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【相方たずねて三千里】懇親会でお勉強(第1歩/全3歩)

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【相方たずねて三千里】懇親会でお勉強(第1歩/全3歩)

リアクション

 ダンス会場となっているホールへ行くと、トレルは呆然とした。
 踊り、舞う仮面、仮面、仮面。
 キラキラ光るその中を、やはり仮面を被った人物がこちらへと向かってくる。
「ようこそ、仮面舞踏会へ!」
「……誰?」
 別に構わないといえば構わないのだが、これは完全に乗っ取られている。何故だ。
「俺はクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)。トレル嬢、ここは息抜きを兼ねてダンスはいかがかな?」
 八雲は少しむっとしながら、様子を伺う。
「なーに、この仮面さえ装着すれば正体を隠せるのです。お忍びで懇親会を抜け出すことだってできますよ」
 と、クロセルの言葉にトレルはイラッときた。何故かは分からないが、何となくムカついたのだ。
 構わずに仮面を手渡すクロセルを無視して、トレルは背を向けた。
「めんどいので遠慮します」
 八雲は彼女の後を追おうか迷い、その隙に仮面を渡されてしまった。
 はっとしたクロセルは、切れかけた演出魔法の修復へと走りだす。

「さあ、皆さん。そこのクロセルの言いなりになってはいけません!」
 と、中心へ躍り出たのはミオセルこと赤羽美央(あかばね・みお)だった。
「私は全世界の仮面を開放するためにこの場にやって来ました! クロセルの仮面よりも私の仮面の方がいいですよ。ほら、鼻も隠れますし花粉症対策にピッタリです、たぶん」
 そう言って自分の身につけた仮面と同じものを場内へばらまく。
 ダンスを楽しみたい人の多くはすでに、仮面がなければダンスできないのだと思い込んでいた。もちろん、招待状にそんなことは書いていないのだが、これほど仮面が用意されていれば無理もない。
 とりあえず営業を終えたミオセルが踊りだそうとすると、どこからか聞き覚えのある声がした。
「謎の仮面少女、テロルちゃん参上!」
 はっと振り返るミオセル。
 テロルちゃんもまた仮面を被っていたが、その正体はどう見てもメトロ・ファウジセン(めとろ・ふぁうじせん)だった。何よりも、そのひょっとこ口が動かぬ証拠である。
「むむ、ミオセルに新たなライバルが……!?」
 テロルはその視線に気が付いたのか、遠くからこちらを見つめてきた。
 その間では、クロセルがせっせと氷術と光術を使っては場内を煌めかせている。
「月光蝶仮面!」
「と、揚羽蝶仮面!」
 空気を読まない新たな仮面が現れては、ミオセルとテロルの間できらきらと煌めく。果たしてこの仮面舞踏会、主役は一体誰なのか?
「テロル! あなたはメトロではありませんか!?」
「あははは! ボクはそんな人知らないねぇ。何を言ってるんだいミオセル、ボクはメトロじゃないんだよー?」
 テロルの返答にむっとすると、ミオセルは舞い始めた。舞踏ならぬ武踏である。
「ダンスで勝負です!」
「望むところだ!」
 そして踊りながら距離を詰めていく二人。
 十分な煌めきに溢れた会場で、二つの仮面が睨み合う――。

「友達……確かに多くはいないけど、でも、仮面……持ってない」
 そう言ってダンスを拒む御子神鈴音(みこがみ・すずね)
「仮面なら予備があるから、貸してやろう」
 と、仮面を取り出すケイオス・スペリオール(けいおす・すぺりおーる)
「……ちょっと、大きい。それに……踊りなんて、出来ない……」
 鈴音は仮面を着けてみたが、あまり激しく動くとずれてしまいそうだった。
「仮面さえあれば、普段と違う人間になれるかもしれないだろう。ほら、楽しんでくるといい」
 と、ケイオスは鈴音の背を押す。
「えぇー……」
 不安げな声を出しながらも、中へと入っていく鈴音。

 氷術と炎術による水蒸気が生み出され、光術によるスポットライトが月光蝶仮面と揚羽蝶仮面を照らす。
 そして今、目の前でぶつかり合おうとするミオセルとテロル。
「その仮面、取ってみせます!」
「無理だよ、ミオセル! 何をしたって無駄さ」
 なりふり構わず武踏するミオセルが、ふいに誰かとぶつかった。慣れない仮面にふらふらと踊っていた鈴音だ。
 体勢を立て直すミオセルだが、仮面がずれたのを気にしすぎて、今度はテロルへぶつかってしまう。その勢いは先ほどの比ではなく、ミオセルの仮面がついに外れてしまった!
「っく、どうやら時間のようですね。今宵も仮面は空に消ゆ……さらばです!」
 と、顔を隠しながら去っていくミオセル。
 残されたテロルは何故か勝ち誇った顔で笑うのだった。

 楽しそうに踊りまわる朔とスカサハを見ていた。
「ふむ、見事に朔も弾けておるな」
 そう声をかけたのは里也だった。
「まあ、あんな格好して暴れなければ、尚更いいんだけどね……」
 と、カリンは返す。
「……カリンよ。前の催眠カウンセラー騒動の時、そなたは何を隠してた?」
 カリンは口を閉じていた。
「答えたくないのなら、それでも構わん。だがな」
 と、里也は言葉を紡ぐ。
「秘密を抱えあっていたままでは、いつか破綻するぞ。そなたと朔の関係も。……忘れない方がいい」