リアクション
「フレー、フレー、マスター! ほれ、がんばれ、がんばれ、ますぅきゃぁ!!」 なんだか、突如ひっくり返った奇声が展示室の中から響いてくる。 「いっきぇ〜! ぶっつかましぇ〜ぃ!!」 声と共に、太鼓やら笛の音やら、まあ、それは騒がしい。 「おう、なんだかにぎやかだな」 「見に行ってみないか、ラルク。何やら、楽しそうだぜ」 秘伝『闘神の書』に誘われて、ラルク・クローディスは声の聞こえてくる展示室の方へとむかってみた。 「いくわよー!!」 体操服姿の水橋 エリス(みずばし・えりす)が、いきなりドッヂボールをラルク・クローディスたちに投げつけてきた。 「な、なんだ!?」 とっさに、ラルク・クローディスがボールを受けとめる。 「そんな、私のボールを受けとめるなんて……」 唖然としながらも、水橋エリスが展示室の中へと逃げて行く。 「いきなり何しやがる!」 ラルク・クローディスが、秘伝『闘神の書』と共にその後を追いかけていった。 「お姉ちゃん頑張れ〜!!」 「うらぁ、マスタァァァァァ、走って逃げろぉぉぉぉぉぉ!!」 ニーナ・フェアリーテイルズ(にーな・ふぇありーているず)とリッシュ・アーク(りっしゅ・あーく)が叫ぶ。 「何だここは……」 展示室に足を踏み込んだラルク・クローディスは、周囲を見回して唖然とした。ここは、どう見ても空京スタジアムのドッヂボールコートだ。 「いてまえぇぇぇ。むさい親父なんて倒せえぇぇぇ!!」 「ぷちころしちゃえ〜」 観客席でメガホンを口に当てたリッシュ・アークが声を張りあげる。その隣で、体育服にブルマのニーナ・フェアリーテイルズがピョンピョンと跳び回って応援していた。 「二人共、もう少しちゃんと応援を……」 夏候惇・元譲(かこうとん・げんじょう)が、軽く溜め息をつきつつも、競技の行方を見つめる。 「そーれー」 応援を受けて、水橋エリスが、次々とボールをラルク・クローディスと秘伝『闘神の書』に投げつけていった。 「いいかげんにしやがれ!」 ラルク・クローディスたちが、次々に飛んでくるボールを拳で弾き返していく。もちろん、ドッヂボールのルール的にはこれはアウトだ。 「わーあ、面白いことになってるよね」 展示室の中をのぞき込みながら、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が言った。 中では、ラルク・クローディスと水橋エリスがドッヂボールもどきでえんえんと戦っている。 「どうしてこうなった!?」 同じようにして中をのぞき込んでいた本物の水橋エリスが、唖然としたまま言った。 ろくりんピックのときの絵が展示されていて、自分たちの描かれた『【ろくりんピック東】我ら水橋応援団!!』もあるというので見に来たのだが、いきなり再現というか競技をやっているではないか。それでなくても、あちこちを鹿が歩いているし、暴走猫車とか橇とかをかいくぐってやっとここに辿り着いたのだ。 「頑張っておられますな、主」 「うんうん。さすがはマスターだぜ」 「いや、あれは私じゃないから……、いえ、私なの!?」 場違いな感じでリッシュ・アークと夏候惇・元譲に褒められて、水橋エリスがよけい混乱した。 「あたしたちだって、応援頑張ってるよね」 自分たちの姿を見て、ニーナ・フェアリーテイルズが言った。彼らの後ろには、それぞれのポートレートも件の絵と共に飾られている。 「とりあえず、見てましょうか……」 体操着にブルマというのが頑張っていると言えるのだろうかとふと考えながら、水橋エリスは自分の戦いを眺め続けることに決めた。 |
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