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手の届く果て

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手の届く果て

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 今のリーシャは忘れかけてた人間との交流で揺れている。
 それは目に見えているが、決定打に欠けていた。
 その決定打とは――真実だ。

「あれは、迷宮の少女か?」
 先頭を歩いていた十田島 つぐむ(とだじま・つぐむ)は、通路の先に見えるリーシャと詩穂を見つけ、声をあげた。
 どれどれとつぐむの後ろから覗くミゼ・モセダロァ(みぜ・もせだろぁ)は、それを見つけた瞬間思わず青ざめた。
「その壁から離れなさいッ! トラップですッ!」
「――ッ!? キャアッ!」
 リーシャが背にしていた壁が崩れると、迷宮を崩しかねないほどの勢いで、ゴーレムへとその姿を変えた。
「クッ、少女を助けるッ! ウオオオオッ!」
 つぐむは駆けだし、ゴーレムにむかって飛び蹴りをお見舞いした。
 強化されたつぐむの一撃に、ゴーレムは巨体を揺らし、その手に掴んでいた少女を離してしまった。
「えええいッ!」
 地面真っ逆さまのリーシャに、竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)が空飛ぶ魔法↑↑を唱え、落下速度を減速させた。
 そこにミゼが滑り込み、リーシャを抱きかかえた。
「怯えなくていい……。こいよ石屑……ッ、砕いてやるからよ!」
 つぐむはリーシャを安心させ、ゴーレムを煽った。
 しかし、
「――ッ、つぐむ様、そこもトラップですッ!」
「クッ――!」
 ゴオオオッ!
 床の下からもゴーレムが飛び出し、つぐむは他の仲間と二分されてしまった。
「ミゼ、ガラン、真珠ッ! そっちのは――その子も頼むぞッ!」
「わかっています。……まかせても?」
 ミゼは詩穂にリーシャを預け、ウィンクした。
「間に合って良かった。あなたを放っておけなくて良かったわ」
 ミゼに続き、真珠が前に出た。
「下がっていろ。オレ達は今、守るためにここにいる」
 ガラン・ドゥロスト(がらん・どぅろすと)はできる限り優しく声をかけ、2人に並んだ。
 リーシャを抱く詩穂の腕に力が入った。
 始まる――。
「力比べだ……ッ!」
 ガランは相撲の立ち会いのように腰を落とし、一気にゴーレムとの距離を詰めた。
 よかろう――。
 ゴーレムは確かにガランの挑戦を受け、互いの両手を突き出し、押し合った。
「クッ……ガアッ!」
 互いに弾かれるように上半身が仰け反った。
「大人しく倒れなさいッ!」
 ローリングソバットのように身体を捻り飛ばし、ミゼは魔弾の射手を放った。
 4連射撃がゴーレムの身体を削る。
 まだ足りない――?
 否、次の攻撃で十分だ。
「行くよッ! 破片に備えてよね!」
 真珠がシューティングスター☆彡を唱えると、流星がゴーレムの脳天から突き落とされ、そのまま前のめりに倒した。
 その衝撃の破片はガランが身体を張って全て受け止め、後続のリーシャ達に被害は及ばなかった。

 ブオンッ――!
 ゴーレムの全てを薙ぐようなパンチをつぐむはかわすと、その太い腕を駆け上がって、ゴーレムの首元に連続攻撃を喰らわせた。
 ゴーレムの状態が流れるが、埋まっている下半身のおかげもあり、倒れるには至らない。
「そんなに砕かれたいなら、お望みどおりに――ッ!」
 打ち戻しのバックブローをよけ、再び駆けあがったつぐむは。先の攻撃でヒビ入った部分に集中して疾風突きを繰り出した。
 ヒビが徐々に――木の根のように広がり、最後には地滑りを起こすようにゴーレムの半身が崩れ落ちた。
「眠ってろッ!」
 つぐむの最後の一撃により、ゴーレムは地の亀裂に収まるように倒れていった。



 ――守る。
 その契約者達の言葉はリーシャに証明できた。
 そして件の病に倒れた獣人の1人――サクラコがリーシャの元まで行くと、リーシャは何も言わずに歩きだした。
 その背中は逃げも隠れもせず、契約者達がぞろぞろと付いていくことを許していた。