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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

リアクション

「雷雲とかに突っ込んで、感電とかしないでしょうねー」
 ランツェレット・ハンマーシュミットが、念のために対電フィールドを張り巡らす。
「やれやれ、みんな軟弱ですぞ。こういうときこそ、筋肉で突風など跳ね返すのです」
 ルイ・フリードが、流されていく月詠司たちなどを捕まえて体勢を立てなおさせてやりながら言った。
「あ、ありがとう。ふう」
 なんとか体勢を立てなおした月詠司が、ルイ・フリードにお礼を言った。
「まったく、この風の中でカメラなんて取り出すから流されるのじゃ」
 追いついたウォーデン・オーディルーロキが、たしなめるように月詠司に言った。
「大丈夫、殺気は感じられないから」
「そのていたらくで、説得力などないわ!」
 のほほんとした月詠司に、シリアスは千年早いとウォーデン・オーディルーロキが叫んだ。
「確かに、殺気看破では何も感じられないわね。ズィーベン、そっちはどう?」
「ディテクトエビルにも反応はないんだよね」
 ナナ・ノルデン(なな・のるでん)に訊ねられて、ズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)が答えた。
「とは言っても、相手が人間、あるいは生き物でなければ、この二つは役にたたないですものねえ。油断せず行きましょう」(V)
 ちょっと不安そうにナナ・ノルデンが言った。
「そうだね。メカ小ババ様はメカだから、引っかからないだろうね」
 スキルにだけ頼らないで警戒しないとと、風に揉まれながらもズィーベン・ズューデンが周囲に気を配った。
「睡蓮、生きているであろうな……?」
 エクス・シュペルティアが声をかけたが返事がない。この状況ではよく見えないが、ロープで小型飛行艇に引きずられるようにしてついてきているはずだ。ロープが切れない限りは、たとえ気絶していても大丈夫だろう。
「おい、返事がないのであるが」
 ちょっと心配になってエクス・シュペルティアが紫月唯斗に言った。
「ディテクトエビルでもかけてみてください」
「なんで、ディテクトエビル……」
 怪訝な顔で、エクス・シュペルティアが小型飛空艇の後ろ、渦巻く雲のせいで何も見えない真っ白な空間へむかって感覚をのばしてみた。
「うっ、ものすごい恨み辛みの反応が……」
 自分たちにむけられている敵意に、さすがにエクス・シュペルティアが怯んだ。
「なら、生きていますね」
「いいんですか、それで?」
 籠手とブーツの形で紫月唯斗と一体となっていたプラチナム・アイゼンシルトが、彼に問い返した。
 紫月睡蓮本人は、小型飛空艇にロープで激流の中を引きずり回されるという状態に息も絶え絶えだった。
「しかし、こう視界が悪いと、安易に浮上して睡蓮を助けるわけにも……」
 こんな所でゴチメイたちとはぐれてしまったら、無事に陸地へ戻れるかも怪しい。
 それは、今現在この気流に巻き込まれている者たちの大多数の気持ちであった。
 そのとき、分厚い雲を通して、鮮やかな青と黄色の輝きが彼らの目に入ってきた。星拳エレメント・ブレーカーと星拳ジュエル・ブレーカーの光条の輝きだった。
「よし、あれを目指して体勢を立てなおすぞ」
 力強い目印に、激しく渦巻く気流を跳ね返して、学生たちが力強さを取り戻す。
「見えたぞ。彷徨える島に追いついたようだ」
 ふいに、ジャワ・ディンブラが言った。
「近いのか?」
「うむ」
 ココ・カンパーニュの問いに、ジャワ・ディンブラが答えた。
「よし、気流を抜けよう。みんな、浮上だよ!!」
 ココ・カンパーニュが叫んだ。みんなを先導するようにゆっくりと上昇して気流を抜ける。
 ボンと雲を吹き飛ばして、ジャワ・ディンブラが雲海の上に飛び出た。やや前方に、先行していた国頭武尊とローザマリア・クライツァールたちも飛び出してくる。間をおいて、後続の者たちも次々に近くに飛び出してきた。
 激しい気流の影響だろうか、雲海の上に出ても、風は相当に強かった。
「やーん、髪の毛はぼさぼさだし、服がしっとりと濡れてて気持ち悪い……」
 シースルーのメイド服が肌にべったりとくっついてしまったリン・ダージが、これじゃ濡れ鼠だわと情けない声をあげた。
「おーい、見えたぞ。島だ!」
 前方で、国頭武尊が叫んでいる。
