リアクション
9‐04 牙を剥く魔法使い
「よし……もうすぐ出口だな。メニエス、お前のおかげではかどった。
我等の教祖にお会いしたら、撲殺教団の列侯に加えてもらえるよう私が推してやるか、ファハハ」
「そうですわね。でも、気が変わりました」
「何?」
メニエスの右手に、急激に魔力が集中する。
「サンダーブラスト!!」
「ギャアァァァァァ!!!!」
坑内に炸裂する雷撃。黒焦げになって倒れる魔道師達。
とっさに後ろに飛んで避けたジエルタ。
出口に立ちふさがる、メニエス。
「貴様! やってくれたな、やってくれたな!!
だが俺を甘く見るなよ!」
ワンドから撃ち放たれた炎がメニエスを撃つが、メニエス、ひらりと防ぎ、
「ククク、アハハ! あなたが避けたんじゃない、あたしが避けさせてやったのですよ?
だけど……ミストラル」
冷たく言い放つメニエス。ジエルタの背後から、ミストラルが首の根に齧りつく。
「ウワワワ! や、やめてくれっ、コイツが欲しいんだろ。わ、渡す、こんな物!」
「そうそう、」メニエス、ジエルタの投げた石をキャッチして、「これが黒焦げになったら困るからね。
じゃあ、あなたに用はないわ。
ミストラル!」
「ウワ! ギャー卑怯者!!」
ミストラルは、牙に力を込めた。
「なに、卑怯な策を弄するのはお互い様」
メニエスは、受けとった石を投げ捨てると、ジエルタの遺骸の懐に手を伸ばし、目当ての石を手に入れた。
「こんなことに引っかかるあたしだと思って?」
蛇の印しがある石だ。
9‐05 対火の機晶姫
オークさえも怯む中、獅子小隊攻略班は、機晶姫目がけて、かかっていく。
「よし。では前衛、援護、後方警戒の三手に分かれ、行くぞ!」
イリーナが叫ぶ。
「今こそ、シャンバラの獅子の力を見せろ!」
前面に出る、イライザ、クライス、ローレンス。レーヂエ=サミュは防御の体勢をとり、ディフェンスシフトを味方に展開する。
だが、「あの火の一閃を受ければ、おそらく一たまりもない……!」
イリーナ、香取、クリス、レーゼマンが彼らの後ろに展開し、各々射撃の姿勢に入る。イリーナの足もとには、トゥルペ・ロット(とぅるぺ・ろっと)。花博でチューリップのマスコットをしていたという彼女のパートナーも決戦に挑むため、ここへ付いてきた。
クリスフォーリルの歩く火薬庫、クレッセントも常にクリスの横に在る。
後方は、ルースとソフィアペア。「可能なれば援護を。でも俺はできれば、女性を傷つけたくはありませんからね……」
そして、初戦のナナと音羽ペアが警戒に就く。
機晶姫の頭が、ずどん、っと振れ、よろめく。
武装で固めたクリスフォーリル、先手を切っての狙撃。
一瞬動きがとまったかに見える。
だがまた、ゆっくりともとの姿勢に戻る。とくに身構えもしない機晶姫。さっきもこの姿勢から火の一撃が来た。
クリスフォーリルは、そのまま次の狙撃に移る。
「機晶姫か……悪いが、手加減する気はさらさら無いぞ」
援護の構えに入る、レーゼマン・グリーンフィール(れーぜまん・ぐりーんふぃーる)。
「それがあなたの使命ならば……その使命、ここで終わらせましょう」
その前に立つ、イライザ・エリスン(いらいざ・えりすん)。
レーゼマンの機晶姫である彼女も無口で、表情に乏しい少女のようであるが、対する火の印しの描かれた名もない機晶姫の表情は、空ろという他なく、感情の欠けらも感じられない。
イライザを内心、心配しながらもそんな内情は見せることなく、互いに目を合わせると、すぐ戦闘体勢に移る。
「イライザ!」
「了解しました、レーゼ」
そこには確かな互いへの信頼がある。
対するただ一人門前に立つ火の機晶姫。打ちかかっていくイライザが哀れみをもってしたとしても、相手はそんな感情すら知らぬようで。
機晶姫の胸の辺りが、ボウっと赤く熱を帯びてくる。
レーゼマン、射撃を続けるが、その熱の高まりはとどまらない。
イライザがカルスノウトを振り下ろし、機晶姫は無造作に引き上げた腕の装甲で防ぐ。その間にも、また、火の一閃が、来る。
