リアクション
ハーフオークに娯楽を提供することでの交流を目指す、ゲルデラー博士率いる【ヤック・サブカルチャー】一行。 * あ、あれ?? もりあがらない…… そのまま曲は一番と二番の間奏に入ったが、お客の反応がまるでない。しーーんとしている。 し、しまった。樹理の歌が思った以上にヘタだ。これはあまりに酷い出来だぞ。予想外だ、くっ。 ステージの影から覗く博士。汗が噴出している。 じゅ、樹理。やばいぞ……!! 樹理、ちらっと後ろを見ると、機材の合い間に、こちらを窺う博士のこわい面があった。 ゲっ、ゲリピーのプレッシャーが重いよう〜〜!! それに、選曲もまずかった。この気どった歌詞と曲は、この場を盛り上げるには合わない。一曲目に歌う曲ではなかった。(来年の3月にリリースするファーストアルバムでは最後を飾る曲として収録することにしよう、と博士はメモった。) 「お、おいおいー樹理、どうしたんだ。二番が始まっているのに、なんかこわばったまま動かなくなったぞ……」 はらはらして見守る朝霧。 「歌詞忘れてちゃったのかなあ」 その横で、ライゼ。 ジーナは林田を見やる。 「林田様?」 「……」ふるふるとふるえる林田。「……メイド娘。これで私たちの交渉が台無しに……」 深刻な顔で立ち尽くす、樹理。 「……これじゃみんなの期待にこたえられないよ……。 樹理ちゃん、いつも馬鹿だって言われて友達できなくて、教導団で仲間ができたと思ってたのに、やっぱり役立たずなの……? いつでも仲よくできればいいと〜思ってるのにぃ〜」 ……頬を涙が、こぼれていく。 * オケだけがむなしく流れていく。 アマーリエがやがて、演奏中止を押した。「……」 ステージのライトが落ちる。 ざわつき始める、客席…… …… ふと、暗がりの客席から、 「♪あの雲の下の街 あの子の街さ」 「えっ……惨状パンダ先生、いえ、マ、マノファ」 古いラブソングを口ずさむ、マノファ・タウレトア(まのふぁ・たうれとあ)。 「♪プラタナス通り へこんだアスファルト」 マノファは、樹理に、目で続くように合図をする。 ♪あの雲の下の街 あの子の街さ プラタナス通り へこんだアスファルト 田舎の空を 見上げれば 今もあの日の 笑顔が輝くよ All the colors in rainbow 濡れた服なんか脱いで All the colors in rainbow 口笛吹いて 歩いていこう 「みんなと一緒に歌うじゃん!」 マノファは、樹理に手を伸ばした。 樹理は涙をふいて、ステージから客席へ走る。 All the colors in rainbow 濡れた服なんか脱いで All the colors in rainbow 口笛吹いて 歩いていこう 「ああ、ハーフオークと私たちとが今、一体になって感動している。皆が歌によって一つとなった」 博士も、涙がとまらない。 忘れられない夜となった。 * 「見たまえ、大成功だ。君の歌があったからこそあれほどに盛り上がったのだ」 「ゲリピー……」 ぐすん、もう涙は見せない樹理。 うむ。何かもかも、私の計画どおりなのだ。と言いながらまた涙が止まらない博士。 …… それから、第二部として「地元のみなさん のど自慢大会」(優劣・賞品は付けないですぞ)をプロデューサーこと博士は企画していたが、ダンス大会に変更した。 ハーフオークは意外と、ダンスが得意らしいのだ。 ガーデァやシャンバランらと一緒になったハーフオークたちも、やって来た。 多くの教導団の者も、訪れた。 さあ、もう魔道師の呪いのリズムで踊らされる必要は無い。好きに踊ればいいのだ。 自由に踊れ、ハーフオーク。自由に舞え、教導団。自由に歌え、パラミタへやって来た生徒達。 彼らのリズムが一つになり、この夜、峡谷に新しい歌が生まれた。 その後もショーは続き、交流は更に深まることになるのである。 第三部 臨時特別企画 シャンバランのヒーローショー(協賛:獅子小隊、ノイエ・シュテルン、騎狼部隊、黒炎、龍雷連隊) 祭りは続く。…… |
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