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砂上楼閣 第二部 【後編】

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砂上楼閣 第二部 【後編】

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一行は館に突入し、「人形」と「薔薇の幽鬼」と交戦することとなった。
埃の積もった床を、無表情な「人形」が歩み寄ってくる。
薔薇学生、天魔衆、レオンハルトの指揮する教導団員はともに戦う。
(何がどーしてどーなったとか、政治的な判断は上の者に任せ、
 私は一兵卒としてこの作戦に加わろう)
月島 悠(つきしま・ゆう)は、光条兵器のガトリング砲を撃つ。
「薔薇の幽鬼が魂だけの存在であれば、物理攻撃は効き難い可能性が高い。
 翼、注意するんだ!」
麻上 翼(まがみ・つばさ)は、光術を薔薇の幽鬼に放つ。
「魂だけの存在、厄介ですね。
 化け物になった人達に掛ける情けなんて要らないですよね。
 さっさと排除して道を明けて頂きましょう」
敵を討つ事に一切の迷いはない。
敵は排除すべきものであり、敵とは自身に害をなすものであるからだ。
心霊現象は苦手な翼だが、ここは戦場であり、怖れている暇はない。
「魑魅魍魎やそれに近しい存在になり、
 自意識も定かではない状態で操られている者達に、
 人権を考慮する必要は無いだろう。
 情けを掛けるというのであればむしろ、速やかに倒して寝かしてやるべきだ」
戦場で育った悠も、トリガーを引く行為に迷いはない。
制帽を着用している悠は、普段、その姿でいる時同様、目的を遂行すべく冷静に行動する。
御茶ノ水 千代(おちゃのみず・ちよ)は、レオンハルトのフォローに周り、
人形を相手にする。
(鋼鉄の獅子と呼ばれ、
 教導団でも前線の指揮官候補生としては頭ひとつ抜けているレオンくん……。
 しかしながら戦い方は自ら前線に突出し、
 身の危険を顧みない危うい戦い方をしているとのこと。
 彼の背中を守るためのフォローを全力でしてみせます。
 私自身、対人の戦闘経験はなく、
 人を殺すことはできませんが、人形相手ならば容赦なく戦えますわ)
千代は、常に周りの状況を確認し、囲まれないように退路にも注意する。
(【鋼鉄の獅子】が思う存分戦い、結果を残せるように……
 今回の手柄を私が教導団本部にキッチリ報告し、
 あらぬ噂を払拭できるように最良の結果を出せるように!)
獅子小隊の所属ではないが、千代は、教導団所属の「若い子達を見守りたい」と考えている。
「未来のある若い彼らの英雄奇譚。最後までこの目で確かめさせていただきます!
 ……恋愛的意味も含めてね!」
穂先のない長槍の光条兵器を振るって、
琳 鳳明(りん・ほうめい)は、薔薇学生の露払いを行おうとする。
「ここは私達にまかせて先に行ってください!」
「援護に来てくれて、ありがとうな!」
久途 侘助(くず・わびすけ)は、氷術で足元を凍らせて人形を足止めする。
また、アルティマ・トゥーレで凍りつかせて活動を停止させようとしていた。
(黒崎に、俺の大事なものを問われた。
 「俺の薔薇学の存続はもちろん。仲間もいるし。ぶっちゃけ全部大事だけどな」と答えた。
 そうしたら、
 「もしもタシガンの地球人排斥運動が高まれば、
  地球人のパートナーを持つ吸血鬼は複雑な立場に置かれる事になるだろう。
  君の言う、『ぶっちゃけ全部大事』な物と、遺恨を捨てて僕達に協力してくれた人物、
  守り通してくれるかい?」という指示。
 指示とは違うかもしれないが。
 俺は、タシガンやパラミタの民、薔薇学を守りたい。
 傲慢かもしれないが、全てを守りたい。
 黒崎だって守りたい。イエニチェリでも、そうでなくても黒崎は黒崎だ。
 この言葉に、俺は強く頷こう。
 俺のできることを、精一杯やろう)
「薔薇の幽鬼……か。
 お前たちの悲しみや怒りを解放することはできない。
 ……だが、今を生きる者の邪魔はさせはしねぇ!」
侘助のパートナーの香住 火藍(かすみ・からん)は、ディフェンスシフトで、
味方への攻撃を受け流そうとする。
「すみませんが、負けるわけにはいかないんです」
(俺も薔薇学のために働きたいのは同じです。
 何ができるかわかりませんが……精一杯のことをやらせていただきます)
人形や薔薇の幽鬼に同情してはいるものの、火藍も迷うことはない。
「殺さないようにと思ってたが、
 すでに死んでるのか……。
 救うことができなくて、ごめんな……」
侘助はつぶやく。
「ここはオレと又吉で引き受けた。旦那達は先に行ってくれ」
信長と天魔衆メンバーに言い、国頭 武尊(くにがみ・たける)は、
パートナーの猫井 又吉(ねこい・またきち)とともに、
異なる属性の「カーマイン」二丁拳銃で薔薇の幽鬼と戦う。
シャープシューターとスナイプで、確実に一体ずつ仕留めるつもりであった。
「ゴーストハンターの称号は伊達じゃねーんだよ。
 一体残らず仕留めてやるぜ」
侘助の死角から近づいていた薔薇の幽鬼を撃ち、消滅させると、武尊は言う。
「別に助けた訳じゃないぞ、
 負傷者が出れば、その分の皺寄せがこっちに来る。
 それだけの事だ……勘違いするな」
【青薔薇同盟】に属する事で、一時的に他勢力との共闘を行うものの、
思想信条が異なる以上、武尊に馴れ合うつもりはない。
「ああ、わかってるさ。幽鬼の相手は任せた!」
(お願いだ、俺達に未来を託してくれ)
人形に氷術を放ち、侘助は願った。
「木偶人形どもめ、俺が焼身浄化してやるぜー!」
又吉は火炎放射器を振り回す。
善人気取りするつもりも、人形を哀れんでやるつもりも全くないので、
又吉は何のためらいもなく、氷術で動けなくなった人形を焼く。
たとえ、その姿が、女子どもであろうとも、けして躊躇しない。
「舐めんじゃねーぞ。この野郎!!
 俺は『鬼魔狗野獣会』総長、猫井又吉様よ!」
文化祭の陽動作戦の時とは違う、剥き出しの凶暴さを持って、又吉は吼える。

