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【なななにおまかせ☆】アイドル大作戦!!

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【なななにおまかせ☆】アイドル大作戦!!

リアクション

 視点をプールへと戻そう。
「何か観客席であったか?」
 カルキノスは観客席の方の騒動が気になった。しかし、気にしているのも一瞬のことだった。
『おっと、ここでB子チームがCY@Nに向かって突撃だ!』
 声優名が適当なのは無視してと、B子チームがCY@Nめがけて正面から迫る。さらにそれに続くようにして工作員のチームが次々とCY@Nに向かって来た。
「《禁猟区》が警戒を出してるよ」とミスティ。
「アカラサマにねらってきたねぇ、どうするななな?」レティシアが尋ねる。
「勿論、迎え撃ちますよ! 正面から!」
 なななたちはCY@Nをかばうようにして、前に出た。相手の勢いは止まることなくこっちへ来る。真横をすり抜ける気だろう。
 ルカルカがCY@N、なななと自分たちを含めて《ゴッドスピード》を付与する。3チームの動きが早くなる。
「赤くないけど三倍速よ」
 行動速度が上がり、横をすり抜けようとしたB子の鉢巻をなななが奪う。しかし、鉢巻を奪われたからと言って止まってくれる相手でもないので、レティシアが馬を【さざれ石の短剣】で斬りつけ石化させた。B子が水に落ちる。
「はい、B子選手失格です。鉢巻を取られたらおとなしくプールから上がってくださいね」
 クロセルがB子と石化した馬たちを【ロングハンド】で回収。プールサイドの淵に渡した。
「何とろとろしてるの! 私たちもCY@Nを狙いに続くの!」
 千代が馬の白竜たちに命令する。が、あまりにも彼女が重くて上手く動けない。ルカルカの《ゴッドスピード》付与範囲にすらまだ届いていなかった。
「無茶を言うな! これでも精一杯だ!」
 動きが遅いのは千代が重いのもあるが、この女が声優には思えず、鏖殺寺院の構成員ではないかと疑っているからだ。余計なことできない。
「ティー、リカさん! 今のうちですわ! 後ろから回りこんでCY@Nの鉢巻を――!」
「CY@Nを護衛しないの!? そんなのダメです!」とティーが却下する。
「CY@Nくんなら大丈夫かも。それよりも敵の戦力を減らしましょう」
 代わりに、リカインの提案に同意するティー。「ティーは一番になりたいんですの!」と言う意見は聞かないことにした。
「さて、今向かっているのは全員鏖殺寺院と見ていいのかな? CY@N」
 コアが肩乗っている彼女に尋ねる。メタルボディーの安定感は抜群だった。
「多分そうね。みんなあたしの知らない人ばかりだし。一度一緒に仕事した人の事は忘れずにメモしてるから」
「努力家ですねぇ……」とアスカは同じアイドルとして関心した。「でどうする?」とコアに尋ねる。
「彼らの相手は前の2チームに任せよう。私たちは逃げに徹しよう。なに、《ゴッドスピード》もあるのだ任せてくれ」
 流石は【海に沈んだ】コア・ハーティオン。水の抵抗をもろともせずに安定して動く。危険地帯から下がる。これで、少しくら前の2組が暴れても問題ない。
「CY@Nを渡せ――!!」
 鏖殺寺院の構成員であることを隠す気が失せたのか、そんなことを言ってくる奴までいる。
「ダリル、カルキ薙ぎ払えー」
 馬の上で直立してルカルカが命令する。
 ダリルは前方から来る騎手の水着を《光条兵器》で切り裂き、動きを止め、カルキノスが羽を広げて水ごとを巻きあげて吹き飛ばす。
「なんであたしまで――!」
アナウンサー・ラブも吹き飛ばされる。
『ルカルカチーム無駄にポロリの大量生産だ! 編集するスタッフの身も考えて欲しいが、これはこれでいい!』
「はーい失格した人はプールから上がってください。こらー落ちてから別のチームを襲わない!」
 審判のレッドカード宣言を無視してなおもCY@Nへと突撃を辞めない構成員。
「まかせて! ルールを守らない悪い人はエスパーアイドルアスカがお仕置きよ!」
 《サイコキネシス》で襲ってくる敵の水着を戦意と一緒にはぎ取っていく。
「強制ポロリの刑よ!」
 しかし、それでも戦意喪失しないも者もしばしば。コアが《氷術》で凍らせて動けなくしていくが、水温が下がるので多用はできない。
