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リアクション
「聖剣かー。ロマンだよなあ」
個人で所有するには過ぎた力だと思うが、欲しがる気持ちもやっぱり解る。
ともあれ、まずは見つけ出すことからだ。
空から捜そうと思っていたが、既に誰かが空中を飛び回っている。
念の為にフェニックスアヴァターラ・ブレイドを飛ばしつつ、匿名 某(とくな・なにがし)は世界樹に向かおうと考えた。
「ま、頑張って捜してみるか。
……それにしてもあの地祇、聖剣のある場所知ってるっぽいのに俺達に捜させるとか……」
試しているのかな、と思う。
そんなぱらみいには今、大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が興味津々で話しかけていた。
「ぱらみいは、いつから此処にいるんだ?」
話題は、もっぱらぱらみい自身のことだ。
聖剣の在処云々は、話題としてはどうでもよかった。
「あのコと一緒に来たの」
ぱらみいは、世界樹を指して答える。
「じゃあ、好きな食べ物は? あと場所とか。
ちなみに俺は何でも食うし、好きな場所は一番大切な女の子の隣だ!」
大切な女の子。言いながら、その子のことを思い出す。
繊細な彼女を、どうしたら心の底から笑わせてあげられるか。それを、よく考える。
「何処ででも寝られるよ」
ぱらみいの答えに、康之は笑った。
「なるほど!」
食に関しては、割とどうでもいいらしい。
あれば食べるし、無ければ食べない。美味しければ嬉しい。そんな感じだった。
聖剣は、世界樹の中にあるのでは、と考えた者は多かった。
布袋 佳奈子(ほてい・かなこ)もその一人だ。
「多分、幹とか……あとは、ぱらみいちゃんの寝ていた洞の中とかが怪しいと思う。
ぱらみいちゃんの言い草からして、世界樹の奥深いところに、大事に隠されていると考えていいんじゃないかな。
世界樹か、その周辺……その辺りで考えるのが自然よね」
「パラミタの世界樹を司る聖剣……その力、試してみたいわね」
パートナーのエレノア・グランクルス(えれのあ・ぐらんくるす)が、もしも聖剣を見つけたら、と考える。
「聖剣と言われるからには、その使い手のなる剣士も選ばれた者だけという気がするけど、もし自分が聖剣を手に、その力を紐解くことができれば、剣士としてこんな名誉なことはないわ」
「エレノアは、聖剣を手にとってみたいの?」
使えるかどうかはともかく、近くで見てみたいな、とは佳奈子も思う。
「でも、聖剣を使う能力とか、聖剣を使って世界樹を復活させる方法とか、どうすればいいのかな?」
佳奈子は首を傾げた。
都築は、とりあえず持ち帰る、という方針のようだが、どうせならそこまで調べられないだろうかと思う。
「剣っていうけど……魔法の力も必要だったりしないのかな」
「そうね……。
戦いの為じゃなくて、世界樹の鍵を開ける、そういう使い方をするのだもの、武力が秀でているだけでは駄目なのかも……」
エレノアも、その考えに成程と思う。
「とにかく、世界樹周辺をよく捜してみましょう」
「ものすごく太いし、根も張ってるし、宮殿に絡んでいるしで大変だよう」
「感覚を研ぎ澄ませば、聖剣の放つ力を感じ取れるかもしれないわ」
「聖剣ならば、剣そのものが所有者を決めることもあるのではないかね」
「そういう場合もあると思うけど」
どうなのかな、とメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)の予想にエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は答える。
「強い力の籠められた剣ならば、望まぬ使われ方をしたくないのではないかな。
祀られてもいい物だと思う。いっそエースが剣を所有して、祀ってはどうだい」
「それ、此処から持ち出さない方がいいってこと?」
「ふむ……極論を言えばそうなるか。
しかし必要としている者がいる以上はそうはいくまいか」
「そうだよ。ジールに渡してあげなきゃ」
「ならばそれが終わったら、エースが預かればいい」
「そうできればいいけど……聖剣を持ち帰る為に此処まで来た教導団の人達に、反対されないかな」
「どうせ、碌なことに使うまいよ」
メシエは、地球人にあまり良い感情を持っていないのだ。
エースはとりあえず、ここでは深く言及しないでおく。
世界樹から話を聞くことを諦めたエースは、代わりにぱらみいに話を聞こうと姿を捜した。
ぱらみいは、都築達が聖剣探しをしていることより、自分の昼寝の興味の方が高いらしい。
目を離すと何処かで寝ているが、声を掛ければ嫌な顔もせずに答えてくる。
メシエは、この遺跡が荒らされることは好ましくないと感じていた。
「歴史の重さ、時間の流れの重さが解らない短命種が、浅慮から色々と壊しはしないかと心配だよ」
