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リアクション
第5章 全裸でバトル! パート1
吉永に続いて、桐生円(きりゅう・まどか)が黒鬼たちの前に歩み出ると、周囲の生徒たちからざわめきがあがる。
「えっ、まさか女も脱ぐのか?」
目を丸くした斎藤邦彦を、パートナーのネル・マイヤーズは心配そうにみつめていた。
普段は無愛想なはずの斎藤が、すっかり調子を狂わされている。
シャンバラ大荒野の現実は、聞きしにまさるものであった。
「さあ、次はボクだよ!」
桐生は興奮しているのか、紅潮した顔で叫ぶ。
「ハッ! てめぇも脱ぐのか? うぬぼれてんじゃねえぞ、誰がてめぇのぺったんこの胸をみて欲情するかっつうんだ!」
黒鬼たちはバカにした口調だ。
「いってくれるね。ボクも、キミたちに欲情なんかしてもらいたくない!」
桐生は覚悟を決めて、衣に手をかけた。
「文明を否定するって舐めんじゃないよ! 畜生どもが! こちとら、3年間無成長なんだよ!」
ちゅどーん!
「ぐわー、何だこの力は!」
桐生の言葉の途中で、突然黒鬼たちが悲鳴をあげ、その身体からひとりでに爆発が起こり始めた。
桐生の言葉にこもっていたすさまじい感情の力の前に、マイナスエネルギーが払拭されたようだ。
(えっ、でも、ここでこんなに反応が起きるの? そういうものなの?)
桐生は内心戸惑わないでもなかったが、構わず続けた。
「わかったか! 見ても誰も得しないんだよ! だから脱いでも誰も気にしない! あぁ脱いでやるよ変態どもが! てめぇらの文明嫌いがどれほど危険なものか、おしえてやんよ!」
桐生が衣を脱ぎ捨て、生まれたままの姿になったとき、その場にいた生徒たちの目には、一瞬、まな板同然の胸が、確かに、みえた。
だが、次の瞬間、牙を剥き出した黒鬼たちがいっせいに桐生に襲いかかり、泥が飛び散って、生徒たちの視界は悪くなっていた。
「ウガァ、とりあえず肌はきれいだから、食ってやるとするぜ!」
桐生の全身にしゃぶりつこうとする黒鬼たち。
「くっ、後半は気迫が足りなかったかな? でも!」
真っ白な肌が泥で汚れるのも気にせず、桐生は黒鬼たちの身体につかみかかる。
「捨て身のパワーでがんばるよ! たぁっ!」
桐生は群がる黒鬼たちを次々に突き倒し、蹴りを入れたり、噛みついたりした。
「うーん。いろんなところに泥が入るのは気になるけど、でも絶対に負けない!」
桐生の身体は、泥にまみれて露出が激減していた。
桐生の薄い胸を好みだと感じる生徒は、かなり気落ちさせられたことだろう。
「よし、桐生さんも脱いだんだから! 次は私が脱ぐッスよ!」
桐生に続いて、またしても女性のサレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)が黒鬼たちに迫る。
「サレンさん! サレンさんって、すごく豊満な身体をしてるんですね。うらやましいです!」
エリカは、サレンの胸の、はちきれそうな膨らみに目を止めて、思わず叫ぶ。
「いやいや、こんなの、まだまだ水風船ッス!」
サレンはちょっと照れて頭をかいたが、次の瞬間には再び目を吊り上げて、黒鬼たちを睨みつけていた。
「んだテメェ! ガンつけてんじゃねぇよ!」
吠える黒鬼たち。
(いくッス!)
サレンは覚悟を決めた。
「罪も無い人々を脅かす悪鬼悪霊は正義の味方・ラヴピース改め裸舞ピースが成敗してくれるッスよ! この胸に熱くたぎる正義の炎をとくとくらうがいいッス!」
叫びとともに、サレンは衣を宙に放り投げて、全裸になった。
宙を舞う、サレンの衣。
一瞬、生徒たちの目に、ふたつの大きな風船の「揺れ」が焼きついた。
次の瞬間。
超高速で突進したサレンの拳が、黒鬼のあごをぶっ飛ばしていた!
「くらえ!」
「ぐわああああ!」
ドゴォッ!
ぶっ飛ばされた黒鬼の身体が粉々に砕けて、四散する。
しかし、高速で動いたせいか、サレンの足もとの泥が派手に飛び散り、彼女の全身を茶色のまだら模様に染めあげていた。
おかげで、肉体の露出が極端に制限されている。
「ほらほら、まだまだ! 連続技! たぁーっ!」
サレンの身体が高速でスピンし、泥をはね散らしながら必殺の蹴りを黒鬼に叩きつける。
ちゅどーん!
