|
|
リアクション
不気味な笑顔を携えて、鍬次郎が一同に声をかけた。
「あなた、誰なんですか!?」
佑一の質問に対し、鍬次郎が鼻で笑う。どうやら質問には応じないつもの様だ。
「ハツネ………あぁ、今彼処で色男とやりあってるやつなんだがな。あいつぁあんなことやってるが、何もあんたに危害を加えるつもりはねぇんだよ」
「じゃあ、何しに来たんだ?」
「主………っ!」
「なぁに、簡単な事よ。そこに寝っ転がってる大層な御身分のお兄ちゃんを俺たちにくれりゃあいい。そんだけだ」
「それ無理な相談ですよ」
「あぁ、生憎と僕たちは、大切な友達を知らない人に渡すほどに薄情じゃあないんだ」
構えを取っていたルイと託が、鍬次郎の前に立ちはだかった。
「交渉決裂、ってぇな訳か。ちと分がわりぃな…………ま、良いか。好きにしな。但し、だったら此処から出してはやんねぇよ」
そう言うと、一同が向かおうとしていた通路の方へと足を進め、その場に座り込む。
「根比べも悪かぁねぇ、尤も…………早くしねぇとその兄ちゃん、くたばっちまうかもしんねぇがなぁ! あっはっはっは!!」
「困ったなぁ…………あれじゃあ本当に身動きが取れないね。しかも――北都君たちが何も知らないで帰ってきたら、それこそ危ないよ」
託が真剣に悩みながら呟く。
「でも、これではっきりしましたね。あの三人は敵。そして今、あそこの二人と戦っているのが、僕たちを守ってくれている味方」
「ならば助太刀しましょう! 敵方も人数が減れば、もしかしたら逃げるやもしれません!」
ルイの提案に、佑一が賛同して一歩、唯斗へと足を向けた。
「皆さん、ウォウルさんの事、頼みましたよ」
「僕等は彼の応援に。逃げられそうであれば、まず優先的に逃げてください」
そう言い残し、二人は唯斗の元へと向かった。
「へぇ………俺じゃあなく、ハツネの方へ行ったか。ま、いいさ、そいつぁ失敗だって事に気付いてからじゃ、もう手遅れよ」
ハツネの攻撃を交わしながら、唯斗は彼女に武器ではなく、言葉を向けていた。
「いい加減、やめようよ」
「いやなの」
「即答かぁ………こんなことしても、意味無いんじゃないの?」
「あるの、鍬次郎はお仕事でハツネはお人形さん遊びなの。だから、沢山遊ぶの」
「人の命が玩具ってぇのは、いただけないなぁ」
「玩具なの。それで良いの。それだけで良いの」
「しゃあねぇ…………」
唯斗は何処か諦めた様子で武器を握る。
「でもまぁ、人命掛かってるし、やりますか」
「足掻かなくてもいいの。後が詰まってるから早くハツネに遊ばれて欲しいの」
「嫌だよ。俺はそう言う趣味じゃあ、ないんでね」
反撃を加えながら、しかしやはり回避行動に偏る彼に突然、声がかかった。
「そろそろお家に帰りたいんですよねぇ………あなたたちが居ては、帰るに帰れないのですよ」
やって来たルイの声を聞くや唯斗とハツネの二人ともが反応した。互いの武器を衝突させて。
「助っ人?」
「二対一はズルいの…………葛葉ぁ」
「またですか、全く…………」
彼女の言葉に呼応して、葛葉は至極面倒そうに呟いた。呟きりもぼやきに近いそれをもごもごと発しながら、葛葉はハツネの隣に並ぶ。
「僕もいますよ。まぁ、認識してもらわない方が何かと便利なんですけどね、本当は」
四人からややあなれたところで、佑一はテクノコンピュータを手にしながら呟いた。