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伝説の教師の新伝説 ~ 風雲・パラ実協奏曲【1/3】 ~

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伝説の教師の新伝説 ~ 風雲・パラ実協奏曲【1/3】 ~

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 第二試合が始まる前に、幕間としてワンシーンを挟んでおこう。

「ヒャッハー! 昨日はちっぱい女にひどい目に遭ったぜ」
 一回戦で敗退したゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)は、今日も分校へとやってきていた。
 今回はまだ何も成し遂げていない。
 おっぱいを揉んでいないし、ヒャッハー! していないパラ実生たちをモヒカンにして渇を入れてやら無ければならないのだ。
「まずは俺の嫁に慰めてもらうぜ。エステしてほぐしてやろう」
 ゲブーは、収穫祭で嫁(自称)の千種 みすみ(ちだね・みすみ)が出し物をしている噂を聞きつけてそちらに向かった。鎧越しとはいえ、一度胸を揉んだ以上は、彼の嫁なのだ。
「美緒っぱいのアネキとかいうヤツもいるし、モミモミして嫁の仲間入りだぜぇ!」
「あいつよ」
 ゲブーが近寄っていくと、みすみが指をさす。
「何だてめぇら、このゲブー様に……、うわ待て何をすr!?」
 ゲブーは、いきなり近寄ってきた黒スーツの男たちにいきなり拉致されてしまった。
「地下室へ連れて行け!」
 どうやら彼らは、分校で暗躍する特命教師たちらしい。あっという間の出来事だった。これ以上無いほど怪しい決定的瞬間だったのに、誰も見ていなかった。
「どうしたの?」
 みすみと一緒に出し物をしていた女子生徒が異変に気づいてそちらに視線を向けたときには、もう誰もいなかった。
「さあ、“悪い子”を探していた先生たちがいたから、紹介してあげたんだけど」
 みすみは、ゲブーが消えていった方向を眺めながら言う。
「ま、いっか」
 


「どうしたの?」
 パートナーのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)に呼ばれて、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は振り返った。
 なんだか今、悪が一つ消えたような気がした。
とてもいいことだ。おかげで気力体力万全で絶好調だ。今日もいいことありそう、と美羽は微笑む。
「みんな待ってるよ。今日も応援するから、頑張ってね」
「うん」
 コハクに見送られて、美羽とサブパイロットのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は、グラディウスで舞台へ向かった。
 二回戦第二試合。
 観客たちの熱気も覚めやらぬまま、グラディウスはリングに迎え入れられる。観客たちから紙吹雪が飛ぶ。相当人気があるようだった。
「イーグリット・アサルトを改造した機体か。黄金ボディにマントって、すごいカッコイイのが出てきたな」
 対戦相手のシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は、シュヴェルト13ですでに登場していた。
 こちらもグラディウスに負けないほどの流麗でスタイリッシュな造形が目立つ。一回戦では、ありえない勝ち方をして沸かせた試合は記憶に新しい。
グラディウスもシュヴェルト13も極限にまでカスタムされており、操縦者の腕前も抜群だ。事実上の決勝戦と言ってもいいほどのイコンの戦いに、観客たちはすでに興奮気味だ。
「あれから、運営側に怪しい動きは無かったね。罠も特に無さそうだし、全力で戦って問題無ないようだね」
 サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)の台詞に、シリウスは頷く。
 双方が出揃ったのを見届けて、桂輔は開始を告げる。
 試合は、淡々と始まった。
「勝っても負けても、お互い恨みっこ無しで」
「もちろんよ!」
 シリウスと美羽が、遠慮なく激突する。
 グラディウスは、一回戦同様に、手に持った【ガトリングガン】と、肩部の【ミサイルポッド】を全弾発射してきた。
 シュヴェルト13は、初撃で致命傷を受けてはならないと、距離をとって【マシンガン】を掃射する。弾幕代わりと相手の機動力を封じ込めるのが目的だ。
 双方とも攻撃を防ぎながら、激しい撃ち合いになった。
 空中で爆発が巻き起こり、熱風が煽る。
「……」
「……」
 双方は、無言で同時に【デュランダル】を覚醒させた。
 何でもありと言う以上、『覚醒』もありだ。出し惜しみ無し。聖剣は、完全出力で出現した。
「……」
 美羽たちもシリウスの側も、余計な掛け声や言葉はいらなかった。
 イコンの全能力と熟練の操作技術で切り結ぶ。間合いの取り方も攻撃方法も高レベルで、美しい演舞を見ているような戦いが続く。
 見物客も、無言で見つめていた。
「……」
 グラディウスのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は、躊躇わずに畳み掛けた。彼女は熟練度が上限にまで達しており、美羽もそうだ。
 シュヴェルト13もサビクのレベルは極まっている。絶妙に引きながら、応戦していく。
 勝負を分けたのは、ごくわずかな差だった。
 戦いに全力を注ぎながらも周囲への警戒を怠らなかったシリウスと、何も気にせず優勝のみを目指す美羽と。
 思い切りの良さの違い。
「……!」
 シュヴェルト13をホバリングさせながら戦っていたサビクは息を呑んだ。脚の真下にリングが無い。相手の素早い攻撃をかわしているうちに、宙に浮いた脚が場外へとはみ出していた。
 ジャンプは失格ではない。何秒以上宙に浮いていたら負けというルールも明記されていない。すべては審判次第だ。
 このまま降下したら場外だ。サビクはブースターを吹かせながらシュヴェルト13をリング中央へと戻そうとする。
 それを逃さず、グラディウスが思い切り踏み込み、リング際ギリギリで攻撃を繰り出してきた。
「……っ」
 シュヴェルト13は、その場から前進できない。脚を使って踏み込めば相手を押し戻せるのに。真下に踏みしめる足場が無い。
「『飛行』を取りましょう、桂輔。さすがにジャンプと言い張るには滞空時間が長すぎます」
 上空から監視していたアルマが言う。
「そうだな。惜しいが仕方が無い」
 桂輔は試合終了を告げる。
「『飛行』判定により、勝者はグラディウス!」
 せっかく見ごたえのある激戦だったのに! 客席から判定にブーイングが飛んだが、桂輔は両手を広げて制する仕草をする。ここははっきりしておかないと、グダグダになる。断固たる決断だった。
「やれやれ、サビクが押し負けるとはね」
 シリウスはさばさばした表情で言った。
 勝敗は時の運だ。目一杯戦った上での審判の判定なら仕方が無かった。
「やるね。お見事な勝利、おめでとう」
 サビクも素直に美羽たちを称えた。
「ありがとう。あなたたちの分まで勝ち上がるから。っていうか、優勝するつもりだけどね」
 美羽も嬉しそうに微笑んだ。
 観客たちの騒ぎも収まり、健闘を称える拍手が沸き起こる。
「いやぁ、結構楽しかったな。後は気楽に遊んで帰ろう」
 シリウスは、シュヴェルト13を引き上げさせた。
「やったね!」
 コハクの声援を受けて、グラディウスも退場する。

 二日目の第二試合は終わった。