙を見逃さず、有沢が剣の柄で椎名の後頭部を打つ。椎名は倒れ込み意識を失った。
「本当はここで使うつもりではなかったのですが……」
 ウィングは持っていたロープで椎名を縛りながら苦笑いをする。そのウィングを見ていた小鳥羽は、
「ねえ、そのロープとかって、ずいぶん準備がいいよね? もしかして、私と同じで古代シャンバラ王国を調べるために入ったんじゃない? そうだよね?」
 視線が一斉にウィングに集まる。ウィングは穏やかな笑みで答える。
「ロープは趣味です」
 集まっていた視線が一斉に逸らされた。
 
 
 一方、黒水は気がつくとパートナーのディヌと二人だけになっていた。今まで抑制されていたものが溢れたように、思わず「ひひ」と不気味に笑い、真っ直ぐ奥の闇へ行こうとしたが……、
「ああ! 黒水発見!」
 黒水は一瞬で無表情に戻り振り返る。カレンが見知らぬ男と一緒にやってくる。黒水は首を傾げ訊く。
「……え〜と、君はどちらさまで?」
「盗賊のゲー・オルコットだ」
「そう……俺は黒水一晶です。よろしく」
 短い自己紹介が終わる。黒水はオルコットがなぜ一緒にいるのか疑問だったが、最初に会ったと思われるカレンは全く説明する気がないらしいので、黒水も深く訊かなかった。
 辺りを見回すと、前方に明かりが見えた。
「あれ? 蒼人たち……光条兵器を出してる」
 カレンが言った通り、明かりは葛稲たちの光条兵器だった。
 葛稲はカレンたちに無言で水面を指差す。そこには幾つもの大小の水紋が広がっていた。
「わあ〜……大変かも」
 カレンの呟きに、黒水とオルコットも頷く。葛稲は前方を指差し、静かに通り過ぎるように指示する。
 葛稲たちはゆっくり進んでいくが……
ボコボコボコッ
 水面から幾つもの水泡が湧きたつ。
「走ろうっ!」
 葛稲はそう叫ぶと、冬桜の手を握り走り出す。冬桜は突然手を握られ足を止めそうになるが、照れながらも少女ではない力強い手をしっかり握り返した。
バァァーン!
 黒い水柱が立ち上がる。そこから黒い触手が吐き出され、黒水の足を掴む。
「わあ!」
 黒水の悲鳴に前にいたカレンは振り返り、黒水の背後霊のようについているディヌに叫ぶ。
「火を当てて!」
「……かしこまりました」
 少し間を置いて返事をしたディヌとカレンは火術で火を生み出し触手に当てる。触手は嫌な音を立てて逃げていく。目が悪いディヌは黒水に当ててしまう可能性も少し考えたが。
 前にいたオルコットも戻り、倒れた黒水に肩を貸しながら呟いた。
「化け物は十分見たから帰ろうぜ」