リアクション
19.十二星華のイコン 「こんな所にあっただなんて……」 一枚のフレスコ画を見つめて、アルディミアク・ミトゥナがつぶやくように言った。 かつて、ココ・カンパーニュがイルミンスール魔法学校の倉庫で見つけたイコンだ。もちろん、サロゲート・エイコーンのことではなく、絵としてのイコンである。 ココ・カンパーニュたちが目撃して以来行方不明だとは聞いていたが、修復されてこんな所に飾られていたとは。 絵の上方にはアムリアナ・シュヴァーラの姿があって、その足許から十二の赤い光が下に集まって星剣を掲げている十二星華たちに降り注いでいる。 ティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)が星剣ビックディッパーを掲げ、パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)が星銃パワーランチャー、セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)が星双剣グレートキャッツ、ホイップ・ノーンが星杖シナモンスティック、エメネア・ゴアドー(えめねあ・ごあどー)が星槍サザンクロス、テティス・レジャが星槍コーラルリーフ、アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)が星弓ヴィータ、ザクロ・ヴァルゴ(ざくろ・う゛ぁるご)が星扇澪標、藤野 赫夜(ふじの・かぐや)が星双頭剣ディエ・スパデ、{SNL9998945#リフル・シルヴェリア}が星鎌ディッグルビー、ジャレイラ・シェルタン(じゃれいら・しぇるたん)が星剣フランベルジュ、そして、アルディミアク・ミトゥナが双星拳スター・ブレーカーを掲げ持っていた。 あらためて修復された絵に描かれている姿は、現在の彼女たちとは違っている者も多い。元々の絵が抽象的だということがあるにしても、パートナーによって変化する剣の花嫁である十二星華の宿命なのかもしれない。 アルディミアク・ミトゥナにしても、当時と比べて現在はかなり幼くなってしまっている。元々はアムリアナ・シュヴァーラに似た顔立ちだ。もっとも、五千年前の女王の顔かたちと比べてではあるが。 今のアルディミアク・ミトゥナは、ココ・カンパーニュと瓜二つとなって、ほとんど最初とは別人の姿となっている。 それが意味することを、アルディミアク・ミトゥナはもっとも重く受けとめていた。 当時のことに未練はない。いや、ただ一つ心残りがあるとすれば……。 「シェリル、ここにいたんだ」 ココ・カンパーニュが、アルディミアク・ミトゥナを見つけて駆け寄ってきた。彼女にとって、アルディミアク・ミトゥナはシェリル・アルカヤだ。十二星華ではなく、自分の妹である。 「誰かと一緒にいたのかい?」 「いいえ?」 ココ・カンパーニュに訊ねられて、アルディミアク・ミトゥナが首を振った。この展示室には誰もいなかったはずだが、ココ・カンパーニュはアルディミアク・ミトゥナの背後に誰かが立っていたのを見たらしい。若い男のようだったが、ココ・カンパーニュには見覚えはなかった。 「ああ、いたいた。リーダー」 二人がちょっと首をかしげていると、他のゴチメイたちも集まってきた。 「暇でしたからあ、この美術館にたまっていた霧はほとんど焼いてきましたあ」 のほほんと、チャイ・セイロンが報告する。他のゴチメイたちも、見つけた霧は殲滅しながらここまでやってきてくれたらしい。 実際、この日以降、展示されている絵が何か事件を起こすことはなくなったのだった。 担当マスターより▼担当マスター 篠崎砂美 ▼マスターコメント
|
||