校長室
地球に帰らせていただきますっ!
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久しぶりにゃっ 実家に帰ったのは正月が最後だから、8ヶ月ぶりになる。 「親父は……やっぱ帰ってないか」 実家にあがって部屋を回った後、葉月 ショウ(はづき・しょう)はリビングのソファに腰を下ろした。 ショウは父、母、妹の4人家族なのだけれど、今は実家には誰もいない。 父親は契約者で、7年前にパラミタに行ったきり、一度も実家に帰ってきていない。時々パラミタで手に入れたものを送ってくるから、無事ではいるのだろう。 母親は家庭の事情で別居中のため、どうしているか不明だ。決して仲が悪いわけではないのだけれど、色々問題があるらしい、としかショウには分からない。 (けど、おふくろにはあいつがいるからいいよな) ろくりんピックで再会した妹は、天御柱学院の生徒になっていた。その妹と母が一緒に暮らしているのだから、心配はいらないだろう。 そんなことを考えているショウの膝を、葉月 フェル(はづき・ふぇる)がつんつんと突いた。 「にゃー」 「ん、何だ? ああ、土産か」 地球にいる間、フェルは猫化を通している。といっても、獣化しても人間時と身体の大きさはあまり変わらないから、おそろしく巨大な黒猫だ。 猫の手では荷物を取り出すのは困難だろうから、ショウはフェルの代わりに土産を出してやった。 「ほら、新鮮なうちに持って行ってやれよ」 「にゃ〜」 魚の詰まった袋を銜えるとフェルは友達猫のディアとセレスを捜しに出て行った。 ディアもセレスも近所の野良猫だ。といってもその名前もショウがとりあえずつけたものだし、餌もやっていたからほとんど飼い猫みたいなものだ。 『デイア〜、セレス〜、どこかにゃ』 フェルが鳴いて呼ぶと、真っ先にセレスがやってくる。 『お姉ちゃんが帰ってきたー。寂しかったよー』 白猫のセレスはすりすりとフェルに擦り寄った。 『おっ、帰ってきたのかフェル。ってか、セレス早っ!』 やや遅れてやってきた灰色猫がディア。やんちゃな牡猫だ。 『お土産いっぱい持ってきたにゃ。クモサンマにクモワカサギ、クモガツオ! おいしそうだにゃ〜』 フェルは口で器用に袋を開いてみせた。 『お姉ちゃんのオススメはどれ?』 『オススメは全部にゃ〜』 セレスが選んでいるうちに、ディアはもう、このでかいの貰った、とばかりにクモガツオにかぶりついている。 お姉ちゃんとお揃いがいいというセレスと一緒にクモサンマを食べながら、フェルはふと気づいた。そういえば、自分がパラミタ人だということを、ディアとセレスには言っていない。やっぱり話すべきだろうと思い立ち、フェルは2匹にごめんと頭を下げた。 『実はフェル、パラミタ人なんだ』 『ふーん。別に気にしなくていいんじゃねーの』 ディアは何でもないように鳴いた。セレスはフェルに身を摺り寄せる。 『パラミタ人でもお姉ちゃんはお姉ちゃんだよ。だからそんなに悲しい顔しないで』 『そういうこと。それより俺もパラミタに連れてってくれねぇか?』 『私も。お姉ちゃん、私も連れてって』 2匹にねだられて、フェルは唸った。 迷い迷い2匹を連れていったのだけれど、ショウの返事はあっさりだった。 「別に連れて行ってもいいけど、フェルがちゃんと守るんだぞ」 「にゃ〜!」 ころころとまぶれる3匹の様子を眺め、ますます向こうでの暮らしは賑やかになりそうだと、ショウは思うのだった。