リアクション
****** 遺跡から少し森の入った所で、昌毅は迷彩防護服や【カモフラージュ】を駆使して周囲の景色に溶け込んでいた。 迷彩用のシートを被りながら腹ばいになった昌毅は、機晶スナイパーライフルのスコープから駆けてくる≪機晶ドール≫の足に狙いを定める。 「いい子だ……」 昌毅は慎重に距離を把握しながらトリガーを引いた――銃声が森の中に響く。 さらに昌毅は続けざまに反対の足と手を打ち抜いていった。 「……よし」 ≪機晶ドール≫が行動不能なったのをスコープ越しに確認して、昌毅は次の標的を探そうする。 その時、少し離れた場所から昌毅の物とは違う銃声が聞こえてきた。 「那由他がなぜ……こんな泥だらけになって……」 阿頼耶 那由他(あらや・なゆた)がブツブツと不満を漏らしながら機晶姫用レールガンのトリガーを引き、電磁加速した弾丸で≪機晶ドール≫の腕を貫き吹き飛ばした。 那由他は昌毅と同じく腹ばいになって身を隠しながら攻撃を行っていた。 それはつまりぬかるみの上に身体を置いているということであり、否応なく全身に泥が付着してしまうということでもあった。 「ぬが〜!!」 突如、那由他が迷彩シートを吹き飛ばして、叫びだす。 「イコン馬鹿! 那由他をドロだらけにしたからには、帰ったらなんか奢るのだよ!」 那由他は昌毅がいる方角を見つめるが、迷彩のおかげでその姿を発見することができなかった。 「なんとかいったらどうなのだよ!」 返事がない昌毅に対して那由他が怒っていると、返事の代わりに茂みの一角が微かに揺れていた。 「マカフって奴は気味が悪いから付き合ったけど、こんなに泥だらけになるなんて……まったく、温泉くらいは連れて行ってもらうのだよ」 ブツブツ文句をいいながら再び迷彩シートを被り、機晶姫用レールガンを構えなおす那由他。 こちらに気づかずゆっくりと近づいてくる≪機晶自走砲台≫に狙いを定め、引き金に指をかける。 今にも発射しようとしたその時――突如那由他の体が、宙を舞った。 「んわぁぁぁ! なんなのだぁぁぁ!?!?」 那由他は叫びをあげて宙を舞いながら自分の傍を通りすぎていった物に見つけた。 それは対物ライフルから発射されたドデカい弾丸だった。 猛烈な勢いで駆け抜けた弾丸は、≪機晶自走砲台≫を掠っただけでバラバラにしてしまう。 「まずは一体撃破です」 対物ライフルを発射した本人であるマイア・コロチナ(まいあ・ころちな)は、ニコニコ笑いながら次の弾を装填していた。 「それでは、もう一発いきますよ♪」 マイアは重量のある対物ライフルを構えなおすと、あまり的を絞らず素早く引き金を引いた。 スキルで強化された弾丸は、銃口から発射されると木々を薙ぎ払いながら≪機晶自走砲台≫に直撃してバラバラの機械片へと変えていった。 「ふふん♪ ガンガンいきますよ!」 『おい、おまえらっ!』 マイアが楽しそうにしていると、昌毅が籠手型HC弐式から話しかけてくる。 『お前らこれがカウンタースナイプだって分かってるか? 確実に狙いを絞って撃つんだぞ?』 『いいんじゃないですか? 倒せば皆一緒ですよ』 『いたたっ……そうそう、全て全滅させればいいのだよ。 でも那由他を巻き込むのはやめてほしいのだ!』 『……お前ら』 籠手型HC弐式を通して楽しそうに答えるマイアと那由他に、昌毅は呆れてため息をついていた。 二人にはスナイパーの練習に付き合ってもうらために来てもらったが、どうにも予定していたようにはいきそうにない。 ここまで来てあれこれ言っても仕方ないと思った昌毅は、気にせず自分の仕事をすることにした。 |
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