「これはマズイですね」と白竜。
「なにがマズイのよ! なんたらもCY@Nに――、っておおいぃ!」
 千代は白竜と羅儀に投げ飛ばされる。流石に二人の腕も限界だった。
「護衛のご協力をおねがいします」
「結局オレたちは女より任務なんだよねぇ。かなしいけど」
 馬は騎手を残して泳ぎ去った。ルール無用の者たちをとっちめに。
「マッチョチーム失格――、あ、言い間違えました」
「それはいいから助けてよ! わたし泳げないんだから――ブクブク」
 巨体が沈んでいく。筋肉がつきすぎると水に浮きにくくなって総じて泳ぎにくくなるものだ。
「あのマッチョ本当に声優?」
「ええ――、あれでも小学生とか魔法少女とか、保母さんと一緒とかの声優してるいわ」
 と、アスカの質問にCY@Nが応える。
「人は見かけによならないな……」とコア。
 白竜たちが暴れる鏖殺寺院構成員を締め上げていく。女性故に手加減して気絶させる。
 あまり、抵抗が酷い者はレティシアが短剣で刺して石化させた。
「あとで石化の解除が大変そうだよ……」とミスティが愚痴を零した。
 気がつくとCY@Nとその護衛以外は失格か石となって水に沈んでいた。
『残すは4チームとなってしまいました。果たして誰が勝つのか!』
「け、計画通りですわ!」
「なにもしてないでしょうイコナちゃん……」とティーが突っ込む。
 リカインの《捕らわれざるもの》でなんとか他の声優から鉢巻を奪われずに済んでいただけだが、イコナとしてはそろそろ金星をとりに行きたくて仕方なかった。
「もうCY@Nを狙うのはいないみたいですぅ。なななさん、あちきたちは競技に戻りましょう……なななさん?」
 騎手の動きがさっき無かったことにレティシアが気づく。なななの顔を見ると、何故か青ざめていた。
「……が来る」
 意味不明なことを言うななな。いつもの事ではある。が、よく見るとなななのトレードマークのアホ毛が立っていないことに気がつく。鉢巻が被さって隠れてしまっていた。
 なななのアホ毛は宇宙と交信するためのアンテナ。その交信が遮断されると――
「宇宙船団が来てしまう――!!」
「その設定はここで有効ですかぁ!?」
 レティシアの突っ込み遅く、なななは鉢巻を自ら脱ぎ捨てた。失格である。
「なななと組もと思った私らが馬鹿でしたね……」
「ミスティさん、取り敢えずこの電波も石にして沈めていいですかぁ? いいですよねぇ?」
 なななの自滅により戦況は三つ巴となる。
「どうする、あのロボ少々の波風ではビクともしないぞ」
 カルキノスがそう判断する。200kgの重量は伊達じゃない。
「なにそんなの簡単よ。取っ組みあって無理矢理ねじ伏せればいいんだもん」
 という訳で、突撃! とルカルカは正面からコアとやりあうこと決定。コアを膝づかせて高い位置にあるCY@Nの鉢巻を奪おうという算段。
「来るか! CY@N私にしっかり捕まるのだ! アスカ《サイコキネシス》でサポートを頼む!」
 コアの力にアスカの腕力が上乗せされる。迎え撃つ。
「今がチャンスですわ! リカさん、ティー突撃!」
 イコナが馬を駆る。
「ちょっと待って、わぁ――っ!?」
 あまりにも急かされたためにティーが水底に転がる大きな石(石化したななな)に躓いた。
 イコナは馬から投げ出された。
《ゴッドスピード》でルカルカがコアに迫る。鈍重なコアはその巨体で組合いを待ち構える。体格の分組合では有利となる筈だった。
 が、コアの予測は裏切られる。
「なに!?」
「残念でしたー! ルカの狙いはハナからCY@Nよ!」
 ルカルカは馬を蹴り、高い位置にいるCY@Nへとジャンプする。直接CY@Nの鉢巻を奪いに――。
 しかし、ジャンプした寸前にバランスが崩れた。放り出されたイコナが跳ぼうとするルカルカへとダイブしてきたのだ。
「ご、ごめんなさい!」
「ちょっ、うわっ!」
 二人は空中でもつれて水面へと落ちた。
 イコナはとうとう誰の鉢巻も取れなかったが、ルカルカの水着だけは剥ぎ取れた。ニプレス済みの豊満な胸が露となる。観客からは残念そうに「あああ……」と感嘆が響いた。
「イコナ、ルカルカ失格! よって勝者はCY@Nチームです!」
 クロセルが水上騎馬戦の勝利者を決定し、観客はそれがCY@Nである事に歓喜した。
「最後はCY@Nにか、勝たせ、る。け、計画通りですわ! けほっ、たす、けほっ、て!」
 勝者への眼差しの裏で、イコナは溺れていた。泳げないのだ。