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リアクション
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ウォウルたちがいる広場を壁一枚隔てた場所で、馬超はラナへの攻撃を続けていた。が、それは本人の意思からではなく、恐らくは彼の槍を握り締める、ラナロックの意思なのだろう。
「馬超、なんとか離れる個とは出来ないのか!?」
「やっている、やってはいるが」
心配そうにその光景を見ている一同の中、コアが声を荒げ、馬超へと駆け寄る。
「私も力を貸すぞ!」
「頼む。なんだこの女の力……………尋常じゃない」
馬超とコアが懸命に槍を引くが、彼等の意とは逆に、槍は徐々に彼女の胸元へと近付き、ついにはその先端が、彼女の肌を穿つ。ゆっくりと、しかしどんどん吸い込まれる槍。
「ラナロック…………さん」
大吾が目を伏せながらに呟く。
「なんと……………声もあげずに自ら自刃の道を選ぶか……………」
手記がそう呟いた瞬間。彼等が背負っていたシャッターとは別位置、ちょうどコア、馬超が手を伸ばせば届くほどの距離のシャッターから、それは現れた。手には凶器を握り締め、そしてそれをラナロックの脇腹に突き刺しながらに。片腕だけが飛び出した為にコア、馬超が驚きを見せると、そこでちょうど引っ張っていた槍に自由がとなり、二人は大きく後ろに跳ね上げられる。大吾とラムズが二人を受け止め、何とか無傷のうちに体勢を立て直す二人。
「あれは――?まさか敵が!」
コアが改めて構え直し、馬超、セイル、大吾も臨戦態勢を取った。と、シャッターから更にもう片方の腕が現れ、勢いよくシャッターを粉砕した。
「だぁ!!!……………やれやれ、なんで俺がこんな役回りを…………って、おぉ? ラナロックのねーちゃんじゃねぇか」
「アキュートよ、そこで止まられると困るぞ。後が控えているのだから」
その腕の正体は、アキュート。後ろからはウーマの声が聞こえる。
「おう、ワリィワリィ。って、どうしたよねーちゃん。暫く会ってねぇ内にボロボロじゃねぇか………誰にやられたんだ?」
既に反応せず、{口からはオイルとも血ともとれないような液体を流して壁に背を預けたまま硬直しているラナロックを見たアキュートは、鋭い眼光でその場にいた大吾やラムズ、コアへと睨みを利かせる。が、直ぐ様気付いたのだ。シャッターを壊しただけのはずの自分の武器に、そn液体がベットリとついているい事に。
「………………おいおいおい、待てよ、こいつぁ不味いぞ!? 俺が…………ヤっちまったのか!? 嘘だろ」
慌ててラナロックへと駆け寄る彼は、ラナロックの体を抱えると、その場に横にしてウーマを呼んだ。
「クソ、くそっ!! 何の洒落にだってなってねぇぞ!? ああああ!! チクショウ! 寝覚めが悪ぃだろうが、こんなんよ…………!!」
二人に近付いたウーマが回復魔法をかけようとした時――である。アキュートの片腕が突如捕まれる。
「オッサン! 逃げろ!!! そいつぁまだは生きてる!!!!!」
「なっ――」
アキュート言葉はそこで途切れ、彼は一同が唖然としていた方の壁まで吹き飛ばされる。
「アキュートよ!!」
急いでウーマがアキュートの元へと飛んで行くと、背後でいつしか銃を抜いているラナロックの姿。
「またおめぇええかヨオオォォオオオォオ!!!」
「まずい!」
コア、馬超がウーマの後ろに回り込もうとしたとき――。
「お止めください。それ以上――罪を重ねるのは」
棒術を繰る様な手付きで手にするモップを回し、ラナロックの放つ弾丸を弾きおとしたのは、ラグナ・オーランド(らぐな・おーらんど)。
彼女の姿を捉えたラナロックは、今度は彼女へと引き金をひく。再び戻った、歪な笑顔のままに。
「ドケヨ邪魔なんンダヨぉおぉおオオォッォォォォオ!!! あぁああ、イッテェエェぇなぁああぁああああ!!!!」
「危ないぞ!!」
「まだ生きていたか、あの女…………」
