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リアクション
***
「皆さん、お疲れ様です」
海の家やもりに帰ってきた契約者たちを次百姫星が笑顔で出迎える。
遊び疲れた契約者たちは、スイカ割りで割ったスイカを食べながら休憩に入った。
「いやー、疲れましたね」
権兵衛はそういってため息をつく。
スイカにかぶりついていたアリエティは、そんな権兵衛に向かっていった。
「怨霊のくせに疲れるのか? 変わった奴じゃ」
「ハハハッ、それをいうなら、こんな私をもてなす皆さんも変わり者ですよ」
「――権兵衛さん! アリエティさん! ちょっとこっちに来てください!」
と、レキ・フォートアウフがふたりに声をかけた。
見れば、契約者たちがみな一箇所に集まっている。
「なにをするのじゃ?」
「みんなで記念写真でも撮るんだよ! だから、ほら、ふたりとも早く来てよ!」
レキにそう急かされ、ふたりは足早にみんなの元へ向かう。
そして権兵衛を真ん中にして、記念撮影が行われた。
「はい、OKだよ。それじゃあボクは、この写真を海の家に飾ってもらえるようにおばちゃんに頼んでくるね」
レキはそういうと、すぐさまおばちゃんの元へ向かった。
「のぉ、権兵衛。お主は真ん中におったが、ちゃんと写っておるのか?」
「さあ、”しゃしん”というものはよくわかりませんので、どうなっていることやら……」
「はい、権兵衛さんにアリエティさんもこれをどうぞ」
と、次百がカキ氷を持って現れた。
それを見たアリエティは、目を輝かせる。
「おおっ、カキ氷じゃ!」
「イチゴとメロンを半分ずつかけてミルクをかけたおばちゃんと私の力作ですよ」
「ふぉぉっ、贅沢じゃ!」
アリエティはそういうと、さっそく甘い匂いを漂わせる氷の山に銀のスプーンを差し込んだ。
「あのー、次百ちゃん?」
「なんですか、もっくんさん?」
「みんなの分はあるみたいなんだけど……俺の分はないの?」
「はいっ、ありませんよ。というか、これはもっくんさんのおごりですから」
「えっ……」
もっくんの顔からさぁーと血の気が引いていく。
そして何気なくおばちゃんの方に視線を向けると、おばちゃんはニヤリと笑った。
「うおーっ、みんな食べちゃダメだァ!」
もっくんは我を忘れて叫ぶ。
そんな中、権兵衛はカキ氷をじっと見つめていた。
それを見て、呪われた共同墓場の死者を統べる墓守姫が声をかける。
「どうしたの、ミスター七市? 早く食べないと溶けてしまうわよ?」
「いえ、食べてはみたいんですけどね……こんな体なもので」
「ああ、そうか。ミスター七市は物には触れたり出来ないタイプの幽霊なのか」
「そっか、カルキに憑依して体を使えばいいよ!」
と、近くでふたりの会話を聞いていたルカルカ・ルーがそういった。
それを聞いた権兵衛は眉毛を下げる
「確かにそうするのもひとつの手だと思いますが……勝手にやるのはどうも」
「大丈夫だよ、ちょっと借りるだけだから」
ルカはそういってウィンクすると、カルキノス・シュトロエンデを呼んだ。
イカ焼き、トウモロコシ、ヤキソバ、ラーメンなど、やもりにあるメニューを端から頼んでは食べていた大食漢のカルキノスは、ルカに呼ばれて箸を止める。
「なんだ? なにか用か?」
「カルキ、ちょっとこっちに来てくれる?」
「?」
カルキノスは首をかしげながらもルカの近くにやってきた。
「カルキ、その体ちょこっと権兵衛に貸してあげてね?」
「はあっ!?」
「――それ!」
ドンっ、とルカに突き飛ばされたカルキノスは権兵衛に重なる。
そしてカルキノスは権兵衛に憑依され、すっかりと人が変わったようになった。
「ささっ、カルキ――じゃなくて、権兵衛。美味しいものをたくさん食べちゃおう」
ルカはそういうと、ニコリと笑う。
カルキの体を借りた権兵衛はポリポリと頬をかいて苦笑いを浮かべた。
「そうですね。こうなったらせっかくですから、久しぶりにそうさせていただきますか」
そしてそういうと、まずは目の前にあるカキ氷を食べ始めた。
「甘い! こんなに甘くて美味しいものは食べたことがありませんよ!」
権兵衛は嬉しそうにそういうと、あっという間にカキ氷を平らげる。
そして次はスイカに手をつけた。
それを見て、次百は目を丸くする。
「すごい勢いで食べはじめましたね、権兵衛さん」
「そりゃそうでしょ。ずっと幽霊やってて食べてなかったんだからね」
ルカはそういいながら、満足そうにうなずくのだった。
それから、色んなものを注文して食べた権兵衛は満足するまで食べ続けた。
「ふぅー、もう食べれません。ご馳走様です」
権兵衛はそういうと、カルキの体からスッと離れた。
「ハッ、俺はいったい! それにこの満腹感はなんだ!?」
カルキは自分の体に起こった異変に困惑しながらも、記憶がなくなる瞬間のことを思い出してルカに詰め寄った。
「――よし、休憩終わり! 海に行くよ!」
ルカはそういうと、カルキノスの追求をかわして海へとダッシュしていく。
「あっ、おいルカ! 誤魔化してるんじゃねぇぞ!」
カルキノスはそういうとそんなルカの後を追って駆け出した。
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