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リアクション
スタート・ダッシュ
今は活動を止めているイレイザーの背にある遺跡。
その深部に、エールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)はいた。その前方には、不気味に口を開けた、地下……イレイザーの体内への入り口。深部と言っても、実際にはさらに広大な空間への入り口に過ぎなかったわけだ。
「内部にはギフトと思わしき敵性存在がいるという報告がある」
「対策はあるの?」
聞くルカルカに、エールヴァンとは小さく、だが自信ありげに頷いた。
「とにかく警戒すべきは待ち伏せだよ。索敵能力に優れた兵が先頭に立ち、敵の位置を探る」
「たとえば、俺たちみたいなね」
軽い調子で、大ぶりの銃を掲げてみせるアルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)。
「しかし、その戦闘部隊が危険じゃないか?」
いぶかるように聞くウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)。
「危険な分、褒美がたくさんもらえればいいよ」
「やる気って言っても……」
アルフに困ったような目を向けるルカルカ。彼はにやりと笑った。
「終わったら、ルカルカちゃんのメアドとケータイ番号教えてくれるっていうのはどう?」
「ええっ?」
「いいんじゃないですか、それで引き受けてくださるなら」
ジュノ・シェンノート(じゅの・しぇんのーと)が、さして気にする様子もないように言う。
「俺たちがフォローするのは変わりませんから」
「その危険性を下げるのが俺たちの役割だ」
アルフの言葉をどれほど本気だと受け止めているのか、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は静かに告げる。ウォーレンとの長い打ち合わせも大詰めなのだ。
「無駄足を踏むのは体力が厳しい。第一段階は突入した舞台の報告を元に内部構造を探る」
「三鬼からはうまく情報を聞くことができなかったからね」
情報を統括する本部としても機能するつもりらしいウォーレンに、がっくりとルカルカが肩を落とす。結局、アルフのアタックには答えることになったらしい。
「……それじゃ、行きますか!」
「突出しすぎないようにね」
上機嫌のアルフに先んじて、突っ込んでいくエールヴァント。イレイザーの体内は生物の体を機械によって形作ったような独特の光景だ。血管のように複雑にうねる通路の中を駆ける。灯りがどこかにあるのか、微妙に薄暗い。
一団が塊になって、後に続いている。
「……!」
ぴくん! と、エールヴァントのシェパード耳が跳ね上がった。床を這う何かを感じたのだ。
「気をつけろ!」
タイミングを合わせて銃を構え、アルフが銃を構えた。
二人の発砲が、戦いの火蓋を切った。ババババ、と、銃の吐く火花が暗い通路を照らす。
「カルキノス!」
「もうやっている!」
剣を構えて突っ込んでいく夏侯 淵(かこう・えん)に、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が答える。
やっている、というのは、テレパシーによる連絡だ。交戦が始まったポイントを、ダリルやウォーレンが背後で把握しているはずだ。
「……逃がしませんよ」
ジュノが片手を振ると、ごうと炎がひらめく。赤く照らし出されるのは、細長い体にいくつもの節を持つヘビのアヴァターラらしきものだ。危うげな舌をちらちらとひらめかせ、威嚇のうなりを上げている。
「受けろ、我が刃!」
淵の剣がひらめく。二体のアヴァターラが、するどい剣に首を刎ねられ、動きを止めた。
「……交戦中だ。淵の敵ではないが……数が多いな」
シューシュー、威嚇の音が、四方から聞こえてきている。通路に反響して、その数は計り知れなかった。
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