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無法者と怪盗と契約者と

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無法者と怪盗と契約者と

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■蒼空学園女子寮雅羅の部屋(午後零時)


「正面から堂々と入ってくるなんて、さすが怪盗さんね」

 音もなくドアから入ってきたユートピアに対して、雅羅が笑みを浮かべる。
 少女の言葉に、怪盗は優雅な一礼を返す。

「予告通り、その心を頂きに参上しましたよ」

 どこから取り出したのか、右手に持ったステッキを雅羅へと向ける。
 だが、それきり何も起きる気配がなかった。

「な、何故だ。何故盗めない」

 焦った様子でステッキを振るユートピアを見て、雅羅がニヤリと笑う。
 腰を低くして、床を蹴る。
 右肩からの強烈な体当たりがユートピアを部屋の隅に吹き飛ばす。
 すかさず怪盗の懐に手を伸ばすが、これはさすがに阻まれてしまう。

「怪盗と言っても、まだまだのようね」

 雅羅は起き上がると、倒れたままの怪盗を見下ろしながら自らの髪に手を伸ばす。

「何故私の純粋な心を盗めないって? それは簡単な事ですよ、何を隠そう私自身、人の物を盗むような悪い泥棒なのですから、純粋な心なんてある訳無いでしょう!」

 手にした髪がずるりとずれていく。

「さあ! 開目して、その目で見てみたまえ、怪人二十面相の曾孫、四代目二十面相のこの姿を!!」

 ウィッグが外されたその姿は、雅羅の面影を残したまったくの別人、二十面相だった。

「どうでしたか? 曽祖父ゆずりの私の変装術は!」

 勝ち誇る二十面相の後ろでクローゼットがバンと開く。

「今出たら危な……」
「どうやら噂の怪盗さんもこれまでのようですね、大人しく観念しなさい!」

 アルセーネの制止を聞かず、バントラインスペシャル雅羅式を構える雅羅が現れた。
 驚いて振り向く二十面相。
 その隙にユートピアは本物の雅羅へとステッキを向けていた。

「あ……あれえ……」

 雅羅から輝く微粒子が舞いあがり、怪盗の元へと集まっていく。
 崩れ落ちる雅羅を二十面相が支えた時、すでにユートピアは窓際まで移動していた。

「確かに頂戴しましたよ、お嬢さん」

 そう言い残して、怪盗は窓から飛び去っていく。
 同時に入り口のドアが開いて夢悠と瑠兎子が飛び込んできた。
 何故か滑車の付いたマントとロープを手にしている。
 部屋の惨状と開いた窓を見て状況を把握した夢悠は、迷うことなく倒れている雅羅へ駆け寄った。

「とりあえず、ベッドに寝かせて手当を!」