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【ろくりんピック】シャンバラ版バスケットボール

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【ろくりんピック】シャンバラ版バスケットボール

リアクション


1.

 浮遊大陸パラミタで行われるスポーツの祭典ろくりんピック。
 本日はコントラクター部門、バスケットボールの試合の模様をお伝えしたいと思います。
 コントラクター部門では、西シャンバラと東シャンバラの選手が、一般人を越える能力を使用して競技します。特に本日のバスケットボールでは、通常と異なるルールがいくつかあるので、それらを踏まえて実況および解説をしていきます。
 では、試合が始まる前の様子ですが……見たところ、東チームの方が背の低い選手が多そうです。シャンバラには背の低い種族もいるので、身長150センチ以下の選手がシュートを決めるとラインに関係なく「5点」入るわけですが、これは東チーム、有利でしょうか。
 試合の解説はミーがするネ。席を譲ってくだサーイ!
 は? え、どこから入ったんですか? っていうか君、なにも――ガ、ガガ、ピー、ガガガッ。
 ……えー、失礼いたしましタ。解説はろくりんピックのマスコットキャラクターろくりんくんこと、ワタクシキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)がお届けしマース! みんな、ヨロシクするネ!

 中継の行われている席が不審者に乗っ取られたことなど気付かず、選手たちは気合を入れたり、ウォーミングアップを行ったりしていた。
 中には緊張している者や楽しむ気満々の者もいる。こうしたさまざまな個性が表れるのも、地球という枠を超えたシャンバラならではのことだろう。
 そして訪れる試合開始時刻。
「東に負ける気がしねぇぜ!」
 やる気満々にコートの中央へ立つ山葉涼司(やまは・りょうじ)。対するは従兄弟の山葉聡である。
「それはこっちの台詞だ!」
 最初にばしっとボールを打ったのは聡だった。
『さすが良いとこ見せるネ、山葉! 蒼空のメガネとは違うネ!』と、キャンディスは盛り上がる。
 樹月刀真(きづき・とうま)がボールを奪い、ドリブルしながらゴールへ向かう。追いかけるは楽しそうな五月葉終夏(さつきば・おりが)
「この先には行かせないよ!」
 と、無い運動神経を使って横から手を出すが、刀真はとっさに味方へパスをする。
「任せた!」
 受け取った漆髪月夜(うるしがみ・つくよ)がゴール前で待つ聡へパス!
「お願い!」
「よっしゃあ!」
 勢いよくドリブルし、ゴールめがけてジャンプする。
『あれはダンクシュートネ! これが決まればかっこいいんだけど、どうかしらん?』
「……あれ?」
 届かなかった。とっさにボールを投げてもバックボードにぶつかって跳ね返ってしまう。
「もらったぁ!」
 と、涼司がボールをキャッチし、中央まで一気にドリブルしていく。
『おや、蒼空の山葉はスリーポイント狙いネー!』
 立ち止まり、慎重に狙いを定めてシュートを放つ。月夜が手を伸ばすも届かず、一直線に進むボールが……。
「逸れた!?」
 山葉涼司、これは痛い!
 バスケットにぶつかって跳ね返ったボールを取ったのはミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)だ。得意のドリブルで相手を引き離す!
「そうはさせないのですぅ」
 と、邪魔する天貴彩華(あまむち・あやか)。自分とそう変わらない身長の相手に、ミルディアは高くボールを上げてパスをする。
「おっと、これはどうしたものかの」
 サティナ・ウインドリィ(さてぃな・ういんどりぃ)はパスされたボールを手に、周囲の状況を見極める。相手の目を眩ませる意味でも、これは必殺技を使うべきではないだろうか?
「覚悟はいいかの? 行くぞ、サンダーブラスト!」
 コート内に雷が出現し、それは味方全員を直撃する。それに乗じてパスを回そうという必殺技だが、ボールの行く先はサティナ自身も分かっていなかった。名付けて「ロシアンサンダー」である。
 雷がおさまると、パスを受けた涼司が痺れていた。突然のことに対応しきれなかったらしい。
「もらいますよ!」
 と、刀真がすぐにボールを取り上げ、その勢いからあっという間にゴールへと向かって行ってしまう。
 慌てて東チームが動き出すも、刀真は華麗にダンクシュートを決めた。――西:2点。

「ちょっと悔しいのです」
 と、土方伊織(ひじかた・いおり)は呟くと、バーストダッシュを使用した。あまりスポーツは得意ではないが、これなら少しは役に立つ動きが出来るはずだ。
「こっちです!」
 ボールを取ったミルディアに声をかけてパスをもらう。ゴールまで距離はあるが、勢いでどうにかしてみせる!
 ドリブルで敵から離れた後、伊織は勢いよく床を蹴った。バーストダッシュのおかげで高い位置まで跳び上がると、そこから一直線にボールをバスケットめがけて投げ込む。
『あれは土方伊織クン、ちびっこが得点を入れたら技使用ポイント含めて8点になるケレド……』
 ぽすっと、ボールが籠を通り抜ける。直後、歓声が沸いた。
「入っちゃいました!」
 自分でもびっくりしている伊織に、終夏とミルディアが声をかける。
「やったね!」
「一気に8点獲得だよ!」
「はいです」
 ――東:8点。

 このまま点差を広げられてしまったら、取り返すのは難しい。
 そう分かっていながらも、東に再びシュートチャンスが訪れる。
 ボールを持っているのはミルディアだ。邪魔者のいない絶好のタイミングでボールを投げる。
「入って、お願い!」
 そして綺麗な軌道で籠の中へ吸い込まれていくボール。――東:13点。
「あはは、楽しいねぇ」
「ちょっと彩華、私たち負けてるのよ?」
 と、へらへら笑っている姉を窘める天貴彩羽(あまむち・あやは)。ちびっこの自分がシュートを決めれば、点差を埋められる。まだ試合は始まったばかりだ。
「彩華、次ボールを取ったら私に投げてね」
「うん、分かったぁ」
 その約束通り、東からボールを奪った彩華が彩羽へとパスを投げる。
「がんば!」
 まだ活躍していない自分は今、とても有利な立場にある。身長も148センチと小柄なので、やるなら今しかない。
 バスケットまでの距離を見て、ボールをどう投げればシュートが入るか計算する。
「今よ、大瀑布シュート!」
 答えを導き出した時、彩羽はボールを天井近くまで投げ上げ、なかった。
「あ、あれ……?」
 敵味方関係なく、男性陣の視線が自分に向いている。自分の、たゆんたゆんと揺れる大きな胸に。
 特に山葉の二人なんかは、完全ににやけているではないか! 色んな意味で恥ずかしいぞ、山葉。
「いやっ……み、見ないでぇ」
 と、ボールを持っていることも忘れて自分の胸を隠す。彩華がぽんぽんと、その頭を撫でた。