剣を下ろすイライザのすぐ横をかすめ、今度は右斜めの方向へ、同じように大地を焼き裂いて。
段々退き始める、教導団兵。
すると、将が討たれおろおろしていたオークは性懲りもなく、武器を手に取ると、集まり始める。
「皆、すまんがオークは任せる。私はあそこの機晶姫をやる」
「月島さん!」「月島さん!」
月島 悠(つきしま・ゆう)はレーヂエセイバー達にこくりと別れを告げると、ガトリングを展開し、機晶姫に向かい合う。
「悠くん頑張って!」
パワーブレスで月島に力を与える麻上 翼(まがみ・つばさ)。
前衛では、打ち合うイライザに、すでにクライス、ローレンス、レーヂエ=サミュが加わっている。
ローレンス、レーヂエ=サミュが並び、機晶姫にあたるうちに、クライスが門の内部に移動し、切り付ける。が、機晶姫は向きを変えることなく、相手の動きを察ちしてか腕をびゅん、と後に伸ばし、攻撃を受けとめてくる。
門を死守しているというわけではないのか。いずれにしても、あの閃光が来る限り、大軍は近付けられない。と思ううちに、本巣内部のオーク弓兵が狙ってくるので、クライスは退避する。
射撃班は、敵の動きを鈍らせるため、とにかく手、足に狙いを集中する。
それから、頭へ。……顔はきれいな少女であるが、その表情が全くない。説得も、ナンパもできそうにない……援護に構えるルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)は、しかし機晶姫が撃たれる様は見ていられない。
「マスター!」
ルースの機晶姫ソフィア・クロケット(そふぃあ・くろけっと)が、ルースに迫ったオークを、切り払う。
「しっかりしてくださいね? 敵の機晶姫ばかり見て、どうしたのです?」ソフィアはちょっとム、として言う。「援護するんじゃないのでしたら、見とれていないで、こちらのオークを討つのを手伝ってください!」言って、また攻撃に移るソフィア。「まだまだ敵の攻勢も衰えてはいないのですから!」
「あ、ああ、すみません」
しかし、実際にソフィアの言う通りだった。火の機晶姫の見せつける圧倒的な強さの前に、教導団は怯み、オーク勢は盛り返してきている。ここで倒せなければ、戦いそのものが劣勢に傾いてしまうかも知れない。
これで戦いを終わらせるんだ……!
今日のイリーナは意気込みが違う。レオンに代わって指揮を執る以上使命を果たさねば。
その後ろでは、「タぁ!」バン!「タぁ!」バン!
「トゥルぺ……? 何か言ったか?」
「…………(黙って狙い撃ち)!」バン!「……(黙って狙い撃ち!)」バン!
「イリーナさん! 手が止まっていますよ!」
獅子小隊に加勢してくれている香取。
「はっ。ああ、まだまだだ!」
「タぁ!」バン!「タぁ!」バン!「トゥルペ?」「…………(黙って狙い撃ち)!」バン!「……(黙って狙い撃ち!)」バン! わりと正確に当てています。
だが打撃を受けてよろめいても、装甲に傷が入っても、すぐにまっすぐに姿勢を正してくる。
「相当撃ち込んでいるんですけどね……」香取にも若干の疲れが見え始めている。
機晶姫の装甲はぼろぼろ、ぼこぼこにへこんでいると言ってもいい状態なのだが、例の冷たい表情は変わらない。
そして、一定周期で放たれる閃光。
しかしどうも……機晶姫本体の動きが、完全ではない、のか……?
それと攻撃も直線であり一方向にしか飛んでゆかない。前衛は、すでに攻撃を読めるようになっている。
それでもこの攻撃が脅威なのには変わりない。後方では、クレーメックの陣が持ち堪えているも、勢いに押され退いていく味方勢。
オークにしてみれば、機晶姫と戦う獅子小隊を撃破できれば、本巣の戦いを逆転できる。
散り散りだったオーク雑兵どもが、じりじりと、競り上がってくる。
「でもここは、絶対に通しませんよ!」
「グヒャァァ」
「ドゥワァァ」
「ブワァァ」
メイド姿のナナに涎を垂らしたかってくる、オークどもオークども。
前衛と射撃班の皆様があれだけ頑張っていらっしゃるのですから……!
