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泥魔みれのケダモノたち

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第14章 全裸の絆、永遠に

 闘いは終わった。
 ウォーマインドが飛び去った後、毒の沼地は活性化がやみ、泥が徐々に乾燥して、もとの堅い地面に戻っていく。
「はあ、やれやれ。ひどい意味にあったよ」
 意識を取り戻した変熊は、藤原に打たれた股間をさすりながら帰路につく。
「変熊さん、立派でしたよ。私たちに、ウォーマインドの恐ろしさを身を呈して示してくれたんですよね」
 エリカは、そんな変熊に心からの賞賛の言葉を述べた。
「うん? まあ、そうかな。とにかく、俺様の身体をちゃんとみてくれれば、それで十分なのさ」
 そういって、変熊はさわやかな笑顔を浮かべる。
「ほかのみなさんも、ありがとうございました。みなさんの協力がなければ、ハムーザ3世ちゃんをみつけることはできなかったでしょう。本当に感謝しています。帰ったら、これからみなさんにどう恩返ししたらいいか、よく考えたいと思います」
 エリカは、斎藤邦彦や、御茶ノ水千代に御礼をいった。
「恩返しなんて、いいさ。明日からまた、みんなに勉強を教えてやってくれ。無事にペットがみつかって、本当によかったぜ」
 斎藤は笑って、ネル・マイヤーズとともに去ってゆく。
「パラ実は、危ない奴もいっぱいいますので、本当に気をつけて下さいね。エリカさんは、なにか、放っておけないものですから。まあ、今回は、毒の沼地を消滅させることもできましたし、結果オーライです」
 御茶ノ水もしみじみとした口調でエリカに聞かせて、去ってゆく。
 一部の生徒たちは、沼地の消滅とともに、全裸になっていたことが急に恥ずかしくなってきたのか、手で身体を隠しながら慌ただしく走り去ってゆく。

「おーい、みんな。よくやってくれた。全裸の特攻が功を奏して、ダークキッコウは見事に倒れたぞ。宝石は奪えなかったが、戦果はあったということだ。何より、勝利こそが最大の報酬。そうだろう?」
 ナガン ウェルロッドも、最初から全裸になって特攻していった仲間たちに声をかけ、ともに帰路につく。
「そうだな。裸になって闘ったことも、いまとなってはいい思い出だぜ! 帰ったらひと風呂浴びるか!」
 ラルク・クローディスが同意する。
「裸で闘った絆は、ある意味永遠だな。隠すものがないから、お互い本当に通じあえたという感じがするぜ!」
 吉永竜司はそういいながら、「オレがこんなことをいうなんて珍しいな」と内心不思議に感じていた。
 だが、ナガンの仲間が全員、さわやかさを感じていたのは事実だ。
 それは、裸だからこその、快感であり、連帯感だったかもしれない。
「まあ、いい。今回オレと一緒に闘った奴らの実力は認めてやるぜ!」
 D級四天王である吉永には珍しい、寛容な心境であった。 
「しかし、パンツもらえなかったな。まっ、これを拾ってきたからいいけど」
 国頭武尊は、握りしめていた拳を開き、くしゃくしゃで泥まみれになっている、エリカの下着に顔を近づけた。
 エリカが黒鬼によって全裸にされたとき、沼地に破り捨てられていたものだ。
「このままじゃしょうがないから、洗濯しないと。でも、洗濯した下着って、売場で売られている下着と変わらないような。まっ、いいか」
 国頭もまた、裸で共闘したことの爽快感を味わっており、その感覚だけでも十分な収穫であった。
「みなさま、本当に、かっこよかったですわ」
 秋葉つかさ、藤原優梨子、桜井雪華の3人も、晴れ晴れとした表情だ。
「あれ? もう服着ちゃったの?」
 国頭がやや残念そうに尋ねる。
「ふふっ。もうお祭りは終わったんですよ。いつまでも無料で大サービスはいたしませんって」
 藤原優梨子は意地悪な笑みを浮かべる。
「そやそや! 普段みようと思ったら、高くつくものやからな」
 桜井雪華もうなずく。
 しかし、女の子たちも、いっときとはいえ、全裸で男子と共闘できたことに、どこかすがすがしさを覚えていた。
 状況が状況だからこそ自分たちも全裸になれたのであって、こんなに気安く裸になれる機会はそうめったにはないだろうが、そのことがなぜか残念なようにも思われる、不思議な心境であった。
「まあ、私は、いつでも大丈夫ですけどね。ふふ」
 秋葉つかさが、妖艶ながらどこか奥の深い笑みを浮かべていたが、その笑いを目撃した男子は、異様な迫力を感じたという。
「よーし、帰ったら、みんなで一緒に風呂に入ろうか! もちろん、女子はいいさ。男子だけでな!」
 ナガンがニコニコ笑いながら提案する。
「ほな、女子は女子だけで風呂に入ろか!」
 桜井も、今回の闘いで親密度が増した女子たちに提案する。
「混浴もありかな?」
 国頭がちょっといってみたが、流されてしまった。
 ナガンたちは、互いの絆が深まったことを感じ、終止にこやかであった。
「よーし! みんな、走れ!」
「おう!」
 ナガンのかけ声で、早く風呂に入りたいということもあって、みな、消滅しつつある沼地から出ようといっせいに走り始めた。
 全裸の絆よ、永遠に!

