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WahnsinnigWelt…行く手を阻み拐かす森

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第6章 容赦ない尋問劇

「鎌鼬まで殺すなんて・・・許せないわ!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は少女にもらった髪飾りを見ながら、涙をぽたぽたと流す。
「美羽さん・・・」
 そっと彼女に寄うベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は、ハンカチで優しく涙を拭いてやる。
「ごめん・・・ベアも悲しいのに、1人で泣いちゃって」
「いいですよ、別に・・・。私はもう、おもいっきり泣きましたから」
「あのね、ベア。まだベアに話してなかったんだけど、実は・・・。ケレスからヘルドの死体を埋葬してくれた男がいるって聞いたのよ」
「やっぱり・・・彼は死んでしまっていたんですね。―・・・でも、十天君の手に落ちなかったんですね?ちゃんと埋葬してくれる人がいてよかったです・・・」
 この世にはもういないのだという現実に表情を沈ませる。
「ラスコットっていう人が、彼を埋葬してくれたのよ」
「その人って姚天君の協力者だったんでしょうか?」
「どうかしらね・・・。会って話しを聞いてみないとわからないわ」
 彼に会って話しを聞こうと霧深い森の奥へと進む。
「何かしら、この香り・・・」
「踏み入れた者に幻影を見せる香りどす。きーつけなはれ、お嬢はん」
「トラウマを見せるってやつか?」
「雪吾はんには・・・無縁っぽいどすなぁ。あまり外にでーへんから」
「―・・・黙れ」
 引きこもりのように言う礼青を軽く睨む。
「おぉ〜こわっ」
「(はぁ、早く帰りたい・・・)」
 さっさと帰って描きかけの絵を仕上げたいと、心の中で不快そうに呟いた。
「あれは・・・見回りの魔女かしら・・・?ウィザードじゃなきゃいいんだけど・・・」
 研究所に近寄る者を追い帰そうと、見回りをする魔女を美羽が見つける。
「行くわよ、ベア」
「はい、美羽さん!」
 草陰に隠れながら少しずつ近寄っていく。
「そこに誰かいるのか!?」
「くっ、ウィザードだったみたいね。相手は1人みたいだわ」
「催眠術で眠らそうとしてもそうはいかないっ」
 迫る彼女たちから逃れようと、魔女はブリザードを放ち飛び退く。
「逃げれられませんよ」
 雪吾はギリリッとトリガーを引き、魔女の足元に銃弾を撃ち込む。
「すんまへんなぁ〜」
 転びそうになる魔女の懐に飛び込んだ青礼が相手の腹をボスッと一発殴る。
「ベア、今よ!」
「はいっ!」
 美羽とベアトリーチェがヒプノシスで彼女を眠らせ、植物の蔓を引き千切り木に縛りつける。
「う・・・・・・。―・・・・・・っ!」
 魔女が目を覚ますと美羽たちに囲まれ、ぎょっとした顔をする。
「フンッ、道なんて教えないからね」
「それでもえぇどす。こっちの道って何があるんや?」
「何もないけどー?」
「じゃあこっちの方角を進んでいくと誰かおるんか」
「私の友達がそこに・・・あっ!」
 礼青の尋問にひっかかり、しまったというふうに魔女が声を上げる。
「もうその手にはひっかからないわっ。ていうか何も喋らなければいいのよ」
「困りましたね、何か話してくれなと進めませんし」
「勝手に困ればー?」
 雪吾を見上げ勝気な態度を取る。
「―・・・5数える間に、喋ってくださいね。1・・・」
「あーあー、もーなんも聞こえなーい」
「2・・・遅いっ」
 スガンッ。
 銃弾が魔女の頬スレスレを通りすぎ、彼女はポタリと冷や汗を流す。
「まだ5秒経ってないんだけど・・・」
「おや?聞こえるみたいですね。じゃあ喋ってくださいよ」
「ぎゃぁあっ、また撃った!?」
「本当はこんなことしたくないんですけど。喋っていただけないなら・・・」
 魔女の片腕にそっと手を置き、ふぅとため息をつく。
「・・・ちょっと折ってみましょうか?礼青にやられるよりマシですよ。あいつの場合は形を残しませんから」
「ひぃいいい!?」
「ちょ、人のイメージ破壊するのやめてくれへんかっ。だいたいうち、そないなことしてへんわっ!」
「お前は人じゃなくって妖怪じゃないか」
「でた〜差別的な発言!」
「フンッ」
「いやな子やなぁ〜まったく」
「で・・・どうしますか?」
「うぅ、分かったわ・・・話すわよ・・・」
 脅された魔女はしぶしぶ研究所の場所を教えてしまった。
「んもぅ、覚えてらっしゃい!あんたらなんか魔女に八つ裂きにされるといいわ!いぃいーっだ!」
 さすがに仲間のところへ帰れないのか、ベアトリーチェに拘束を解かれた魔女が魔法学校へ戻っていく。
 子供か・・・と皆は心の中で呟いた。
 教えてもらった道を進むとやっと研究所が見えてきた。
「突撃するのは危ないわね。皆が行動を起こすのを待ちましょう」
 研究者の男と会うために、美羽たちは期を待つことにした。