仕込み竹箒の刃を抜いて、立ち向かう。
「ナナ様をお守りするのが拙者の務め、全速力で参る!」
ダッシュで切りかかる、音羽。ツインスラッシュをお見舞いする。
「ブワァ!!」
「むっ、しまった、一匹抜けたでござる。ナナ様!」
ハウスキーパー、斬り下げるナナ。
「私は、大丈夫です、逢様!」
もう、弾が尽きる……
倒せるのだろうか、と思う月島。
いや、絶対に倒す。イリーナ、(そしてとどめを刺すのは、私だ。)香取も、(いや、決まってるわ。私よ。)レーゼマン(俺を忘れるな!)トゥルペ(タぁ!タぁ!)
「どうしたタ?! 射撃班、弾幕の勢いが止まっているヨ!!」
「レーヂエ部隊長! もう、弾が……」
弾薬万全にしてきたクリスフォーリルだけが、変わらぬ勢いで撃ち続ける。
機晶姫の閃光が、レーヂエをかすめる。飛んでいくレーヂエの兜。
「レーヂエ部隊長! ……サミュエル??」
「レーヂエは最強☆無敵だからネ!!」ランスを掲げ、突撃していくレーヂエ、……サミュエル!
にわかに、本巣の内部が、騒がしくなる。
後方で戦っていた一人、岩造。
「おお! やつだ。やつが来たのだ!! ゆくぞ、フェイト!」
「はい、岩造様!」
本巣のあちこちから、オークが飛び出してきて、戦場は混乱する。
「敵ダ! 敵ガ、本巣ノ下ヨリ攻メ込ンデキタ!!」
「ナ、バカナ!」
浮き足立つオーク。
本巣は言うまでもなく、オーク最後の砦だ。
それが今、内部から揺るがされている。
「危ないよけて!」
火の閃光は、オークを巻き込んで、本巣前方の地面を引き裂いていく。火の機晶姫は動かない。
どっ、と退く教導団兵ら。
そこを縫って、後方の部隊が戦場へ駆けつけてきた。
オークの混乱に乗じ、門をくぐろうとやって来るのは、レオンハルト達、獅子小隊探索班だ。
「こちらは我々でひきつける。中は頼むぞ……!」
機晶姫が、レオンハルトらの方に、ゆっくりと向きを変えている。
それに気づいたイリーナ、
「お前の相手は私だ!」
すかさず射撃で、機晶姫の注意をこちらへそらせる。
来る、一閃。
その隙に、レオンハルト達は、左の門へ進入していく。
「無事に帰ってこいよ」
「よし、私は、右門から突っ込み、オークの巣を陥落させるぞ!!」
岩造の率いる龍雷連隊が、反対の門へ突入する。
9‐06 新手
十六夜によるチェックII信号弾の合図をキャッチした、峡谷側チェックI。
分校側からの奇襲が始まったな……
クレアはすかさず、
「背中を見せたやつから撃て。後ろに下がらせるな!」
ピュンピュン、
ギャ、ギャ!!