「アヴァロンを彷彿とさせるの」
 半ば雲海につつまれた島を見て、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーが言う。
 七不思議の彷徨える島が、その姿をようやっと一同の前に現し始めていた。雲海の雲に半ば埋もれ、全体も薄く雲につつまれたその姿は、まさに霧につつまれた島といったところだ。しかも、まだ全体像が見えないというのに、予想よりもかなり大きい。まだ半分も見えていないと仮定しても、全周はゆうに四キロメートルはあるだろう。
「I’ve got a bad feeling about this――厭な予感がするわ。なんとなく、だけれども」
 緊張を解かずに、ローザマリア・クライツァールが注意した。
「いったん集まれー!」
 ココ・カンパーニュが、いったん全員に集合を呼びかけた。ここでバラバラになるのは、あまり得策ではない。
「ああ、私もよく見たいですわ。明日香様、装着を解除してくださいませ」
 鎧形態だったエイム・ブラッドベリーが、駄々をこねて元の姿に戻った。
「いよいよだねぇ」
「そうでございますね」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)が、超感覚や禁猟区を使って、四方に注意をむけた。もし、島に海賊たちが巣くっていたりしたら、襲ってくるとすればこのタイミングだろう。すぐ後ろでは、クナイ・アヤシ(くない・あやし)が臨戦態勢で待機する。
「殺気は、近くには感じられないか」
 樹月刀真も、索敵を怠らずに言った。
「えっ、刀真さん!?」
 樹月刀真に渡しておいた銀鎖に危険の反応を感じて、封印の巫女白花が叫んだ。
 もちろん、ほとんど同時にそれを感じた樹月刀真が、小型飛空艇を横に倒して素早く回避運動をとった。手首に巻きつけていた銀の飾り鎖が鈍く青い輝きを放っている。
 キラリと、それとは別の金属の輝きが、さっきまで樹月刀真がいた空間を一瞬走り抜けた。
「なになに? 何かありました?」
 幻想的な彷徨える島の風景に心奪われていたランツェレット・ハンマーシュミットが、あわてて周囲を見回した。
 そんなランツェレット・ハンマーシュミットの持っていたデジカメに何かが突き刺さった。激しい閃光とともに、持っていたデジカメが砕け散る。
「あーか!」(V)
 さすがにランツェレット・ハンマーシュミットが怯んだが、対電フィールドのおかげで本人は無傷であった。
「ゴパ……」
 雲海の中から、ティザーガンを放ったばかりのメカ小ババ様がゆっくりと浮上してくる。それも、一体ではなかった。様々な小動物の着ぐるみを着たメカ小ババ様が魔導球に乗って、雲海の中から雲霞のごとくその姿を現したのだった。
「わあ、可愛い。これなあに?」
「あっ、エイムちゃん!」
 神代明日香が止めるのも間にあわず、エイム・ブラッドベリーがすぐそばに現れたメカ小ババ様に手を出して、かぷっと噛まれた。
「しびびびび……」
 とたんに、電撃を食らって、痺れたエイム・ブラッドベリーが小型飛空艇から雲海へと落ちていく。
「飛べ飛べ、ぷわぷわ、ぷっかぷか〜↑↑」
 あわてて、神代明日香がエイム・ブラッドベリーを宙に浮かべた。それをいい的と見たのか、数体のメカ小ババ様たちが、ティザーガンの狙いをエイム・ブラッドベリーに定める。
「来て、私の力に。エイム・ブラッドベリー!!」
 間一髪、神代明日香が叫ぶ。光につつまれて五つのパーツに変身したエイム・ブラッドベリーが、吸い寄せられるようにして神代明日香り身体にくっついた。入れ替わるようにして、誰もいなくなった空間をティザーガンのプローブがいくつもむなしく通りすぎる。
「やれやれ、またお前たちか。よほど縁があるらしい」
 ディッシュに乗って雲海から姿を現したシニストラ・ラウルスが、ココ・カンパーニュたちを見据えて言った。
「それはこっちの台詞だ!」
 ココ・カンパーニュが言い返す。
「はーい、お嬢ちゃん、お久しぶりー。あっ、この間会ったっけ。その新しい服、可愛いわよ」
 デクステラ・サリクスが、呑気にアルディミアク・ミトゥナに手を振った。
「二人とも、こんな所で何をしているんですか!」
 驚きを抑えつつ、アルディミアク・ミトゥナが問いただした。
「バイトだ、バイト。とにかく、あの島には人を近づけるなっていう依頼でね」
 知るかと、シニストラ・ラウルスが肩をすくめた。
