リアクション
【痴漢じゃないです、タコです】 ◆ 一方逃げ出したキロスは、無事リヴァイアサンと戦っている皆の元に合流できた。 「キロスさん! 大丈夫ですか!?」 水着姿に大剣という姿のアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)だ。 アルテミスはキロスと共に海岸に向かったのだが、道中でキロスが散々野次馬などに追い回された挙げ句、現在までエリザベータと沙狗夜に追い回されていたため、今ようやく合流できたのだ。 「正義の騎士として、ヴァレリアさんを助けに行きます!」 アルテミスは大剣を構えた。 (キロスさんがヴァレリアさんを助けようとするのを見ると、なんだか胸がモヤモヤしますが……まずは救出が優先です!) キロスとアルテミスは、リヴァイアサンの方へと駆けた。 「そういえば香菜さんと恋人同士だと勘違いしていてごめんね。ずっとそういっていたのに全然話し聞いていなかったよね……」 駆けて行きながら、マリカはキロスに訊ねる。 マリカは今まで、キロスと香菜が恋人同士だと勘違いして話をしていた。 「ちなみに、アルテミスさんのどんなところに惚れたの?」 「どこに、って……」 キロスは盛大に悩んだ。悩みながら、バサバサとオルトロスの触手を斬り落としていく。 「それは……それはだな……」 考え込む。斬る。考え込む。薙ぐ。考え込む。断ち切る。 「…………」 盛大に悩んでいるようだが、その剣の動きに迷いはない。 「…………よくわからん!!」 考え込んだ結果がこれである。 「そんな!」 焦るアルテミスの背後から、聞き慣れた高笑いが聞こえて来た。 「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス!」 ドクター・ハデス(どくたー・はです)だ。 「おのれ、キロスめ! あんなどこの馬の骨ともしれぬナンパ男に、うちのアルテミスをやるわけにはいかん! ……特に、オリュンポスの戦力的に!」 キロスのためにアルテミスがオリュンポスを婚約退職してしまったため、ハデスはキロスを逆恨みしていた。 アルテミスがいないと、オリュンポスは物理戦闘力が激減するのだ。 「さらにキロスめ、うちのアルテミスがいながら、さらにヴァレリアを助けて嫁にするつもりか! そのようなことは、この俺が許さん!!」 ハデスは目の前でうようよしているオルトロスたちに、潜在解放をかけた。 強力な力を手に入れたオルトロスに、ハデスはさらにプロフィラクセスをかけた。 「さあ、我がオリュンポスの技術によりパワーアップしたオルトロスよ! キロスのヤツを倒すのだ!」 ハデスは作り上げた強化型オルトロスに命じ、士気高揚させようとした…… が、オルトロスには言語が通じなかった! 「あ、待てこらっ!」 オルトロスは捕まえようとするハデスの手からスルリとぬけて、アルテミスの方に向かって行く。 「ま、待て! そっちは……!!」 「キロスさんっ! オルトロスは私に任せ、ヴァレリアさんをっ!」 オルトロスを見付けたアルテミスは、大剣を構え一閃した。 「オルトロス程度、私の敵ではありません。さあ、キロスさんを追わないと……」 キロスを追おうとしたアルテミスの後ろで、何かが蠢いた。 「えっ?! きゃ、きゃああっ!」 なんと、アルテミスに切られたいくつかの触手が、復活してアルテミスに襲いかかったのだ。 「やっ、しょ、触手が水着の中にっ?!」 「ア、 アルテミス!」 キロスは、オルトロスを睨みつける。 「キロスさんっ、私のことはいいので、ヴァレリアさんを助けに行って下さいっ!」 「くっ!」 キロスは迷わず、アルテミスに駆け寄った。 「キ、キロスさん……」 「バカ野郎、見捨てるわけねえだろっ!!」 触手に怒りを込めて断ち切っていくキロス。 「これ以上いちゃつくなら、容赦はしないであります! キロス! ここが貴様の墓場であります!」 浜辺に打ち捨てられていた段ボールの中から、声がした。 「非リア充を裏切ったキロスに制裁を!」 ダンボールで隠れながらキロスを見張っていた葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は、ドサクサに紛れて爆弾を投げつけた。 (4コマで誰からも絡んでもらえなかったこともあるパラミタの非リア充の象徴であったキロスが恋人を作りさらにお嬢様を救出してどこぞの種馬忍者のごとく恋人に加えようとするとは……許されるはずがないのであります!!) 吹雪は裏切り者キロスへの制裁のため、爆弾を投げつけていく。 「キロス、大丈夫?」 「大丈夫に見えるか!?」 再度爆弾地獄に襲われ始めたキロスは、コハクに叫び返した。 美羽とコハクは顔を見合わせ、同時にキロス目掛けて駆けた。 「邪魔してないで、海に帰りなさーいっ!!」 美羽がバーストダッシュで突撃する。 コハクがヒプノシスで邪魔する者たちを眠らせ、そこを美羽が鉄壁飛連脚で海に蹴り込んでいく。 海に投げ返されていくタコとともに、吹雪も吹っ飛ばされていった。 「む……無念であります」 キロスの元に辿り着いたコハクは、キロスとアルテミスを助け出した。 と、リヴァイアサンが水中に姿を消した。何人か マリカもその場に駆け寄ってくる。 「うーん、キロスさん。(必殺の技が)できたと思ったのはマリカの勘違いだったみたい」 「できた!?」 アルテミスが呆然とマリカを見つめる。 「経験不足で早とちりだったのかな。だから、また今度(稽古の)お相手をお願いしたいな」 「また今度お相手!?」 精神的な勘違いダメージがアルテミスに蓄積されていく。 「あ、そうだ! キロスさん、アルテミスさん、ご婚約おめでとう!」 ふるふると震えるアルテミスに、マリカは気付かない。 「お似合いだよ、結婚式には呼んでもらえると嬉しいな」 「これが……ヤンデレというものなのですか!?」 「「ヤンデレ!?」」 キロスの説得の後、どうにかアルテミスの誤解は解けたのだった。 「勘違いしてすみませんでした……」 恥ずかしそうに見つめ合うアルテミスとキロス。もう、爆弾を投げてくる者はいない。 「よかったね」 「うん。キロス、幸せそうだね」 アルテミスたちを見ながら、お互い幸せそうに微笑む美羽とコハク。 「……ふっふっふ……」 不敵な声と共に、ぬっ……と海中から現れたのは、ボロボロになった吹雪だった。 「おま、沈んだはずじゃ……!」 水中から伸ばされた吹雪の手が、波打ち際に立つキロスとコハクの足を掴む。 「知らなかったでありますか、テロリストは一人では死なないのであります!」 勢い良く、吹雪はキロスとコハクを水中に引きずりこんだ。 キロスと手を絡めていたアルテミス、コハクと腕を組んでいた美羽もつられて水中へ。 四人は、吹雪の自爆弾によって、リア充たちは爆発させられる運命となった。 ((と、飛んでて良かった……)) 鋼鉄の白狼騎士団を上手く巻き、空中からその様子を見ていたリネンとフリューネは、どうにか難を逃れたのだった。 「ヴァレリアを助けに行きましょう!」 フリューネとリネンは、再びリヴァイアサンの方へと飛んで向かったのだった。 |
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