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フューチャー・ファインダーズ(第2回/全3回)

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フューチャー・ファインダーズ(第2回/全3回)

リアクション


【3】


 その頃、東 朱鷺(あずま・とき)東 朱鷺子(あずま・ときこ)は第9地区にいた。
 このナインポートは、各地区を行き交う定期船が集まる場所。今のところ名前が出ていない第1から第5までの地区にも、定期船に乗り込めば行けるかもしれないと考えた。
 朱鷺の使う八卦術・参式【震】で素早く船に密航し、行く先も知れない船旅に。
 手の甲の数字が200ほど減ったあたりで船はどこかの港に到着した。
(……着きましたね。行きましょう)
 慌ただしく乗り降りする人の間を、八卦術で目にも止まらぬ速さで下船する。
 そこは見渡す限り緑の空間。これまでの地区とはまったく様子の異なる場所だった。
「ほとんど民家が見えませんね。農園のような……なんでしょうか、ここは?」
「……あ、朱鷺。こっちに何か来ます」
「おめぇらそっだらとこで何してんだぁ?」
 首に手ぬぐいを巻いたもじゃもじゃ髭の大男が、野菜の入った籠を抱えて現れた。
「その……ここは第何地区なのでしょうか?」
「ここは第27地区だっぺしたぁ。農園地区だべよ」
「の、農園地区……!」
 大男はそこに生えてたトマトを取って二人に食べろと渡した。
「すごく甘いです……」
「んだべぇ。オラが手間ひまかけて育てためんこいトマトだぁ。山ほどここで作ってぇ色んな地区に届けてるだぁよ。ほら、こっちの野菜も。そっちの野菜も食ってみてくんろ」
 二人は両手に抱えるほどたくさんの野菜を貰った。
「もしかして、ここ……今後の役にあんまり立たない場所なんじゃ……」
「言わないで下さい。朱鷺もうすうすそんな気が……」
 朱鷺は首を振り、改めて尋ねる。
「あの、第1から第5までの地区のことはご存知ですか?」
「遠いからあんま行かねけど知ってるよ。グランツミレニアムの南部地区の番号だべそれ」
「南部地区?」
 グランツミレニアムは大きく東西南北の区画に分かれる。それぞれの区画は更に15の地区に分割される。南部地区なら1〜15。西部地区なら16〜30。東部なら46〜60。第27地区であるここは、31〜45の地区が集まる北部地区に位置する。
「ほ、北部地区……!?」
 また、数字の振られ方にも規則がある。都市の中央に位置する大神殿に近い順に若い番号が振られる。例えば南部地区なら、大神殿に隣接するのは1〜6の地区。そして隣接する地区は全て教会地区と定められている。
 グランツミレニアムは、大神殿を中心にそのまわりを教会地区が囲み、その外側に一般市民の居住区という構造なのだ。
「……と言うことは船に乗っても1〜5番までの地区には行けなかったんですね」
「教会地区に一般市民は入れねぇから、定期船は出てねぇべさ」
 二人は肩を落とす。
「まぁせっかく来たんだ。美味しい野菜をいっぱい食わしてやんべ。タシガン空峡で空賊やってるオラのおじさんもうめぇうめぇって食べてくれるだぁ」
「は、はぁ……」
「そう言えば、まだ名前言ってなかったべ。オラ、タゴーサクって言うだ。よろすくなぁ」