オーラのこもったすさまじい蹴りを受け、爆発する黒鬼たち。
泥がはね散ったおかげで、サレンの肉体の詳細が再びかいまみえるようになったが、それも束の間、サレンが駆けると、すぐに泥が彼女の身体にまた付着する。
生徒たちは、泥にまみれながらも艶やかなサレンの勇姿を、ため息とともに鑑賞するほかなかった。
「さーて、続きまして! 私も脱ぐよ!」
サレンの後に現れたのは、またしても女性の霧雨透乃(きりさめ・とうの)だ。
「自分と同じ女性がこんなに一生懸命闘っているなんて! 勇気づけられます!」
エリカはだんだんテンションが上がってきたようだ。
「くぉら! さっきから女子供が調子に乗りくさって! あんまり生意気だと全身をくすぐるぞコラァ!」
女性にやられる展開が続いたので嫌気がさしたのか、黒鬼たちがセクハラな威嚇をしてきた。
「うーん、やらしい! そういうのも仲良し同士ならいいけど、無理やりはダメだもん!」
熱血キャラの透乃は黒鬼たちをまっすぐ睨むと、全身のオーラを爆発させて叫んだ。
「おーい、黒鬼ちゃーん! あんた達なんて所詮ここに訪れた人たちを襲うしかできない引きこもりじゃん! 私みたいに危険をかえりみずに敵地に踏み込んで荒らしてやろうっていう度胸はないの!? ないよね! だからこんなつまらないところで引きこもってるんだもんね! でもそれも今日までだよ! この地も私たちが踏み荒らしちゃうんだから! さあ、覚悟はできてるよね!? できてなくてもやるけどね!!」
透乃はさっそうと衣に手をかけ、一瞬で全裸になる。
その豪快な脱ぎっぷりは、裸身をみた男子に興奮する隙も与えないほどであった。
「いくよ! お触り厳禁!」
ちゅどーん!
透乃が左拳を振りかざすと同時に、精神エネルギーの奔流に耐えられない黒鬼たちの身体が爆発を始めていた。
しゅごおおお
透乃の左拳に縛炎波の炎がまとわりつく。
炎の輝きの中、透乃の股間は影になってみえなくなったが、代わりに剥き出しのお尻が鮮明な光を受け、男子たちはやっと興奮を味わい始めた。
みられている!
そのことが、逆に透乃の魂を燃えあがらせた。
スリルがあるほど、透乃は楽しいのだ。
「燃え上がれ魂、焼き尽くす拳、超熱血爆炎波!」
これ以上ないほど燃え上がった炎とともに透乃が突き出した左拳をくらった黒鬼たちが、次々に吹っ飛んでいく。
「ぐわー! 覚えていろー!」
捨てゼリフを残しながら、黒鬼たちは泥へと還元されてゆく。
「と、透乃ちゃん……」
一方、透乃のパートナーの霧雨泰宏(きりさめ・やすひろ)は、透乃の活躍ぶり、というか瑞々しい裸身をみつめて、放心状態になっていた。
「ほら、やっちゃん! 何みてるの! 早く、闘う、闘う!」
じろじろみられているのに気づいた透乃にせかされて、泰宏ははっと我に返った。
「はっ! そうだ、いけない、こんなことでは!」
泰宏は全身の筋肉を盛り上がらせ、天に向かって絶叫する。
「いくぞ、鬼ども!」
「んだぁ! さっきまで光るお尻にみとれていたスケベボーイが!」
黒鬼は泰宏を冷やかした。
「何だと、許さん!」
泰宏の怒りはかえって燃え上がった。
「おい鬼ども! てめえらはここを訪れただけの人を一方的にやってくれたらしいな! 私はそういう卑怯な奴は大っ嫌いなんだ! これ以上被害者を出さねえためにもぶっ潰してやるぜ! 正々堂々かかってきやがれ! 気迫にびびって逃げたりするんじゃねーぞ! ほあああああ」
絶叫とともに、泰宏は衣を脱ぎ捨て全裸になる。
「みろ、この旗を! 私の正義がおまえを砕く! フォォォォォォ!」
シャンバラ旗を掲げながら、全裸の泰宏が拳を黒鬼たちに叩きつけると、たちまち大爆発が起こった。
ちゅどーん!
「みたかい、透乃ちゃん? 私の気合もなかなかのもんだろ?」
泰宏が透乃に微笑む。
「うん。でも、やっちゃん、ちょっと元気すぎかも?」
透乃が声をトーンダウンさせて泰宏の下半身をみつめている。
「えっ、まさか?」
泰宏は慌てて自分の股間をのぞきこみ、顔を真っ青にして絶叫する。
「う、うわああああ! やばいよこの状態! さっき透乃ちゃんをみまくったから!」
泰宏は慌てて泥の中に潜り込むと、剣とみまがうばかりの熱き肉を隠しこんだ。
「で、みんなこれもみてたわけ? うわああああ!」
泰宏が絶叫すると、それはそれで黒鬼にダメージを与えて爆発を起こすことに成功した。
ちゅどーん!
「うーん、泰宏さん、気にしないで下さい。それも筋肉なんですよね?」
エリカはにっこり微笑んで、泥につかる泰宏を慰めるのだった。
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