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追ってっ!ロビン・フッド

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追ってっ!ロビン・フッド

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 エピローグ


「見逃して良かったの? あの時、取り押さえてしまえば手柄にすることもできたのに」
「まあ、多分、こうなるのが一番丸く収まるんじゃないかな、って」
 美術館に新たに収蔵された三匹の猫の絵を眺めながら、セレンフィリティがセレアナに答える。
「それに、あたしたちがロビン・フッドだなんて勘違いされたら嫌だからね」
 危ない橋を渡ろうと言い出したのはどこの誰だっただろうか。セレアナが苦笑を浮かべる。
「魔法の額縁は盗られなかったし、『ロビン・フッド』は『魔法の額縁』を介して元いた絵画の世界へ帰った」
 うん――いいじゃない。セレンが笑う。
「あとはお姫様、か。きっと、どこかで会いたい人のことを想って、帰れない場所を想っているんだろうなぁ」
「珍しくロマンチックなことを言うのね」
 セレアナが感心して見せるが、
「ま、スリル満点で楽しかったわよね。クセになっちゃうかも」
 セレンはそんな風に、いつもの調子で続けるのだった。

 ☆

「ロビン・フッドさんもまた、絵画の中の住人だった。ですか」
「けれど、別に彼女たちが額縁を欲していたわけではないのよね。どこまでも『設定』に忠実だっただけで」
 泪の言葉に、雅羅が答える。 
「お姫様、ですか。絵画の国のお姫様、かぁ。面白いかもしれないです」
「迷惑の張本人なんだけど……」
 雅羅が眉をしかめる。
「お姫様が生き別れた王子様、というのは、どこかの絵画に描かれているんでしょうか」
「どうかしら。それも『設定されている』というだけだったりして」
 ここに魔法の額縁がある以上、縁があれば関わることになるでしょうね。
 雅羅が、三匹の猫が描かれた絵画を横目で眺めて呟いた。
「――お疲れっ、雅羅」
 そんな雅羅の背中にルカルカ・ルーが抱きついた。
「って、いきなりどうしたの? 本当、疲れたわ……まさか、私に変装されてただなんて」
「ホントだよ。私だったら『今ここに俺が来なかったか!?』やってたのに」
 理沙が笑って答える。
「理沙も怪我とか無い?」
「大丈夫。まあ、偽物の怪盗さんに一本取られちゃったけど」
「およ、偽物?」
 ルカが首を傾げる。
「うん。よく分かんないけど……便乗犯? 逃げ出しちゃったけどね」
「ソイツに構ってたせいで、本物にまんまと私に変装されちゃったのよ」
 掻きまわされたわ、と雅羅がぼやく。
「ははは。裏では色々あったんだね」
 けど。
「こんなに近くにいるんだから、ヴァイシャリーの子たちみたいにまた一緒に遊んだりできるといいね」
「泥棒猫と? 私は……ちょっと遠慮したいわ」
 ルカの言葉に雅羅が苦笑いで答えた。

 ☆

「あら、どうしたの。リンちゃん」
 七瀬歩の声に、リン・リーファ(りん・りーふぁ)がビクリと肩を震わせた。
「あなたもこの絵を見に来たの?」
「なんてったって、あのロビン・フッドそのものだからね」
 ロザリンド・セリナと桐生円が歩に続いてリンと肩を並べる。
「そ、そうみたいだね」
 リンは横目でちらちらと雅羅と理沙の様子を窺いながら、絵画を見上げた。
 自分が<エルファバ>に扮してまで追ったロビン・フッドは、その身を賭してまで追い掛けた額縁と一緒になってしまった。
 「絵画の登場人物が抜け出してしまう魔法の額縁」というのも、決して一点物というわけではないようだ。
 それなら、いつか、ロビン・フッドに助けを求めたという姫さまが報われる日が来るかもしれない。
 リンはそんなことを思った。

 ☆

「ねえ、ロップイヤーさん」
「……?」
 ラズィーヤの声に、兎耳の少女が顔を上げた。
「お姫様、の話だけど」
「何処かにいる、んだろうね」
 ロップイヤーが答えるよりも早く、レッキスが口を開いた。
「聞いた話じゃ、この泥棒猫たちは絵画の『設定』に支配されているんだろう?」
「そうみたいね」
 レッキスが三匹の猫の絵画を指差す。
「……探さなくちゃ」
 ロップイヤーが小さく、声を上げた。
「やはり、そうなるのかしら」
「……私たちお姫様に飼われた大勢の兎、という設定であれば。その義務はあると思う」
「そう」
 ラズィーヤが短く頷く。
「けど、なにも急ぎじゃないんじゃないの?」
「今回のロビン・フッドの件は……あそこで雅羅さんが止めに入らなかったら、絵画は消失したわ」
 『登場人物が殺されると、絵画が灰に消えてしまう』その特性に従えば。
「登場人物を失った絵画はあまりに脆い。探しているものがいつまでもあるとは思えないから、急いでも損はしないんじゃないかしら」
「……私も、そう思う」
 ロップイヤーはラズィーヤの言葉に頷くと、再び絵画を見上げた。
 俄かに募る焦燥感を感じながら――

担当マスターより

▼担当マスター

駒崎 ペルメル

▼マスターコメント

 皆さまご参加ありがとうございました。
 紆余曲折を経ながらも、やはり警備班の優勢。
 噂の大怪盗も最終的にはお縄となりましたが…!

 
 またまた今回も自身の未熟さを痛感いたしました……!
 精進精進…と、ひとり熱く熱くなっている次第です。
 御縁が御座いましたら次回もよろしくお付き合いお願いいたします。
 駒崎ペルメルでした。