リアクション
それは予想外で、『突然の出来事』だった。 ****** 何らかのスイッチによって発生したのはガーディアンと、もう一つ。朱鷺が遭遇した≪徘徊するミイラ≫もそうだった。 ≪徘徊するミイラ≫は遺跡のあちこちに出没していた。 それは最深部に向かう生徒達を妨害するだけでなく、捜索隊を遺跡外に逃がそうとした生徒達にとっても、大きな障害になっていた。 「いやはや、結構な数ですねぇ」 レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は次々と向かってくる≪徘徊するミイラ≫を薙ぎ払いながら、苦笑いを浮かべていた。 「レティ、もうすぐ出口ですから頑張って!」 「了解です。もうひと踏ん張りしましょうかね!」 レティシアはミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)から援護を受ける。 背後では救助した捜索隊が不安そうな表情でレティシア達を見つめていた。 「ここで負けるわけにはいかないですよね……。 北都さん、その人たちの護衛は任せましたよ!」 「いいですよぉ」 「では、あちきは勇猛果敢に突っ込ませてもらいましょうかねぇ!」 レティシアは護衛を清泉 北都(いずみ・ほくと)に任せ、ミスティと共に≪徘徊するミイラ≫の集団へと突っ込んだ。 ****** そんなあちこちで戦闘が行われている中、ミッツ達はなぜか≪徘徊するミイラ≫と遭遇せずに最深部へとたどり着いた。 そして―― 「なんじゃ、この雪は!?」 降りしきる雪に驚き、呆然とした。 そんな時、吹雪の中からグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)がミッツ達の所へ走ってきた。その手には錆びついた金属製の宝箱を抱えていた。 「お、丁度いい所に来たな。 それじゃあ、これ頼むわ」 グラキエスは宝箱を、強引に近くにいたリネン・エルフト(りねん・えるふと)へと押し付けた。 「あの……これは?」 「心臓だよ。探してたんだろう?」 「マジか!? おい、見せてくれ!?」 グラキエスの言葉に興奮を隠せないミッツは、目を輝かせて宝箱を見つめていた。 すると、リネンは少し困った表情でグラキエスを見つめた。 「罠が心配?」 「ええ、まぁ……」 「安心してくれ。罠も鍵もすでに外してある」 「そうですか」 リネンはホッと胸を撫で下ろした。 安堵したリネンは、急かすミッツの傍に寄る。 そして、ミッツが大粒の唾を飲みこむ中、鍵の外された宝箱をリネンがゆっくりと開いていった。 「…………」 宝箱から魔力が溢れ、重苦しい空気が周囲を包む。感じていた寒さとは別の鳥肌が立ち、自分の物とは違う心臓の音が生徒達の頭の中に響いてきた。 宝箱の中で人の頭ほどの心臓が、聞こえてくる鼓動と同じリズムで脈打っていた。 ――数秒間、開かれていた宝箱の蓋が閉められ、ミッツはいつの間にか止めていた呼吸を再開した。 「間違いない。本物だ」 ミッツはグラキエスの目を見て頷いた。 「確認できたみたいだな。だったら先に脱出してくれ。 ここは危険だからさ」 「危険?」 ミッツが尋ね返した時、奥から巨大な雪だるま型のガーディアン――≪積雪のガーディアン≫がミッツ達の方へ向かってきた。 「ま、そういうことだ……」 グラキエスはアクティースを取り出して構える。 「いいから早くいけ!」 「わ、わかった」 ミッツ達はグラキエスにこの場を任せて、遺跡を脱出することにした。 地図を確認しながら来た道を引き返す。 すると、ミッツ達はそこで初めて≪徘徊するミイラ≫と遭遇した。 「今度はなんなんだよ!?」 困惑するミッツ。 そこへ箒に乗った遠野 歌菜(とおの・かな)が槍で≪徘徊するミイラ≫達を薙ぎ払いながら現れた。 「歌菜!」 「ミッツさんご無事で! その宝箱、例の心臓が入っているんですか?」 「そうそう。悪いだけど、脱出するの援護してくれないか?」 「いいですよ!」 歌菜は箒から降りてミッツ達の目の前に立つと、精神を集中させた。 「いきます! 凍てつく嵐よ! 立ちふさがる者を永久の眠りへ誘え! ブリザァァァァド!!」 歌菜の叫びと共に氷の嵐が、ミッツ達の進行方向にいた≪徘徊するミイラ≫達へと襲いかかり、瞬く間に氷漬けにしていく。 「羽純くん、いまよ!」 「任せろ」 歌菜の呼びかけに答えて、箒に乗った月崎 羽純(つきざき・はすみ)が≪徘徊するミイラ≫達の中央へと舞い降りる。 羽純が両手に槍を構えた。 「いくぞ! はぁぁぁぁぁぁ――!!」 そして、羽純は大きく深呼吸すると、両手を振り上げ、身体を捻りながら槍を――振り下ろした。 瞬間、槍から発生した衝撃が氷漬けになった≪徘徊するミイラ≫を打ち砕き、さらにその先にいた≪徘徊するミイラ≫も衝撃と飛び散った破片が貫いていく。 気づけば一瞬のうちに、大量に道を塞いでいた≪徘徊するミイラ≫達がただの氷の破片へと化していた。 「道は開いた。さっさと脱出しないと次がくるぞ」 羽純は箒に乗り直しながら、笑って言った。 「サンキュー」 ミッツ達が出口に向かって進みだす。 出口まではまだまだ距離があるが、皆がいればどうにかなるだろうとミッツは思っていた。 その時、横に並んだ羽純が尋ねる。 「なぁ、ミッツ」 「なんだい?」 「あんた、そんなに足が――」 「頼むからもう放っておいてくれ……」 「?」 ドンヨリ俯くミッツに、羽純は不思議そうに首を傾げていた。 |
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