同じく【青薔薇同盟】に属した吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)は、
物理攻撃が有効な人形を集中して相手にする。
空京の戦いで、ゾンビに的を絞ったのと同じ、
特定の敵だけを狙って効率を高める戦い方である。
「おるああああああ!!」
血煙爪で人形の手足を切断する。
竜司は、謙信に、
アーダルヴェルトに粛清された者であった人形や幽鬼の顔を見せないようにしたかったが、
この状況ではそれは難しかった。
せめて、少しでも早く終わらせてやりたいと願い、竜司は戦う。
アイン・ペンブローク(あいん・ぺんぶろーく)は、光学迷彩で姿を隠しながら、
竜司や謙信を狙う敵を狙撃する。
竜司が道を切り開き、謙信をアーダルヴェルトの元に送り届けるのがアインの役目である。
(領主を本当に信用していいかどうか確かめるためにも、
領主の血縁者との対面を果たさせるべきでしょうな)
甥であるラフィタ・ルーナ・リューユ(らふぃた・るーなりゅーゆ)が、
アーダルヴェルトに接見したことは、その直後にアーダルヴェルトがさらわれたために、
タシガンで噂として広まっていた。
ラフィタの属する天魔衆を先に行かせることは有益だと、アインは考えている。
黒崎 天音(くろさき・あまね)は、竜司の背中を守るように戦う。
パートナーのブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)は、
ファイアストームで人形と薔薇の幽鬼を焼き払う。
(話し合いに参加せず、自らの意志も示さぬ相手と組む事になったのは厄介だが、
 警戒ばかりしていても始まらん。
 作戦を成功させるためにも、天音を指揮に集中させねばな)
ブルーズは、不測の事態が発生すれば、
身を挺して天音を守るつもりである。
レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)はクロスファイアで薔薇の幽鬼を攻撃し、
ミア・マハ(みあ・まは)は火術を食らわせる。
「もう、お休みの時間なんだよ」
「イケメンに攻撃するのは心が痛むがのぉ」
(やはり器を壊し魂を解放するのであれば、炎が相応しいじゃろうて)
レキとミアは、人形と幽鬼の魂の解放を願う。
北条 御影(ほうじょう・みかげ)は、チェインスマイトで人形の身体を破壊しながら、
同様のことを考える。
(あの領主にも色々思う所が無いではないが、タシガンにとっては必要な存在だろうからな。
 それにしても……「人形」に「薔薇の幽鬼」か。
 くだらねぇ実験の材料にした挙句、身体や魂まで蹂躙するなんて、
 酷でぇ事しやがる。
 ジャルディニエの野郎に従わせられるのなんざさぞかし屈辱だろうから、
 さっさと開放してやらねーとな……)
豊臣 秀吉(とよとみ・ひでよし)は、爆炎波で数の少なくなった人形を吹き飛ばす。
「御影殿! 必ずや手柄を立て、イエニチェリにお引き立ていただくのですじゃ!」
高月 芳樹(たかつき・よしき)は、
パートナーのアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)
伯道上人著 『金烏玉兎集』(はくどうしょうにんちょ・きんうぎょくとしゅう)
マリル・システルース(まりる・しすてるーす)とともに、
物理攻撃に強そうな薔薇の幽鬼に対応する。
「ごめんな……。
 次に生まれ変わるときには幸せになってくれ!」
芳樹は、轟雷閃を放ち、消滅していく幽鬼の苦悶の表情を見ながら、願う。
「よし、数は着実に減らせているようだな。
 潜入組は全員、先に進めただろうか」
芳樹は、冷静に周囲を観察することも忘れない。
ヴォルフガング・モーツァルト(う゛ぉるふがんぐ・もーつぁると)は、後方で支援を行っていたが、
敵の動きを報告する。
「この一帯の敵は片付きつつあるようです。
 さあ、行ってください。
 ……無事帰還の暁にはご家族にもお会いできますよう」
「さあ、行け、行って来い、謙信!」
竜司も叫ぶ。
「……無事でいるんだぞ」
モーツァルトの言葉に、謙信は何か感じたようだったが、竜司に視線を送ると走り出す。
(あの寂しそうなユリノの姿……。
 何とかマリノ……謙信と再会させてやりたいものです)
ユリノに密かに会っていたモーツァルトは思う。
「よし、体勢を立て直そう。
 長時間の戦闘が続くはずだから、
 負傷者はなるべく早めの治療を」
天音は、指示を出しつつ、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)からのメールで、
薔薇学生の救出隊が無事に進んでいることを確認する。
「おまえもどこか怪我をしていないか。
 指揮官が動けなくなっては士気にかかわるぞ」
「大丈夫。僕よりも、他の薔薇学生のことを気にしてあげて。
 協力してくれている他校生や青薔薇同盟の人たちもね。
 君はイエニチェリのパートナーなんだから」
心配するブルーズに、天音はいつもどおりの微笑で返す。