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リアクション
■蒼空学園女子寮雅羅の部屋(深夜)
「こっ、ここが夢にまで見た雅羅ちゃんのお部屋! 私のユートピア! もう入れないかもしれないからいっぱい撮影しないと!」
「こらこら! 瑠兎姉、今日はそんなことをしに来たんじゃないだろ!」
どこから取り出したのか、両手いっぱいの撮影器具で部屋を撮ろうとする想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)を、桃幻水で女装した想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)が後ろから羽交い絞めにして制止していた。
心なしか雅羅の視線が痛く感じる。
「わ、分かっているわよー。こうやって撮影しながら、怪盗が侵入しそうなポイントとかを確認してたのよ」
「絶対に嘘だ……」
「嘘ね……」
「嘘であろう」
「あらあら」
雅羅とアルセーネ・竹取、そして四代目 二十面相(よんだいめ・にじゅうめんそう)の総突っ込みに、夢悠は苦笑いでごまかすのが精いっぱいだった。
「それじゃあオレたちはドアの外で見張っているから、何かあったら大声で呼んでね」
「せ、せめてクローゼットの中に隠れて待ち伏せを〜」
「絶対にダメだって!」
そんなやり取りをしながら、夢悠は諦めきれない瑠兎子の背中を押して廊下へと消えていく。
ドアの閉まる音で我に返った二十面相はこほんと咳をすると、くるりと雅羅の方へ向いた。
「では、先ほどの作戦でよろしいかな?」
「え、ええ。私たちはかまわないけれど、本当に大丈夫なの?」
「疾くとご覧あれ」
■蒼空学園女子寮(午後零時直前)
どこから侵入したのか、それはふらりとやってきた。
漆黒のシルクハットとマントに身を包み、アイマスクを付けた怪盗ユートピア。
長い廊下の落とされた照明の影から、忽然と姿を現した。
雅羅の部屋の前で見張りをしていた夢悠と瑠兎子の顔が険しくなる。
「ここは通さないよ。そして、逃がしもしない」
夢悠はフロンティアスタッフを構え、瑠兎子は高周波ブレードを軽く振る。
まずは瑠兎子が仕掛けた。
体勢を低くした夢悠の上から飛び出して、斜め下への突きを放つ。
同時に夢悠がユートピアの足を封じに行く。
斜めに飛んで瑠兎子の攻撃を回避したユートピアは、トンと壁を足場に夢悠を飛び越えた。
狭い廊下の戦闘では、どうしても攻撃方法が限られてしまう。
しかし、それは避ける方にも同じことが言えるのだった。
「通さないって、言ったよね」
夢悠は振り向きざまにフロンティアスタッフを持ち上げ、怪盗の足に絡ませた。
空中でバランスを崩したユートピアは、天井に手を付けた反動で床へ着地する。
「瑠兎姉!」
着地の瞬間に瑠兎子の高周波ブレードが突き刺さる。
パリン。
瑠兎子の一撃を受けたユートピアが転がった瞬間、その姿が掻き消えた。
残されたのは割れた蛍光灯。
「空蝉の術か!?」
瞬時に把握した夢悠の視線が、捕らえ損ねた獲物を求めてさまよう。
それは、闇に閉ざされた長い廊下の奥、曲がり角に消えていくマントを逃さなかった。
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