「本当によかった! 帰ったらお風呂で泥を流してあげますね、ハムーザちゃん」
 エリカはハムーザの手を引きながら、いたわるような口調でいった。
「ハム〜嬉しいハム! もう離れないハム!」
 喜びのあまり、エリカに抱きつくハムーザ3世。
 まさに、幸せそのものの光景であった。
「くっ! 何だ、この感情は?」
 遠目に、エリカとハムーザの仲睦まじい姿をみながら、かつてダークキッコウであった、カメのカメ吉は嘆く。
「俺も、飼われていた当初は……くそっ、涙が出てきたぜ」
 そっと涙を拭きながら、カメ吉は、傷ついた身体を引きずり、どこかに隠れて暮らそうと、寂しい意図を
 そこに。
「どこに行くの?」
 優しい目をした、プリモ・リボルテックが待ち受けていた。
「何だ。私を笑いにきたか?」
「ううん。よかったら、ウチの温泉のペットにならないか、お誘いしてみようと思ったんです」
「ペットに? なぜ? 私の罪を知っていてか?」
「ウォーマインドに操られてやったことだし、いまとなっては、普通のカメとしての幸せを考えた方がいいと思うんです」
 プリモは、笑っていった。
「こんな私を受け入れてくれるか。ありがとう」
 プリモの暖かさに、カメ吉の目から再び涙が流れ出していた。
「あれ? どうしたの? 泣いてるの?」
「何でもない。目にゴミが入ったんだ」
 カメ吉は、目を伏せて、ハンカチを使った。
(すまぬ! 人間たちよ! 私は間違っていた!)

「おやっさん、ありがとう」
 風森巽は、チューニングされたシルバージョンに乗ると、礼をいった。
「以前よりも性能は上がったはずだ。また、調子が悪くなったら、いつでも来い」
 おやっさんは、暖かい目で風森をみつめて、いった。
「バイク乗りにとっては伝説のメカニックに会えたこと、本当に嬉しいです」
「よせよ。それより、今後の自分の闘いのことを考えるんだ。どうしても勝てない強敵に出会ったら、戻ってこい。特訓してやろう!」
「ありがとうございます。では」
「おう。元気でな」
 おやっさんに別れを告げ、風森はシルバージョンのアクセルを全開にした。
 ブオン!
 以前よりもスピードが上がったシルバージョンとともに、風森は地平線の彼方へ駆け抜けていく。
 また会おう、風森!
 闘え、風森!

 そして。
 遥か彼方の、どことも知れぬ深い海の底では、飛び去ることをやめたウォーマインドが、不気味な光を放っていた。
 当分の間、ウォーマインドは眠り続けるだろう。
 いつの日か、その海上、あるいは海中で、再び活動を始める、そのときまで。
 

担当マスターより

▼担当マスター

いたちゆうじ

▼マスターコメント

 はじめましての方もお久しぶりの方もこんにちは、いたちゆうじです。

 『蒼空のフロンティア』でマスタリングをするのはこれがはじめてですが、私を「知っている」という人も何人かいたので、ちょっと感動しました。みなさん、かなり前のことでも、よく覚えてらっしゃるんですね。
 あらためてシナリオガイドを読み返してみると、私自身にマイナスエネルギーがとりついていたのではないかと思える内容で、驚かされます(笑)。

 みなさんの考えた熱い啖呵を描写するのは、楽しい作業でした。
 『蒼空のフロンティア』でも他に例をみないようなリアクションになっていれば、幸いです。

 「全裸」にすごくこだわっているアクションも多くて、私としては意表をつかれた思いでした。
 よく考えたら、「全裸」って、すごいことなのかもしれませんね。
 ですが、だからといってみなさん、くれぐれも、プライベートイベントやオフィシャルイベントに全裸で来ないようにして下さいね(笑)。

 また、今回はエリカが気に入らないから「ヤキを入れる」というアクションは全くなく、みなさんの心意気に感服させられました。

 私としては、難しいことはあまり考えず、とにかく「熱い」リアクションを書いていきたいと思っています。ギャグも好きだけど、あくまで「熱さ」を中心に据えたものが好きです。
 今回はパラ実(というかシャンバラ大荒野)が舞台のシナリオでしたが、天御柱学院を舞台としたシナリオもやりたいと思っています。

 それでは、またお会いできる時を楽しみにしております。