ピュン、にゃんこ兵の射撃を受け、次、次、転がり倒れ伏していくオーク。
ふふふ。不敵な笑みでオークに迫る、クレア。「クレアさん、今日はノッてきてますね……」彼女を見守るハンス。
そこへ……
「オホホホ!」
幾らか下品な高笑い。
森の中からすうっと現れたのは、全身に宝石を輝かせ、豪奢な女王ドレスを着込んだオーク。大きさはキングに引けを取らない。
「……オークの、クイーン、とでも?」
ふざけるな。クレアはすぐさま、今度は自ら銃の一撃をお見舞いするが、
「ぱし!」
銃弾を手袋で掴み、投げ返してきた。荒技だ。
「馬鹿な!」
あわてて避ける、クレアとハンス。
「ぶんた〜〜い! 前へ!」
フランソワが手を上げる。
にゃんこの射撃。ピュンピュン、が、オーク女王の宝石が、すべて弾を防ぐようだ。
「駄目だ! 黒乃……」
にゃんにゃん! にゃんにゃん! 意固地になって撃ちまくる、にゃんこ達。
「あー、ちょっと止め、止め! これじゃ弾の無駄になるよ! あくまで、敵を引きつけるのがボクらの役目だからね!!」
「オホホホ!」
じりじりと詰め寄ってくるオーク女王。
「ならば……貴方のお相手、私がさせて頂きますわ」
優雅な振る舞いで一礼しつつも、堂々と前に立ち塞がるのは、藤原優梨子だ。
「俺は、俺の全力を尽くすだけだ」
手綱を引き、突撃する、永谷。
にゃんにゃん! にゃんにゃん! まだ打ち続ける、にゃんこ。
と、磁石のように弾丸を惹き付けていた宝石が、それまでの弾丸をまとめて撃ち返してきた。
「!」
騎狼から振り落とされる永谷。
藤原は肩を撃たれるも自らの血をぺろりと舐め、なお微笑し、
「みしるしをいただけますか? いえ、是非ともいただきますね」
目は笑っていなかった。
被弾したにゃんこ。
かなりが死亡した。
「に、にゃんこぉ……」
「ああ、黒乃、まずい。この間にも、オークが、森へ退いてしまう」
そのとき、森の中で打ち合う音、オークの断末魔が続き、現れ出でた者、
「ヌコ様を襲うとはなんたる非道! 許ッッさん!!!
爆炎!!」
叫びながら、上空に爆炎波の塊を撃ち出す、ゴザルザ・ゲッコーだ。分校側から、森を突っ切ってきた。
「にゃんこ。会いたかったぞ!! そのために、森を抜けてきたでござる!」
ゲッコーの後ろから、続いてヴァルキリーのイリス、バーストダッシュで飛翔し、
「トーネーーーード!!」
飛んでくる炎の塊に、その遠心力で敵に向けて叩き付けた。
飛び散った塊が、女王に降り注ぐ。
「永谷殿。いつまで倒れているでございます」
永谷をヒールで治療するファイディアス。
「す、すまない……」
「(ペットが傷つくのももったいないですからね)」
「くらえ!」
深くふりかぶり、永谷の投げたランスが煙の中からよろめいて出てきた女王に突き刺さる。
森へ逃げ帰ろうとするオーク女王、しかし体が動かない。
「亡霊さん。
そのまましっかり抑えてあげてくださいね、すぐに終わりますから」
声も出ないオーク女王の引き攣った顔に、にこやかな藤原優梨子の唇が近付いた。
*
そこから幾らか脇へ逸れた森の入口では。
オークの森の付近まで達した風次郎、ベア、レーヂエ達。
「ここに必ず、キングが……」
剣を肩にかけ、確信的に呟くベア。
それを横目に見遣る風次郎。オーク・キング、か……フン。この戦いは今まで以上に複雑化してきている。キングの存在、謎の村、そして機晶石の眠る廃坑。だが、俺にはそんなものは関係ない。俺に関係あるのは戦いだけだ。
「……さあ。行くぞ、風次郎。ベアよ」
レーヂエ、森へ踏み出そうとしたところに、
どんっ 突如、森を突き抜け飛び出してきた、ギチギチギチギチ……オーク・チャリオット。
「ウラァァァァァァァ」
「ダハァァァァァァァ」
「ゴジァァァァァァァ」
「な、何事だ……?」
「レーヂエ、危ない!」
ドゴーン 突進してくるチャリオット。蹂躙されれば命はない。
「くっ。おのれ」
「マッゴゥちゃんこっち!」
「ウワーン」
マナは、マッゴゥをかばう。
とんっ こちらは身軽にレーヂエらの真ん中に下り立ち、不敵に微笑む。騎士冑をかぶったオーク。
「ボビィィィィィィィィィ」
「うん? おまえは……」
それに相対し、剣を構える風次郎。