そんなメシエに頷いて、エースはぱらみいに頼む。
「今回、少し事情があるから、剣を貸して貰えると嬉しい。
此処を荒らしたくないし、聖剣の場所の心当たりがあったら教えて欲しいな」
「心当たり……」
「駄目? 俺達には、知られたくないかな」
「ううん? 何で?」
「だって、パラミタの地祇だったら、パラミタの世界樹は、俺達でいうパートナーみたいなものでしょ。
本来なら、その聖剣はぱらみいが所有するべきものだと思うから。
本当は渡したくないから、在処を教えてくれないのかな、とか……」
「ううん。違うよ。
お兄さんは、お願いする人を間違ってるの」
「え?」
エースはきょとんとする。
「聖剣は、わたしのじゃないの。だから、わたしは言わない。
お願いするなら、持ち主にお願いしてね」
「持ち主、って……」
ぱらみい以外に、此処に居る存在といえば。エースとメシエは顔を見合わせる。
「――あ、そうだ」
もうひとつ、エースはぱらみいの頭を撫でた。
「ね、俺とお友達になってくれるかな」
「ともだち」
「うん。
……アトラスが交代した件は、ぱらみい達には本当突然のことで、辛かったと思う、けど、世界が崩壊しなければ、ぱらみいにもまた友人が増えて行くよ。
まずは俺。駄目?」
ううん、とぱらみいは首を横に振る。
新しく関係が増えて行くのも、生きているってことだし、未来に向かうってことだと思う。
こんな言葉がぱらみいの慰めになるのかは解らないが、元気づけられたらいい、とエースは願った。
何処かにあるから見つけろと、そうぱらみいは言った。
「じゃあ、捜させて貰おうかな。よければ一緒に来ない?」
リネン・エルフト(りねん・えるふと)の言葉に、行かない、と言ったぱらみいだが、
「少し話をしたいの」
と続けると、ついて来た。
ぱらみいには、聖剣が見つかるかどうかよりも、昼寝の方が興味が深いらしい。
ヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく)は、ぱらみいとの対話をリネンに任せて、自分は守備に回る。
「あたしは周辺を警戒してるわ。
門の遺跡でも襲撃があったしね。いつそんな連中が後から到着して来るかも解らないし」
去り際に、ぱらみいに目を向けた。
「ひとつ、言っておくわ。
呑気に嘆いていても、ただ失い続けて行くだけよ。その内、全てをね」
「オレも団長と周りを見回って来るよ。どうも後ろを向いちまう」
フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)が、溜息をひとつついて、ヘリワードに続く。
無人の、寂しい遺跡。
荒廃した故郷の生家を連想してしまって、切ない。
そして、だからこそ、思うのだ。
「……不躾ですけど。
悲しんでくれるのは嬉しいけど、死者が一番嬉しいのは、自分の想いを先に進めてくれることだと思いますよ」
死を覚悟したこともある。
命を捨て、そして拾われて、生き長らえて、今ここにいる。
死地を歩んで来たからこそ、そう思うのだ。
空から遺跡を見渡して、フェイミィはウラノスへと語りかける。
「オレはアトラスのことは知らないけど、アトラスが大地を支えることになったのは、あなた方を助けたい思いもあったからでしょう」
伝わって欲しい、と願いながら。
遺跡のあちこちを聖剣を捜して歩きながら、リネンはぱらみいに語りかけた。
「私達が、聖剣と世界樹を捜しに来たのはね、守りたいから」
ウラノスにも、この言葉が届いて欲しいと思いながら。
ぱらみいは、リネンの言葉に頷く。
「アトラスのこと、みんな好きだったのね。
私にも……そういう人、いるわ。同じように死んじゃった人も。……私以外のみんなにも」
「……泣いた?」
「ええ。
でも、泣いているだけでは駄目だって思うから。だから守りたいの。
自信過剰って言われても……そんな人達が愛していたものを。
まだ生きている、みんなの大事な人を。
その為の力が、私は欲しい」
ウラノスに、世界樹の聖剣に、この声は、届くだろうか。
「……お願い。世界樹の聖剣。
アトラスの遺したものを守る為、力を貸して」
ぱらみいは、リネンを見上げ、それからじっと虚空を見つめる。
「……ウラノスちゃんはね、とっても大きくて、でも人はとっても小さいから、中々声が届かないの」
「……じゃあ、私の声も、聞こえていない?」
失望するリネンに、うん、とぱらみいの声も沈む。
「でもね、声が届きにくくても、心を伝える方法があるよ。
言葉よりも、ウラノスちゃんには届きやすいの」
ぱらみいは、そう言って、くる、と元来た道を振り向いた。
「お話、ありがとう」
そう言い残して、ぱらみいは戻って行く。
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