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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【2】奇奇怪怪……8


「……ほう、コイツはわくわくさせてくるじゃねぇか」
 大剣の一撃で破壊した壁を踏み分け、竜人カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)は口笛を吹いた。
 光指輪から放った精霊が暗闇を照らす。
 そこは拝殿だった。奥に、おそらく英雄ブセイを模したと思しき武神像が見える。
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は、分隊と共有したマッピングデータを確認。
「方角からすると、ここが霊廟の中央だ。廟のマップはこれで完成。ヴァラーウォンドがあるなら、ここしかない……」
フハハハハ、探索ご苦労だった、諸君!
 突如、闇に轟く高らかな笑い声。
 メガネをキラリと輝かせ、探索隊の背後より失礼、見参。
 世界征服を目論む秘密結社オリュンポスの幹部ドクター・ハデス(どくたー・はです)だ。
「ククク、ブライドオブシリーズこそ世界征服達成のカギ! ウォンドは秘密結社オリュンポスが貰い受ける!」
「勝手なこと言ってんじゃねぇぞ! 世界征服を企んでるヤツに誰がお宝を渡すか!」
「ふん、引っ込んでいろ、駄竜!」
「だ、誰が駄竜だっ!」
「黙れ、ヴァラーウォンドはブライドオブマッドサイエンティストであるこの俺こそ相応しいのだ」
「ブライドオブマッドサイエンティスト……狂気の科学者の花嫁か。ご免こうむりたい肩書きだな」
 ダリルがボソッとこぼす。
「さあヴァラーウォンドを手に入れるのだ! 改造人間サクヤ! 人造人間ヘスティア!」
 改造人間こと高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)
 そして、人造人間ことヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)の2人がハデスの後ろから顔を出した。
「さぁコイツらを叩きのめせ……って、サクヤ! なぜ、俺の白衣の袖を掴んでいる!」
「に、兄さん〜……」
 涙目でしがみつくサクヤ。彼女は完全にこの霊廟のおどろおどろしい空気にビビッていた。
「改造人間のくせに臆病なヤツだ」
「べ、べつに怖くて袖を握ってるんじゃないですからね! に、兄さんがはぐれないようにですから!」
「だったらもう目的地に着いた、いい加減に放せ」
「う、ううう……」
「……おまえは大丈夫だろうな、人造人間ヘスティア?」
「勿論です、ご主人様……じゃなかったハデス博士」
 そう言うと背面に搭載した3段式6連ミサイルランチャーを見せびらかし自信タップリだ。
「おまえら、本気か……?」
「無論だ、駄竜! おまえ達に我がオリュンポスの誇る怪人の底力を見せてやる!!」
「ぐるるる……!」
「ハハハハ、そんな唸り声を上げても無駄だぞ」
「……俺じゃないぞ」
「へ?」
 ふと気が付けば、背後にキョンシーの大群が……いや、通常のキョンシーではない。
 四肢をピンと伸ばし跳ねる、先ほど生まれたばかりのヘルハウンドキョンシーの群れだ。
「な、なんだ……この素早さを下げる魔法を使いそうな連中は!?」
「きゃあっ、お、お化けっ!?」
 サクヤはハデスに抱きついた。
「データベース照合中……照合完了! 敵はゾンビが多数ですっ!」
 自信満々のヘスティアだが、ゾンビではなくキョンシーである。
 メイド型機晶姫のメモリには、残念ながらキョンシーの情報はインプットされていなかったのだ。
「ええい、サクヤ! ヘスティア! ゾンビごとき蹴散らしてしまうのだ!」
 しかし、完全にビビっているサクヤの火術は的外れの方向に。
 そもそも火器管制システムを持っていないヘスティアのミサイルは発射早々蛇行して天井を吹き飛ばした。
「し、しまった……自軍の戦力を見誤った! くそう……いらん恥を掻いた。ここは戦略的撤退だっ!」
 スタコラサッサとオリュンポスの面々は去って行った。
「何がしたかったんだ、あいつら……」