葦原明倫館へ

空京大学

校長室

天御柱学院へ

続々・悪意の仮面

リアクション公開中!

続々・悪意の仮面
続々・悪意の仮面 続々・悪意の仮面

リアクション



第二幕 マスカレード・パニック!!〜前編〜


アキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)高峰 結和(たかみね・ゆうわ)が街へ向かい始めた頃……。

街の方では蔵部 食人(くらべ・はみと)はパートナー達から噂の通り魔発見の連絡を受けた所だった。

 「食人君!ハイドシーカーに反応したよ、東前方100メートル!」
 「こら眼鏡、シーニュの上で騒いで喚くなと危ないのである!」

自称『白龍の末裔』である小龍ヴィーヴル・フランシア(う゛ぃーう゛る・ふらんしあ)の用意した【空飛ぶ箒シーニュ】に乗りながら
シェルドリルド・シザーズ(しぇるどりるど・しざーず)は索敵情報を伝えようと遥か上空で喚き、ヴィーヴィルにたしなめられていた。
その傍らで魔装戦記 シャインヴェイダー(まそうせんき・しゃいんう゛ぇいだー)が【ディエクトエビル】で引き続き探知作業を行っている。

 「騒ぐな二人とも。
  食人、目標から邪念を探知した……これは間違いなく仮面保有者だな。オレの出番はまだか?」
 『急くなよヴェーダ。行動派作戦通りに行く。
  ヴィーは二人を乗せて上空で待機。シェルは引き続き目標の行動を追ってくれ!』

通信を一度終わらせ、食人はシェルドリルドから得た情報を元に目標を先回りするべく移動を開始した。

巷を騒がせている噂の通り魔についてわかっている情報は二つある。

一つ目は <仮面をつけている女性> だと言う事。
二つ目は <口で言うのもはばかられる様な露出度の高さ> だと言う事。

……文字で書くと女ストーリート○ングな事この上ないのだが、実力は折り紙つきらしい。

いつもの様に魔鎧としてシャインヴェイダーを装着してもいいのだが今回はそれをあえて控えておく。
真っ向から勝負をかけてもいいのだが、派手な行動は周囲の目を向けさせる事になる。
仮面に操られている人間が女性である以上
仮面を外した後の保有者の事を考えると、注目の的というのは人としてあまり優しくない
だから極力騒ぎを大きくせず、最小限で仕留める……それが仮面の経験者である食人達の作戦目標だった。

 「月詠、目標通過地点は連絡した通りだ。先に行って迎撃の準備をしているぞ!」

共に行動しているもう一人のパーティー、月詠 司(つくよみ・つかさ)達に通信を送り食人は作戦開始地点に到着する。
そして状況を確認しながら頭のニット帽を深く被り目元を隠した。

今、彼の目にはコンタクト状のアイテム【邪気眼レフ】が装着されている。
布一枚分を透視するそれはニット帽越しに彼に通常通りの視界を与えている。
……だが、傍目には只の目隠しにしか見えないわけで
そこを利用して挑発をかけ、目標の意識を自分に向けさせ、対象に隙を生じされば……。

作戦が上手くいく事を願い、食人は武器である【流体金属槍】を握りなおす。
彼の耳に目標の追尾をしていた仲間達の通信が入った!

 『邪魔だシェル!ほら、早くしないと追い抜かれるぞ!もっと近づけヴィー!』
 『叩くな古本!これ以上近づくと気づかれるのであ……イタタタ!眼鏡、そろそろ……』
 『わかってるヴィーヴィル君。食人君、間もなく目標が到達!頼むぞ!』

シェルドリルドの通信が終わった刹那

〜魔鎧になったラナ・リゼット(らな・りぜっと)を纏った泉 美緒(いずみ・みお)

…… 噂の通り魔が食人の前に降立った。



……一方その頃、食人から通信を受けたもう1パーティーも別方向から到着していた。

 「やっと着いた!まったく足が遅いのよツカサは!」
 「しょうがないでしょ!女の子の足だと勝手が違うんだよ!もう……なんでこんな事に……」

一番にたどり着いたシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)の後に可憐な少女がたどり着く。
先に補足しておくと【彼】の名は月詠 司(つくよみ・つかさ)
【彼】と明記する通り、実際は男なのだがいつもの如く【魔法少女ツカサ】にさせられてしまったらしい。

 「ゴメンね〜水筒の中身が例のタルタル特製・気付け薬だったなんて全然気がつかなくて★」
 「……本当に気がつかなかったかどうか、マジで怪しいの……」

テヘペロ、と言わんばかりのシオンの謝罪に、心底疑わしげな目を向ける司もといツカサである。
大体にしてこのパートナーは一番面白好きで腹黒いのだ。
前回だってそれに巻き込まれて仮面をつけさせられて酷い目にあったわけで油断も隙もない。
そんな二人の後に続いて仲間のウォーデン・オーディルーロキ(うぉーでん・おーでぃるーろき)も到着する。

