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伝説の教師の新伝説 ~ 風雲・パラ実協奏曲【1/3】 ~

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伝説の教師の新伝説 ~ 風雲・パラ実協奏曲【1/3】 ~

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「さて、ようやくマジで暴れられそうだな。少しは楽しませてくれよ」
 二回戦第三試合。
 一回戦では圧勝して見せ場の無かった柊 真司(ひいらぎ・しんじ)が、満を持して登場する。
 操るイコンはゴスホークだ。【鵺】のデータを元に、ポータラカ出身のイコン研究者が再設計・製造した高機動・接近戦特化型の試作機体で、反則級のオリジナル機体だった。BMI搭載で機体とパイロットが同調であり、さらには超能力スキルをイコンに乗った状態でも出力可能なため、どんな敵にでも対応できる。
 そのBMIによる超能力を使った補助担当に当たるのが、強化人間のヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)だ。機体の状況把握や索敵等の情報管制及びレーザービットの操作を受け持つようだ。
 スペックを見るだけで攻守ともに隙がなく、負けそうな気がしない。
「解説がずいぶんと吹いてくれちゃうよね。この試合を見たら、誰もがイコンなんかやめてパワードスーツ隊にしたくなるよ」
 対する鳴神 裁(なるかみ・さい)ソレンジャイで勝ち上ってきた。
 一回戦で見せた機動力もさることながら、もし攻撃を受けても耐えられるようバリバリに肉体強化されている。
 パートナーの物部 九十九(もののべ・つくも)は、裁に憑依しており、スキル【魔力強化】で身体を強化した上、【痛みを知らぬ我が躯】で痛覚を鈍化し、さらに【ジェネレーション】での回復力でパワードスーツ隊の高速機動による強烈なGによる身体への負荷に耐えられるよう試みが施されていた。
 魔鎧のドール・ゴールド(どーる・ごーるど)とギフトの黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)も、裁に装着され意識をどうかさせてあった。
 要するに、パワードスーツ隊とは言うものの、舞台に上がるのはカスタムされた裁一人なのだった。
「本当に、どいつもこいつも好き放題だな。まあいいけど」
 桂輔はリングに上がったゴスホークとソレジャイを見合わせてから、戦いの幕を開ける。
「では、第三試合、始め!」
 合図の言葉が終わるより先に、裁はゴスホークの死角から接近していた。視覚では捕らえ切れない速さだ。
 今回は遊びは一切なしだった。常識を覆すスピードでも裁の身体が耐えられるよう、ドールの【グラビティコントロール】での重力制御で強烈な重力を軽減しており、無茶な機動でもダメージは一切なかった。
 ヴェルリアの【ディメンジョンサイト】で裁の動きを捉えたときにはすでに相手はその場にいない。居場所を伝えるより先に、裁は移動を終えている。
 張り付かれたら面倒なことになる。ヴェルリアは攻撃より先に【ミラージュ】で幻影を作り出し【アブソリュート・ゼロ】で氷壁を作り出し行く手を阻もうとした。それをものともせず、栽は壁ができるより先にかいくぐってくるというデタラメな反応を見せた。
 真司は【プラズマライフル内蔵型ブレード】を使うことを早々と諦める。のんびり攻撃していては捕らえられない。【行動予測】でソレンジャイの動きを察知しながら、【エナジーバースト】でゴスホークを素早く後退させて間合いを取った。
 幻影の効果で、裁は一瞬標的に戸惑った。
 すかさず、真司は【ショックウェーブ】を放つ。相手は素早いが軽量級だ。命中すれば場外まで吹き飛ぶ。
 だが、裁の姿はそこにはなかった。黒子アヴァターラの【殺気看破】と【行動予測】が攻撃を察知していたのだ。
 裁は、ゴスホークの死角を求めて跳んでいた。今度はその動きにゴスホークがついていく。【G.C.S】二機装備の効力は伊達じゃない。相手に接近させないように、重力を張り巡らせ行く手を阻んだ。
