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行間

 すべての競技が終わり、残りは開会式を迎えるだけとなった。
 CY@Nの呪いは発動まで残すところ後一段階まで来たが、危険に思われた水上騎馬戦も難なく乗り越えられた。
 あとは、捕らえた鏖殺寺院の構成員から解呪のキーワードを聞くだけだ。
「てなわけで、話してもらおうか? CY@Nの呪いを解くキーワード」
 医務室に担ぎ込むはずの男を廊下の角で縛り上げ、エースは男に尋問した。没収した仕込み銃の銃口を額に押し付けて。
「残念だったな。俺はそんなもの知らん」
 銃口で頬を殴る。
「うそつけ、そうだとしてもお前らの内の誰かが知っているだろう?」
「――、俺が知っているのは『シアン』と言う呪いキーワードだけだ。解呪のキーワードは教えられていない。もっとも、呪いの最後のキーワードも解呪のキーワードも誰が知っているか知らねぇけどな」
「どういうことです? 構成員は皆、4つのキーワードを知っているのでは?」
 メシエが訊く。
「伝言ゲームさ。潜入した構成員たちはキーワードをバラバラに受け取って、別の構成員にそれを口伝する。CY@Nに言葉を聞かせるタイミングはいくらでもあるからな」
「つまり、あなた達にキーワードを教えた最初の人物。そいつが全ての呪いの言葉と、解呪の言葉を知っているかもしれないわけですか……」
 大量に捕まえた鏖殺寺院の構成員を一人一人問答していけば、その人物に辿りつけるだろう。時間がかかるが解決にはなる。
「けどよ、お前らは何で呪いの言葉が“4つ”って知ってるんだ?」
「何?」とエースが困惑の表情。男はその顔に笑いかける。
「俺達は呪いの言葉が“いくつある”かなんて聞いてない――。お前らはそれを誰から聞いた?」


「キーワードがCMYKね。郁乃様は最後のキーワードが『ブラック』じゃない理由わかりますか?」
 桃花が尋ねる質問に郁乃は首を横に振った。
「それはわからないけど、順番が『イエロー』から始まる理由は分かるわ」
 流石は絵画が得意な郁乃。その知識があるようだ。
「印刷を刷るときにまず黄色のインクから紙に刷っていくの。『イエロー』の次は『マゼンタ』『シアン』そして最後に『ブラック』。こうすると発色が一番綺麗になるのよ。シルクスクリーンの手本にはそう書いてあったわ
鏖殺寺院はそれになぞってキーワードを設定したんじゃないかな」
「なるほど、流石です郁乃様!」
「けど、それって最後の『ブラック』て呼び方は正確には違うぞ」
 と、横からコルフィスが二人に話しかけてきた。
「違うって? なにが?」
「俺も写真が趣味だからね。デジカメで取ったのを引き伸ばし印刷してもらうときには、CMYKに注意しないといけないんだよ。画素数もだけど、RGBからCMYK変換すると色が変わっちまうし」
「それはそれとして、Kがイコール『クロ』で『ブラック』じゃない理由は?」
「そのKイコール『クロ』もしくは、『BLACK』の『K』じゃないんだよ」
 ここにCY@Nが居なくて本当に良かったことだろう。
コルフィスの答え。それが最後の呪いの言葉だった。

「本当のKの呼び方はだな――」