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比丘尼ガールとスイートな狂気

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比丘尼ガールとスイートな狂気

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chapter.10 愛をあなたに 


 夜が明けた。
 Can閣寺の地下にはひとりの男が、謙二の幽閉されていた場所に四肢を縛られた状態で同じように閉じ込められていた。
 それは昨日自ら囮となり謙二たちを逃がしたために捕まってしまったラルクだった。
「あの腕力は……女のものじゃねえ……」
 さらに強化された柵の向こうで呟いたその声は、空しく暗がりに消えた。
 その暗がりから、足音が聞こえてくる。それも、ふたり分だ。
「テメェ……!」
 ラルクはその姿を認めると、怒りの声を上げた。
 そこにいたのは、苦愛、そして自分を捕まえた間座安だった。
「安心してください。じきあなたにも、愛の素晴らしさが分かるはずです」
「愛だ? ならまずその愛ってので、ここから出せよ」
 ラルクが言うと、間座安は静かに微笑んで苦愛へと顔の向きを変えた。
「ところで、最近どうもお寺が騒がしいですね。しっかりしてくださいね、苦愛さん」
「……はい、すみません」
 あなたがここに侍を監禁したりしなければ、昨日のようないざこざは起こらなかったのに。
 そう苦愛は心の中で呟いた。
 どうも、謙二に逃げられたことは間座安にとって腹立たしいことのようだ。苦愛はどうやって損なわれた機嫌を戻そうか頭の中で考える。
 しかし、そんなことは次の間座安の言動で一瞬にして吹き飛んだ。
「あなたがこんな調子では、あなたにも愛を教えねばならなくなってしまいます」
 そう告げた間座安の目は、小さな虫を引きちぎる子供のような、そんな真っすぐな残酷さに満ちていた。
 苦愛は、全身に嫌な汗が浮かぶのを感じた。同時に、自分の今いる場所がとても危ういものであるということも。
 ――このままじゃ、そのうちあたしは想像もつかないような酷い目に遭わされる。
 そんな確かな予感を抱いた苦愛は、その日の午後、こっそりとCan閣寺を出て空京の街へと走っていった。
「ラブ阿弥陀仏、なんてくだらないこと言ってる場合じゃない……っ!」

 そして何の因果だろうか。
 この時、苦愛と入れ違いで式部は、Can閣寺へ向かって歩を進めていたのだった。



担当マスターより

▼担当マスター

萩栄一

▼マスターコメント

萩栄一です。初めましての方もリピーターの方も、今回のシナリオに参加して頂きありがとうございました。
リアクションの公開が遅れてしまい申し訳ありません。

今回の称号は、MCLC合わせて2名のキャラに送らせて頂きました。
ちなみに称号の付与がなくても、アクションに対する意見などを個別コメントでお送りしているパターンもございます。

次回のシナリオガイド公開日はまだ未定です。
詳しく決まりましたらマスターページでお知らせします。
長文に付き合って頂きありがとうございました。また次回のシナリオでお会いできることを楽しみにしております。