 「ここまで来て喧嘩をするな二人とも。我等の存在に気がつかれるぞ」

ウォーデンの言葉に改めて二人は物影に身を潜める。

彼ら、いや彼女らの役目は食人の戦闘のバックアップ。
存在を気取られず背後に潜み、食人との戦闘に意識が向かっている目標を後ろから確実に確保する。
……そんな役目なのだから、先に気づかれては元も子もない。
物陰から3人は始まったばかりの戦闘を眺める事にした。。

 「どうやら始まった様なの」
 「うわぁお!通り魔さんたら噂どおりの過激な姿じゃない!ツカサも勝負しちゃいなよ!
  ……って、どうしたのウォーデン?」
 「いや……もう一人の到着がやけに遅いと思ってな…ぬ、やっと来おった」

ウォーデンの言葉と共に遠くから3人目の仲間のイブ・アムネシア(いぶ・あむねしあ)が現れた。
何やら胸に何かをいっぱい抱えている様子だ。

 「ゴメンですぅ〜。走っててこれをイッパイ見つけたので拾っていたですよ〜。
  お手柄なので……すきゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

走りながら話すと言う彼女にしては大変高度な事をやったせいか、見事何もないところでイブが転ぶ。
途端に抱えていたものが、ツカサ達の足元に派手にまき散らかされる。
思わず全員突っ込みたいところだったのだが、足元の物が何なのかに気がつき、ツカサ達の表情が変わった。

 「ちょ……!?これ、ひょっとして仮面!?」



 「どういうつもりですの!?私の相手で目を合わせないなんて!」

一方、こちらはお互いの初撃が終わり、対峙する食人とビキニアーマー通り魔。
そんな彼の彼の目深ニット姿に通り魔が激昂していた。

【歴戦の立ち回り&防御術】を駆使し、初手からの攻撃を全てその姿でかわされたのだ。
相手としてはこれ程挑発と思う事はない。
予想通りの反応と流れに、食人の口に笑みが浮かぶ。
もっと挑発に乗り、意識をこちらに向けてくれればバックアップが動きやすくなるのだ。

ついでに予想を超えたその視覚的な刺激に戦いを長引かせるのも
イチ男子として気まずい気がしてるのも事実なので、このままさっさと終わらせる事にする。

 「……その程度か。アンタ程度じゃ、この目隠しで充分勝てる」
 「気に入りませんね。貴方にはもっと楽しんで頂かないと…いけませんわっ!」

仮面の通り魔が勢いよく跳躍する姿を見て食人は勝利を確信する。

(「かかった!……これを迎撃した隙を狙って【シールングランス】をかければ!」)

しかし通り魔の反応は、食人の得意の読みを少しばかり超えたものだった。
程なくして、通り魔の攻撃の狙いが自分の急所でない事に彼は気がつく。
狙いは……確実にニット帽に定められている!

 「もっとしっかり!私のこの姿を見ていただきますわよ!」
 「え……ちょ、そこぉ!?」

攻撃の意図を悟り、慌てて身を捻った時には既に遅し。
攻撃をかすめて、ずれたニット帽から食人の目に彼女の姿が式距離で飛び込む。

 「ちょ、それはやばい……っ!」

ニット帽の障壁が無くなった彼の【邪気眼レフ】を阻む壁は他に無く、
ダイレクトに視界が通り魔のビキニアーマーを透過した。

刹那、戦場にいくばくかの血が雪のように迸った。

……刀傷の血では無いことはとりあえずここに記しておく事にする。

 「ほほほほ!満足頂けまして!?そして私は強いのですよ!ほほほほほ!」
 「……く!させるか!!」

その血を勝利の証と勘違いし、移動しようと踵を返す美緒に、食人が夢中で槍を放つ
……が当然見ないで放ったので当たる筈も無く、その穂先は狙いを大きく外して奥の物陰に炸裂した。

……なんだか悲鳴のようなものが聞こえた気がするが、今はそれどころではない。
食人は布で鼻を押さえると、上空の仲間に連絡をする。

 「すまない、逃げられた!すぐに追うから目標の追尾を頼む!」

続けて月詠 司に連絡を取るが、なぜかちっとも繋がらない。
恐らく今の戦闘は見ていただろうからわかる筈…と、ひとまず信じて食人も後を追うのだった。

その当の月詠 司もとい魔法少女ツカサ達は……
先ほど食人の槍の穂先が当たったその瓦礫の中で、全員気を失って埋もれていた。
こちらはこちらで、イブの拾った仮面にの事で誰も槍の襲来に気がつかなかったらしい。

程なく、のびていた一人……ウォーデン・オーディルーロキの体が起き上がり顔を上げた

 「へへ……今度はボク達も、仮面のお世話になるなんてね!」

完全にもう一人の人格に切り替わっている彼女の顔には、しっかりと仮面が装着されていた。
見れば他の面々の顔にもしっかり仮面が装着されている
偶然とはいえ、しっかりこういうオチにたどり着くあたりはイブの持つ不幸因子の影響だろうか……?

すっかり感情を開放させたロキは、とりあえず全員を起こすことにした。。

 「さ、みんな起きてよ!折角だからこの騒ぎ!トコトン楽しまないとね!」