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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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再廻の大地

 
 
 再廻の大地の南部、荒野の真ん中にそのゲートは立っていた。
 規模としては、ゴアドー島にあるゲートと同じである。違いと言えば、雲海ではなく、大地から少し浮いた空中に浮遊しているということであった。
 さすがにゴアドー島の空港のように発達してはいないが、近くに空港施設がある。
 ゲートを通過してきた艦船は、いったんこの空港に立ち寄って諸手続きや補給をすることになる。
 無事に空港まで到着した緋桜ケイたちは、エンライトメントを下ろすと共に、空港関係者への聞き込みを行った。
 ゴアドー島から持ってきたソルビトール・シャンフロウ一味の写真を、空港の監視カメラで確認する。
 さすがに、ここで強行突破しようものであれば目立つので、敵も正規の手続きを踏んでニルヴァーナの地に降り立ったようである。
 ゲートからは、大雑把に南と北へのルートがあった。南にむかえば、ほどなくしてニルヴァーナ創世学園へと達する。北へむかえば、再廻の大地を縦断して中継基地へと行くことができた。さらに北へむかうと、繊月の湖があり、その南端には水上の街アイールがある。そこから西にむかえば、バンシーの塒へと続き、パラ実分校があった。
 聞き込みによると、敵はどうやらここで仲間と落ち合った後に、飛空艇で北へとむかったようである。
「さっそく後を追うぞ」
 遅れた時間を取り戻すべく、緋桜ケイたちはエンライトメントに乗り込んだ。イコンのスピードであれば、うまくすれば追いつくことができるかもしれない。
 順調に再廻の大地を縦断して中継基地へと辿り着いたが、途中でそれらしき飛空艇を発見することはなかった。どうやら、敵はかなり先行しているらしい。
 再び、中継基地で聞き込みを開始する。いちいち足止めを食らっているようでもどかしいが、致し方なかった。
 しばらく調査して、やっと中継基地にある空港から大型飛空艇がバンシーの塒にむかったとの情報を得る。敵も、ここでいろいろと情報収集に時間を費やしていたらしい。いったい、何を探しているのだろうか。
 すでに、日付は変わっている。
 空港にあったレーダーの履歴によると、バンシーの塒手前の地点で、大型飛空艇の反応が消えている。どうやら、低空飛行に入ったか、着陸したようだ。
「そこが奴らの目的地か。急ごう」
 エンライトメントに戻った緋桜ケイと悠久ノカナタが、すぐに追跡を再開する。
 目的の地点にエンライトメントが到着すると、不審なイコンの残骸を発見した。
「なんだ、あのイコンは。破壊されたのか?」
「待て、照合してみる……。アニメイテッドイコンの一種のようだが」
 悠久ノカナタがデータを検索して、イコンを識別した。フラワシによって動かされるアニメイテッドイコンのバリエーションのようだ。外見はアニメイテッドイコンとほぼ同様だが、破壊されているイコンは、やや装甲強化されたより騎士風のデザインとなっていた。ちゃんとした使用者がいたのか、マントや剣や槍のような物を装備していた形跡がある。
「なんだか、どこかで見たことがあるような気がするイコンでもあるけど……。いったい、ここで何があったんだ?」
 何か引っ掛かって緋桜ケイが小首をかしげたが、思い出すまでには至らなかった。
「あそこに建物がある。行ってみるぞ」
 そばに小さな建物を見つけて、悠久ノカナタがエンライトメントを着地させた。慎重に周囲を調べてみるが、人の反応はない。
「降りて調べてみよう」
 緋桜ケイが、悠久ノカナタをうながした。
「うむ」
 用心して建物の中に入って行ったが、中はもぬけの殻であった。放棄したのか、逃走したのか、人の姿はない。
 イコンにしても、破壊されてからさほど時間は経っていないようだ。この場所に来るまでに、敵も時間がかかったらしい。
 建物の中は酷く荒らされていたが、どうやら鏖殺寺院のアジトの一つであったらしい。
「これは、どういうことなんだろう」
「何かと戦って、ここを放棄したか、全滅させられたというのは間違いなさそうだな。それにしても、ここは単なる隠れ家であったのか、それとも……」
 調べ続けると、地図のような物と数枚の写真が出てきた。もっとも、詳細なニルヴァーナの地図という物はまだ存在しないので、略図に近い物ではあるが。それでも、再廻の大地のゲートを起点として、西の方にマーキングされたポイントがある。また、写真の方は何かの人工物を撮影した物らしく、地下へ続く穴のようないくつかの入り口らしき物が映っていた。大きな入り口近くには、外で破壊されているアニメイテッドイコンの姿も映っている。
「地下遺跡の入り口か何かか。それを、鏖殺寺院がイコンを使って調査していたと……」
「その成果を、敵は奪おうとしているというわけだな」
「成果ねえ。それにしても、敵はどこへ行ったんだろう」
「ニルヴァーナに隠れたまま余生を過ごすとは思えないからな。敵が手に入れようとしている物は、反撃の手段であろう。すでに手に入れたのであれば、ゲートを通ってパラミタに戻るはず。まだであるのならば、この遺跡にむかったと見るのが妥当だな」
 悠久ノカナタの言う通り、鏖殺寺院が何かをすでに手に入れていたのであれば、さっさと本隊に合流しているはずだろう。それらしい手がかりはないので、まだ調査途中であったと考えるのが妥当だ。だとすれば、ここを襲ったソルビトール・シャンフロウのほしかった物は、何かがある遺跡の位置ではないのだろうか。
「よし、遺跡にむかうぞ。できるだけの情報は、ゲートに報告しておけ」
「分かった。急ごう」
 緋桜ケイは手早く情報を纏めると、それを中継基地経由でゲートへと送った。