「へえ、それはますますあそこへ行きたくなった。いったい何が、あるんだい」
 ココ・カンパーニュが、好奇心に目を輝かせる。
「さあ、いろいろ資材とか運ばされたから、別荘でも作ってたんじゃないのか」
 彼らが、謎の依頼主に頼まれて、浮遊島に大量の地球やその他からの物資を運んでいたのは事実だ。
「知りたけりゃ、こいつらを突破してから自分で調べるんだな。行け、ちっこいの!」
 シニストラ・ラウルスが命じると、メカ小ババ様が一斉に襲いかかってきた。
「お前たちは戦わないのか?」
 ココ・カンパーニュが、シニストラ・ラウルスたちに問いただした。
「うーんと、今回はめんどくさい」
「依頼主は、このちっこいので充分だと思っているんだろう。バイトだからな、命を張ってまでする仕事じゃない。お前たちが突破したならしたで、この程度の戦力しか出さなかった依頼主が悪いってわけだ」
「うんうん」
 デクステラ・サリクスが、シニストラ・ラウルスにうなずいた。
「なら、進ませてもらうよ! 来い、エレメント・ブレーカー!」
 ココ・カンパーニュは、星拳エレメント・ブレーカーを呼び出すと、群がってきたメカ小ババ様を粉砕した。
「来臨せよ、ジュエル・ブレーカー!」
 アルディミアク・ミトゥナも、星拳を呼び出してココ・カンパーニュの反対側を守って戦いだす。
「楽しそうだね、お嬢ちゃんたち♪」
 嬉しいのだか寂しいのだか分からないちょっと複雑な思いで、ディッシュの上に胡座をかいて乗ったデクステラ・サリクスがつぶやいた。
 そのデクステラ・サリクスを狙った刀を、シニストラ・ラウルスがナイフで弾き返す。
「高みの見物なんて許さないんだもん」
 間合いをとりなおして、久世沙幸が叫んだ。彼女は以前、この二人にヴァイシャリーの海賊船で捕虜になるという屈辱的な目に遭っている。
「面白い、少しは遊ぶとするか」
「ええ、シニストラ」
 呼びかけられて、デクステラ・サリクスがニッと目を細めて答えた。次の瞬間、弾けるようにして二人の乗ったディッシュが左右に分かれる。
「後ろじゃ!」
 久世沙幸が着ているウィンディ・ウィンディが叫んだ。
「遅い!」
 シニストラ・ラウルスが、ブラインドナイブスを放とうとする。
 一瞬どちらを追うかと迷ったのが、久世沙幸の命取りだった。
「俺は早いぜ!」
 叫ぶなり、パワードスーツに全身を固めた雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)の小型飛空艇が、二人の間に割り込んだ。
「きゃああぁぁぁ……」
 みごとにシニストラ・ラウルスの攻撃を受けとめてみせるものの、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)と『空中庭園』ソラを乗せたまま、小型飛空艇ごと雪国ベアは気流の中へと吹っ飛ばされていった。
「沙幸さん、下がって」
 藍玉美海の氷術を避けて、デクステラ・サリクスがいったん久世沙幸のそばから下がった。
「ははははは、闇に潜む自称正義、クロセル・ラインツァート、お邪魔します! さあ、行きなさい、黒髭危機一髪!」
「おうよ!」
 風にイルミンスール魔法学校の制服をバタバタとはためかせて、クロセル・ラインツァートが叫ぶ。それに答えて、黒髭危機一髪がデクステラ・サリクスに突っ込んでいった。
「あんたが、自分で戦えってのよ」
 見かねたシャーミアン・ロウが、クロセル・ラインツァートに跳び蹴りを食らわす。
「うわっと」
 バランスを崩したクロセル・ラインツァートは、あっと言う間に気流に飲み込まれて流されていった。
「悪いが、元商売敵は潰させてもらうぜ」
 小型飛空艇にくくりつけた樽から光条兵器のナイフを引き抜くと、黒髭危機一髪がデクステラ・サリクスに襲いかかっていった。
「また、変なのが来たわねえ」
 ひらりと、デクステラ・サリクスが黒髭危機一髪を避けて大きく移動した。
「なんで、こっちに来るのよ。あっちいけー」
 いきなり自分の方にデクステラ・サリクスが突進してきて、リン・ダージがあわてて後退した。
「リンちゃんをいじめるたっゆんは許さないんだもん!」
 代わりに前に出た小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、ハリセンで応戦した。
「なんで、こいつらって胸を目の仇にするのが多いのかしらねえ」
 プルンとわざとらしく豊かな胸を震わせて、デクステラ・サリクスは小鳥遊美羽の横をすり抜けていった。