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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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「情報管制は大切なんだな」
 ヘルタースケルターに乗り込んだブルタ・バルチャが、ゲートを利用した通信回線を常時接続に設定した。そのままゲートを警備しつつ、パラミタに残ったジャジラッド・ボゴルらと連絡が取れるようにする。仮に敵の目的がパラミタ側にある場合でも、これですぐに連絡がつくというものだ。
「本隊が来るまでに、中継基地にある情報管理室とゲート、及び、各イコンとのネットワークを確立するぞ」
「はーい」
 空港に駐機したブラックバードの中で、佐野和輝がアニス・パラスに指示を出した。さっそく、アニス・パラスが膨大な情報処理を開始しようとしたところで、コンコンとブラックバードのキャノピー部分にあたるコックピットハッチを叩く者がいた。機体モニタに映る衝撃表示に、アニス・パラスが機外カメラの画像を切り替える。
『い〜れ〜て〜くださ〜い』
 ブラックバードのそばで、小さな鳥型イコンのような姿のギフト、スフィア・ホークがクルクルと飛び回っている。
「わーい、スフィアちゃんだあ!」
 すぐさま、アニス・パラスがコックピットハッチを開いた。すぐに、スフィア・ホークが飛び込んでくる。
「よしよし」
 膝の上にちょこんと乗ったスフィア・ホークをアニス・パラスがなでる。
「よし、無事合流できたな。スフィア、アニスのサポートを頼む。作業急ぐぞ」
「はい」
 佐野和輝に言われて、アニス・パラスとスフィア・ホークが声を揃えて答えた。
「やっぱり、情報っていうのは、この目と耳で生で触れてみねえとなあ」
 佐野和輝が中継基地の情報管理室とデータ通信での接触をはかる一方、国頭武尊は直接中継基地へとDS級空飛ぶ円盤に乗ってむかった。
 
    ★    ★    ★
 
「よし、新武装の搭載作業をするぞ」
 輸送艦に曳航されて空港に着地したバロウズを前にして、夜刀神甚五郎がパートナーたちに言った。必要な機材は、イーリャ・アカーシたちのように、すでに空港へと運んできてもらっている。
「まったく、よくこれまで二人だけで、このデカブツを動かしてきたものですよ。感心しますね」
 さっそく機内オペレータ席を増設しながら、阿部勇が言った。
「わーい、これで四人で分担して操縦できるようになるんですね。今まで、すっごく大変だったんですよー」
 凄くほっとしたかのように、ホリイ・パワーズが言った。
「もちろん。機体モニタと、火器管制と、操縦と、索敵とに、きっちりと役割分担できますよ」
 阿部勇が請け負った。さすがに広いバロウズのコックピットでは、充分にスペースを取ってパイロットシートを配置できる。
 夜刀神甚五郎の方は、ブリジット・コイルと共に艦載用荷電粒子砲の取りつけを行っていた。最終的な作業は阿部勇にしてもらうとしても、固定作業などは夜刀神甚五郎たちでも充分にできる。
「作業急げよ。フリングホルニが到着するまでに、なんとか終了させておきたいからな」
 夜刀神甚五郎が、パートナーたちを急かした。
 
    ★    ★    ★
 
 空港の滑走路から大きくはみ出る形で、土佐が着陸した。
 内部のイコンデッキで、イーリャ・アカーシが、空港に届いていたイコン用パーツを受け取る。
「よおし、注文しておいたパーツは、ちゃんと届いているわね。最終調整、開始するわよ」
 イーリャ・アカーシが、フィーニクス・ストライカーのハードポイントにインファント・ユニットを搭載していく。問題は、コントロールユニットの方だ。こちらは、微妙な調整が必要となる。
「こちらも、同時進行で作業進めるよ」
 ジヴァ・アカーシは、E.L.A.E.N.A.I.への機内オペレータ席の設置を開始した。
 こちらは、回路の接続だけで機能するので、フィーニクス・ストライカーよりは作業が簡単になる。修理と武装の換装の方は、すでに回廊内を航行中に完了している。
 同様に、富永佐那のファスキナートルの修理と、桐ヶ谷煉から預かっているセラフィートの修理と換装も完成している。
 ファスキナートルは、富永佐那たちと共に土佐でアディティラーヤへとむかう予定だ。セラフィートの方は、後からやってくる桐ヶ谷煉に引き渡すため、空港の格納庫へと移された。
「お手数をかけました」
 設置の完了したE.L.A.E.N.A.I.を受け取った非不未予異無亡病近遠が、ジヴァ・アカーシに礼を言った。
「最終的な確認と微調整はそちらで行ってくださいね」
 仕様書を渡すと、ジヴァ・アカーシがイーリャ・アカーシを手伝いに走っていく。
「さあ、みんな、乗り込みますよ」
 非不未予異無亡病近遠が、パートナーたちをうながした。
 E.L.A.E.N.A.I.のコックピット位置は、以前巨大な光条石のあったスペースへと若干ずれてはいるが、内部からでは違いは分からない。
「ちょっと狭くなってしまいましたわね」
 四つならんだパイロットシートに座ると、ユーリカ・アスゲージが開口一番そう言った。スペースは確保したものの、やはり以前よりはシートがコンパクトになっているので、あまり余裕はない。とはいえ、小柄なユーリカ・アスゲージや、アルティア・シールアムにとってはさほどではないはずなのだが。
「これで、周囲の監視がより広範囲になりますね。二人よりも、三人で監視した方が、敵を発見しやすいでしょうから」
 シートにぴっちりと身体を収めながら、イグナ・スプリントが、コンソールのモニタを確認しながら言った。
「それに、みんなで相談できるというのも、大きいでございますね」
「ええ、そうですわ」
 アルティア・シールアムの言葉に、ユーリカ・アスゲージが後ろを振り向いてうなずいた。イグナ・スプリントの方は、コンソールでセンサーをいろいろと切り替えることに夢中になっている。
「さあ、E.L.A.E.N.A.I.を移動させるよ」
 非不未予異無亡病近遠が、三人をうながした。このまま土佐に乗っているとニルヴァーナ創世学園の方へ連れていかれてしまう。フリングホルニと合流するために、E.L.A.E.N.A.I.と共に非不未予異無亡病近遠たちはゲートで待機する予定であった。
 非不未予異無亡病近遠がシステムを起動させると、各シートのコーンソールが明るく光を放った。
「機関、武装、異常ありませんわ」
「進路クリアです」
「発進、どうぞでございます」
「E.L.A.E.N.A.I.発進します」
 パートナーたちの確認をへて、非不未予異無亡病近遠がE.L.A.E.N.A.I.のホバリングを開始した。
 軽くコックピットが傾いたと思う間に、E.L.A.E.N.A.I.が一メートルほどイコンデッキの床から浮かびあがる。そのまま、微速でカタパルトを進んで行く。土佐は現在連結状態であるので、カタパルトが使用できないからだ。そんなことをすれば、他の船体に衝突してしまう。
 イコンデッキから外に出ると、E.L.A.E.N.A.I.は停止して上昇に転じた。正面に巨大なリング状のゲートが、眼下に空港とそこに停泊する艦船群が見える。
「視界、良好です。着陸地点サーチ、ポイント送ります」
 センサーを見て、イグナ・スプリントが言った。
『着陸しますので、離れてくださいませ』
 機外へと、アルティア・シールアムがアナウンスし、E.L.A.E.N.A.I.が安全に滑走路へと着陸した。