シュンッ 素早い一撃を交わすと、そのまま攻めに転じ、敵の剣を右手首ごと切り飛ばした。
「ボビィィィィィィィ?!」
全く表情を変えない風次郎。ただ強くなっているだけではないようだ。二撃、三撃、しかし敵も手練。素早い。
風次郎をすぐに引き離し、追う彼に、残った左手の盾を投げつける。
それを打ち払おうとする風次郎に、すかさずナイフを抜いて飛びかかる。
もちろん強くなったのは風次郎だけではない、この男、
「前までは専守防衛が精一杯だったが、今は……」
ベア、するりと剣を抜き放つ。
「ウラァァァァァァァ」
「ダハァァァァァァァ」
「ゴジァァァァァァァ」
ドゴゴゴゴッゴ ゴゴーン ベアの剣を受け、タイヤがバラバラに崩れ落ちたチャリオット。
操舵を失い、そのまま、レーヂエセイバーの方へ向かっていく。
「危ないぞ!」
そして聴こえてくるワルキューレの騎行(テクノポップ調)。
「えいっ」
レーヂエセイバーの皮を脱ぎ捨てて現れた
あーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)。
急所を突かれたオーク戦車、そのまま大破。
「ウラァァァァァァァ」
「ダハァァァァァァァ」
「ゴジァァァァァァァ」
ドーン
シュン、シュン、ナイフを避ける風次郎、シュン、カッ、それを刃で止めると、再び攻めに転ずる、一撃、
風次郎の更に二撃、三撃、敵の手が落ち、っとん。首が飛んだ。
「ベレーヂエ殿っ! お久しぶりであります」レーヂエに駆け寄る、あーる華野。敬礼。
「本日は成長した自分を見て頂きたくて、ベレーヂエセイバーズに入隊申請に参りました。
副官として、ベレーヂエ殿の背後をお任せ頂ければ光栄でありますです」
段ボールの表面に、純白のワルキューレ。
「おいおいあーる華野。レーヂエの補佐には、すでにベアが赴任希望だぜ!」
「はっはっは、は。……皆、強くなったものだな。少し見ない内にな」
風次郎は、彼らの後ろで剣の血を振り払うと、オークの死骸に静かに手を合わせた。
(オーク達も自分等の命運をかけて全力で挑んでくるだろう。ならば、こちらもそれに応えるべく全力で立ち向かわなければならない。相手を殺す否に興味があるのではない。ただ、こういった戦いそのものが俺の求めているものだ。)
9‐07 魔法使いとJOKER
メニエスが坑道を出ると……
「ヒャーー!! 来たぜ、来たぜ」
「じゃじゃじゃ じゃ〜ん! じゃじゃじゃ じゃ〜ん!」
ピエロメイクに、赤と緑のツートンカラー。彼女と青黒2Pカラー、そうナガン・ウェルロッドと、クラウン・ファストナハトだ。
「トレセンのセンサーが、ずっとここいらで魔術師がたに反応してたぜ!
……が、あんたちょっと違うみたいだなー。しかし一人しかいないんだ、これに越したこたねェゼ。
さぁ。モノを渡しなモノを」
「クッ……」
「ナガン、この女だいぶ疲れてんじゃん、今がチャンスじゃん」
「ヒャー、覚悟しろ!!」
ドガガガガ ナガンのチェーンソーが破壊の調べを奏で始める。
「おのれ、おのれ……!!」
「メニエス様。お下がりください、ここはわたくしが」
「ハハーッ なに言ってんじゃん? オマエの相手はこのファストナハトに決まってんじゃん?
じゃじゃじゃ じゃ〜ん! じゃじゃじゃ じゃ〜ん!」
ビュンッ ファストナハトもチェーンソーを回しながら容赦無く襲いかかる。
ミストラル、すんでに避けると、鋭い爪を繰り出す。
ガッ、響きあう刃と爪と。
「ほらほら、どうした、どうしたーー!? ヒャーーーー、ッハァァァ」
メニエスの目の前を飛びながら、ナガンのチェーンソーが舞う。
「こいつめ、サンダーブラストが使えれば、こんなパラ実生などに……!!」
「おまえ達!! 何してる?」教導団の一団が来る。
ナガンの注意が逸れた一瞬の隙に、メニエスは一手に魔力を集中させる。
「?!
あっ これは、アシッドミスト……」
メニエスの姿は、すでになかった。
「……おーのーれーらー!!」
ナガンのチェーンソーが教導団の方に向けられる。
「おっ、どうした、こ、こいつ、アブナイやつか……?」
「ナガンの邪魔したじゃん! ナガン怒らせたじゃんじゃん」
「ヒャーーーーーー!!! 死ねやーーっ」