リアクション
部屋に入った途端、カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)はベッドでつまらなさそうに足をパタパタさせていたアランのそばへ寄って行く。 『小さな箱と大きな箱』 昔々、ある所に大層お転婆な娘がおったそうじゃ。 その娘は、西に化け物に襲われて困っている村の話を聞けばそれを退治しに行き、東に大昔に隠されたお宝の話を聞けば、それを探しに地の果てまでも目指したそうじゃ。 ある時、娘がやって来た大地の底のその奥に、二つの宝箱を見つけたそうな。 宝箱は大きな物がひとつと小さなものがひとつ。 その宝箱はたいそう頑丈な魔法の鍵がついていてその場ですぐに開ける事は無理な様子じゃった。 しかし、共に来ていた従者と二人で運べば、どちらかは外に持ち出せそうじゃった。 宝箱を持ち帰り、時間を掛けて調べればそれを開ける事は出来る。 娘はお付きの従者に向って言ったそうじゃ。 「こういう時は、小さな箱にお宝が入っている。大きな箱を選ぶ欲深い者には何かしら罰が与えられるものだ」 とな。 娘と従者は小さな箱を持ち帰ると、すぐに鍵を調べ上げ、自分の住処でそれを開けようとした。 しかしそれは何と宝箱の形をした化け物だったのじゃ。 何とかそれを退治したものの、娘はたいそう悔しがったそうじゃ。 どうにも諦めきれぬ娘は、再び従者と共に、大きな宝箱を持ち帰るため地の底に向かったそうじゃ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー そこでぴたりとお話をやめてしまったジュレール。 口の端を少しだけ上げて、アランを見る。 「この続きを知りたいか?」 「早く続きを聞かせるのじゃ! 気になる!」 「そうであろう、そうであろう。ならこの続きはそこにいるお転婆そうな者に聞くが良い。顛末を知っておる」 ジュレールが指さしたのは今にもアランにもふもふっと抱き着きたそうなカレンだ。 「はっ!? えっ!? 何?」 「……全く聞いておらんかったのか?」 「え、えーっと……なんとなく聞いてたよ! 話のオチでしょ?」 「顛末じゃ」 「そそ、えーっとね……確かおっきな箱を取りに行って、持ち帰ってきたら、そっちはでっかいニセ宝箱の怪物だったんだよねぇ。倒すのに苦労したよ……」 カレンはその時の事を思い出したのはうんうんと頷いている。 「う? これは実際にそなたらが経験した話なのか?」 「はっ! そうだよ! この話ってちょっと……いや、かなり変更されてるけどこの間ジュレとお宝さがしに行った洞窟での話じゃないか!!」 「はっはっはっは」 ジュレールは乾いた笑いでごまかす。 「こういう好奇心だけで突っ走る人になってはいけないという素敵な物語だ。ためになったであろう?」 「う、うむ。よくわかったぞ」 アランはジュレールの言葉に深く頷いたのだった。 「そんなぁ〜! どうせならボクと一緒にお宝さがしをすれば楽しい経験が出来る事間違いなし! とか言ってよ、ジュレ〜」 「嘘はつけぬ」 半泣きになっているカレンを見ているジュレールはなんだか楽しそうだ。 |
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