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リアクション
戦闘とバリケード作成が進められる中、グレイスを中心に、宝物庫の調査も進められていた。
「奥の部屋に、決定打があればいいんだが……」
バリケード作成を手伝いながら、ヨヤ・エレイソン(よや・えれいそん)が言い、探索の進み具合を見る。
「天井裏にはないようですね」
「んー、探せば絶対あると思うんだけどなぁ……」
自校に残っている葛葉 翔(くずのは・しょう)のパートナーである、アリアとイーディ・エタニティ(いーでぃ・えたにてぃ)は、室内の探索を進めていた。
アリアが天井の辺りを飛行して、調べてみたところ、天井裏への入り口はあったのだが特に何もなかった。叩いた音からも、高さからしても、それより上はないようだった。
イーディは壁を触ったり、叩いたり捜索している。
「今のところ音が違う場所とかないな……」
ふうと息を付きながら、作業を続けていく。
「何とかして先に進む手段を見つけないと、ここで全滅しちゃうよ!」
カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)は、焦りながらグレイスを手伝って探索を続けていた。
「アリアさんが、天井と上部、イーディさんが右回りで壁を担当。ボク自身はごめん、ちょっと煩いけど床をやらせてもらうよ!」
カレンは床を蹴ったり、ジャンプをして状態を確かめる。
「おっ、疲れると思うけど、そのまま続けてくれ」
グレイスが左回りで壁を調べながら、カレンにそう言った。
「うん!」
言って床を蹴りながら、カレンは光術をも室内で使い、魔法的な反応も試していく。
荒っぽいがこれはかなり有効な手段だった。
根気よく室内を蹴って、跳ねて、そしてギシッと音を立てた床に、光術を投げつけていったところ、通常より効果が弱まった場所があった。
「魔法的な反応発見!?」
「床を剥がしてみよう」
探索組のメンバーがカレンの下に集まって、グレイスの指揮の下、武器を手に床を剥がしだす。
「剥がせるのは表面だけのようですね」
アリアが、武器をつかってベリベリと表面の木の板を剥がしていく。
しかし、その下から現れた石の床の表面に魔法陣のような模様が描かれていた。
「古代の魔法陣だね」
グレイスはノートを取り出して、模様からタイプを割り出す。
「ふむ……。カレン君ちょっとこの中央に魔法を浴びせてみて」
「うん」
言われたとおり、カレンは光術を魔法陣の中央に浴びせる。
光は吸収されるように、消えていった。
「ここが入り口になっているようだね、下りてみたいが……」
「はい、ワタシが支えます」
ヴァルキリーのアリアがグレイスの背を支える。この下が空洞であっても、グレイスが落下しないように。
「ありがとう」
礼を言って、グレイスは魔法陣の中央に手を当てて、古の解術を口にした。
途端、床の中にグレイスの体が落ちていく。彼を抱きしめながらアリアも続き、空飛ぶ箒を持ってカレンも下りていく。
「大丈夫、なんとかなるじゃん!」
イーディは顔だけ床の中に入れた後、一端顔を出して、飛び下りた。
「……俺も行こう」
皆が消える前に、ヨヤも駆け寄って地下へと飛び下りた。
地下の床に降り立って、魔法の使用は控えて各々ライトで室内を照らしていく。
部屋はそんなには広くなかった。
何もない部屋で、奥の祭壇のような場所に何かが置かれていた。
「慎重に行こう」
ヨヤはそう言って、グレイスの隣に立つ。
護衛目的でもあるが、ヨヤはまだ彼への警戒も解いてはいなかった。
女王器を手に入れた途端、逃亡されてしまうようなことは防がなければならない。
皆で周囲に注意を払いながら、皆で一緒にゆっくりと祭壇のような場所に歩み寄り――その上に置かれている物を覗き込んだ。
「とってみてもいいかな?」
イーディが言い、グレイスが「お願いします」と答えた。
それは、小さな箱だった。
持ち上げてみるが、何も起きはしない。
グレイスが手を伸ばして、箱を開けてみる。
中には、水晶のような透明の球がはめられたロッドが入っている。
「魔法を増幅させる効果のあるロッドのようだね。女王器なら他にも特殊効果があるかもしれないけれど」
グレイスがそう言い、とりあえず箱の蓋を閉めた。
「他には何もないみたいだし、地上に戻……」
言いかけたカレンは、壁になんだか違和感を感じてライトの光を当てた。
「魔法陣があるよ……。隣の部屋にもいけるってことかな?」
「宮廷の部屋か地下道に出られるのかもね。一端戻って、検討しよう」
グレイスがそう言い、今度はヨヤが彼を運んで宝物庫へと戻るのだった。
「皆、そろそろ中へ!」
鳳明が、戦闘に出ている者達に声をかける。
棚や箱を積み重ねたバリケードがほぼ完成しており、あと扉の方へ押すだけだった。
「イルマ、下がって下さい。景戒は魔法を」
「了解ッ」
ステラが指示を出し、扉の前に出ていたイルマがバスタードソードを一閃した後、扉の中へと飛び込んだ。
「入り口の敵を倒しておくのじゃ!」
「分かりました」
言って、景戒はステラと共に、雷術、氷術を迫り来る敵に放って足止めした後、扉の中へ入る。
「それじゃ塞ぐぞ!」
ウィルネストが積んだ棚や荷物を押して扉を塞いでいく。
ステラ達も手伝い、隙間のないようしっかりと塞ぐ。
「それじゃ、皆集まって!」
鳳明が作業を終えたばかりの皆に声をかけて、道具を集めている場所に集まっていく。
集められているのは、主に。
・絵画
・魔道書
・特に効果のなさそうな水晶球
・食料
・一般的な刀剣類、武具
・魔法的な鍵のかかった箱
などであった。
地下室で手に入れた杖も、そこに並べられた。
「この女王器らしき杖は、本部に届けた方がいいと思うんだ。地上に運んでもらうか、使い方のわかる人に来てもらわないとね」
グレイスがそう言い、今後のことについて皆で考え出す。
入り口はバリケードを築いて塞いであることから、しばらくの間ここは大丈夫そうだ。
地下からは別の部屋へ移動が出来そうだ。行く場合はグレイスも同行した方がいいだろう。
鳳明は全体へ通信をして、神楽崎優子に指示を仰いでみる。
しばらくて、優子からの言葉が返ってきた。
『突破が出来そうなら、最低限、女王器と思われる物と、箱…確保し戻って来てくれ。現在北側の戦況…思わしくない。残りの者はそのままそちら…加勢に行ってもらえる者がいたら助かる。地下の魔法陣については直接見てはいない私より、グレイス氏の判断に任せた方がいいだろう。何か得るものがありそうなら、そちらの探索を優先してもらっても構わない』
そんな返答だった。
とりあえず、優子が無事であったことに 鳳明はほっと息をついた。
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