コアと馬超がそれぞれ、手にする武器で弾丸の弾道を弾き落としてラグナを守った。
「すみません、守りに入ったつもりでしたのに………」
苦笑しながらそう呟く彼女は、しかし再び構えを取る。
「大丈夫ですか、ラグナさん!!」
「お母さん、無事ですか!? 今銃声が――」
「母上!! ………よかった、無事だったのですね」
「あら、みんな。そんなに慌てなくても良いですわよ。何やら素敵な方たちが守ってくれていますもの」
アキュートが開けたら穴からやって来たのは如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)、ラグナ アイン(らぐな・あいん)、ラグナ ツヴァイ(らぐな・つう゛ぁい)。
アイン、ツヴァイの両名は手にマシンピストルとグレネードランチャーを持っている。
「それより三人とも、心の準備は良いですか――?」
一瞬だけくぐもった表情を浮かべるラグナを見て首を傾げる佑也と、ラグナが向いてる方を見て同じ反応を返したアインとツヴァイ。
「暴走きしている………機晶姫、ですか」
「見ていて余り気分のいいものでは………ないですな」
「えぇ。だから私たちで止めるのですよ」
言い終わるか否か――ラグナが動きを見せたのに合わせ、アインとツヴァイが連携をとって援護射撃を開始する。横になり、上体だけを起こしていたラナロックは、勢いだけ忠に飛び上がり、バックステップを踏みながら三人の攻撃を回避した。ラグナがモップで突攻撃の連撃を放ち、それを避けた先にはアインとツヴァイの弾幕が待ち構えている。故にラナロックに反撃の余地はなく、避けることに専念するより他にはなかった。が、彼女は最後の着地を失敗する。満身創痍が故の隙を、ラグナたちが見逃すはずもない。
「さぁ、観念ください」
モップの柄の先端をラナロックの首もとに突きつけるラグナ。アイン、ツヴァイは銃を構えたままにその近くへと寄っていった。が、セイル、馬超が同時に叫ぶ。全く同じの言葉を叫ぶ。それは一度でもラナロックと言う存在と対峙したものにしかわからないもの。
「「近付くな! 離れろ!!!!」」
「え――」
途端、ラグナは足を払われ、体勢を崩す。それを片腕だけで羽交い締めにし、アイン、ツヴァイを始めとするその場に全員に向けた。
「ソウダヨナァアアアア!? いやああぁああ、マサかアイツの戦イ方がココマデ役にたつたぁあああよオオオォぉぉ!! ちョッと釈然とシネェがまぁああいいかぁ」
ゲラゲラと、下品な笑い声がこだました。
「くぅ…………っ…卑怯ものが……………」
ツヴァイが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてラナロックを睨み付けた。
「知らねぇえェエエなぁああ、関係ネェエヨ、だってこの戦い方ぁああよぉ? 『亡霊』の十八番なんだからヨォオォオ? 悔しカネェエエヨ、ちっともさぁああ」
「『亡霊』……………? 誰のことだ?」
大吾が思わず誰にともなく尋ねた。
「知らないな、聞いたことがない……………」
コアが構えたまま、ラナロックに向いたままに答えると、セイル、馬超が顔を揃えた。
「……………あれ、の事ですか」
「恐らくは、な」
「あれってなぁ………なんのこった? …………いってて」
瓦礫に埋もれていたアキュートが、頭を擦りながら立ち上がり、ゆっくりと一同の元へとやって来る。
「あの機晶姫、人格が複数あるみたいなんです」
「俺たちが戦ったのが、恐らくは『亡霊』とやらだろう」
へぇ、と、アキュートが呟くと、ラナロックの方へと目を配る。
「っとにどこまでもトチ狂っちまったみてぇだな…………ねーちゃん。早く目ぇ覚まさねぇと……………ホントに死んじまうぞ」
呟いた彼の後ろ――。様子を見ていた二人が動いた。
「やはり、使いどころかの。此処いらで――」
「………何も言いませんよ。実験、とすればね」
ラムズ、手記は、無表情のまま呟き、ラナロックへと向かっていく。手には――謎の石を持って。