 ヴェルリアは【レーザービット】で全方位から砲撃する。避ける隙間もないほどの絨毯爆撃だ。
 が、裁はこれもかわしていた。ドールの【光学迷彩】と【イコン整備】で、ほとんど視認できない上に、心理学を応用したミスディレクションによる実践的錯覚でよりステルス性の向上を図られている。黒子アヴァターラの【タイムコントロール】が体感スピードが遅く感じさせ、ビームの軌道を楽に見切っていたのだ。
 戦っている者同士以外は、目でも捉え切れない攻防が続く。
 観客たちは、何が起こっているのかすらわからず、唖然とリング上を眺めるだけだ。
 真司は【グラビティコントロール】で押しつぶそうとする。
 裁は、【アクティベーティングギア】、【修復の衣、魔鎧「ドール・ゴールド」】、【魔鎧「八式」】の回復力で、強烈な重力による身体負荷へのダメージを無視していた。ありえない防御だった。
(こいつは強えぇ。パワードスーツ隊のカスタムがこれほどとは)
 真司は、ゾクリと戦いの歓喜に打ち震える。少しどころか、十分に楽しい相手だ。
(あのゴス君、やるねぇ。このままじゃ埒が明かないよ)
 裁の決め技は、一回戦で見せたように直接操縦者を狙う戦法だ。だが、ゴスホークは取り付かせてくれない。回避しているだけでは勝てないことはわかっていた。
(仕方がないなぁ。決勝まで見せたくなかったんだけど) 
 機動力で相手を翻弄しながら、裁は決意した。一撃必殺で攻撃するしかない。
 同化していたドールがその意図を汲み取り、封印されていた能力を開放した。
 サクシードの奥の手スキル”覚醒”。リミッターを解除し、生身の能力を強化することで、引き出しきれてなかった機体の性能が全て引き出される。
 同時に真司も、惜しげもなく必殺技を出すことにした。
 覚醒し、リミッター解除した【ファイナルイコンソード】による神速の斬撃で一気に決める。
「頼むから、死ぬなよ!」
「吶喊!」
 ゴスホークの決め技と、ソレンジャイの最終兵器が正面から激突する。
 かわしていては届かないと判断した裁は、【レックレスレイジ】地球人用に【トリップ・ザ・ワールド】、ドールの【超人的肉体】など、ありったけのスキルを全て使って、相手の必殺剣を受けしのぎつつ突撃を敢行した。
 この攻撃で、多分イコンの破壊も狙える。
 ドオオオオオオオ!
 力場が弾け、空気が唸った。双方の渾身の攻撃が狙い過たず命中していた。
「くっ!?」
 装甲を破られた真司は驚きの声を上げた。必殺技を打ち終わった後で隙が生じている。操縦者を狙う相手の攻撃を防ぐため、【行動予測】と【ショックウェーブ】で先制していた。イコンに取り付いていた敵なら今の出命中したはず。叩き落すために、真司はゴスホークの【エナジーバースト】を再度全開で吹かした。
「……」
 相手の攻撃は飛んでこなかった。
「試合終了。勝者はゴスホーク!」
 桂輔は決着を告げる。
【ファイナルイコンソード】の衝撃に耐え切れず、ソレンジャイは場外に転落していたのだ。
「う〜ん、防御し切れなかったかよ。やっちまったなぁ」
 裁は、残念そうな表情で起き上がってくる。イコンすら殲滅させる【ファイナルイコンソード】を食らってぴんぴんしているとは、信じられないタフさだった。
「事故に備えて【プロフィラクセス】使ってたから。万が一でも即死は回避できると思っていたよ。それに」
「なんだか、勘で適当に避けたら致命傷を外せていたみたいですね」
 黒子アヴァターラは野生の勘で裁を守っていたようだった。
「悔しいね。パワードスーツ隊で優勝して、需要を高めようと思ったのに」
 裁は、名残惜しそうに試合を振り返っていた。
「いや、今ので十分にパワードスーツ隊の力を見せることが出来たと思うぞ」
 お世辞でも慰めでもなく、真司は裁に言った。
 十分に強かった。まさか、二回戦で必殺技まで出すとは思っていなかったのだ。
 観客たちも、目を疑うような戦いにしばしシーンとしていた。やがて、健闘の拍手が沸き起こる。
 パワードスーツ隊を選ぶかどうかは、個人の好み次第だ。だが、十分に印象付けることが出来たろう。
 真司と裁は、満足げに舞台を降りた。力いっぱい戦ったのだ。悔いは無い。
 観客たちに見送られながら、こうして第三試合は幕を下ろした。