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伝説の教師の新伝説~ 風雲・パラ実協奏曲【2/3】 ~

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伝説の教師の新伝説~ 風雲・パラ実協奏曲【2/3】 ~

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 さて。
(かなり強力な他校生たちが応援に来ているな。用心が必要だぜ)
 大勢集まった訓練生たちの中には、分校の不良グループのリーダー山田 武雷庵(やまだ ぶらいあん)とその一味が紛れ込んでいた。総勢二十人強といったところか。金ワッペン保有者である武雷庵が分校内での特権をフルに活用して集めた精鋭部隊だ。彼には、他にも子分たちがいるが、今回は連れてきていなかった。これから行動を起こす際チームの和を乱す者や足手まといがいては致命的だし、伝達役などに使った方が効果的だと考えていたからだ。
「……」 
 彼らは、とても物静かだ。点呼を取る教師たちの呼びかけにもしっかりと答え真面目に整列している。むやみに騒いだりヒャッハー! して目立つほど馬鹿ではなかった。
 特に武雷庵は、以前の騒動も含めて幾度も他校の強力な契約者たちに痛い目にあわされている。腹立たしく一泡吹かせてやりたいのは確かだが、同時に他校生たちの手ごわさを十分に知っているため、慎重に行動することにしていたのだ。
 さらには、忌々しい決闘委員会。あのお面モヒカンたちとモメるのは今のところ得策ではない。委員会は、武雷庵の不良グループを越えるほどの勢力を誇っている。せっかく手に入れた金ワッペンを失うつもりは無かった。
 まずは、しっかり訓練に取り組み、周囲を油断させる。作戦を実行するのはそれからだ。教師たちの言う事を素直に聞き、みんなと力を合わせてより良い訓練にしようとしていた。マークされてしまっては台無しになるからだ。
(あの巨乳女から、護衛を引き離す必要があるな)
 武雷庵は、規則正しく行進しながらエンヘドゥの行動を見つめていた。彼女をヒャッハー! とさらっていくための計画もしっかりと立ててある。彼が他校生より有利なのは、分校内に子分がたくさんおりネットワークが張り巡らされていることだ。時期を見計らって一気に仕掛ける。それまで待つのだ。
(くくく……。訳のわからない連中から、もう一度分校を取り返してやるぜ。俺様こそが真の支配者なのだ)
 彼と彼の一味は、他の訓練生たちと歩調を合わせて現場へと向かって行った。
「……ふむ」
 そして、そんな武雷庵たちを陰から監視しているのは清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)だ。彼もまた、武雷庵たちの計画を警戒して分校へとやってきていた。
 訓練中は【隠れ身】で姿を隠し、暴動が起きたら武雷庵たちが首謀者であるという決定的な証拠を掴むのだ。すでに【フラワシ】と必要なスキル、アイテムの用意も出来ている。
 敵を倒すのはパートナーたちの仕事。それまでは、青白磁は単独で武雷庵を追うことになる。
【描画のフラワシ】による渾身作マンガ『無頼庵☆』は、どんな出来になるだろうか……。





 ほぼ同時刻。
 粥やエンヘドゥが集合していた開始地点から少し離れたところで、むさくるしい一団が点呼を取っていた。パラ実生たちなのは確かだが、他のモヒカンたちとは漢密度が違っている。
「私が魁! 九条塾の教師である九条ジェライザ・ローズだ!」
 当時、まだ九条 ジェライザ・ローズだった長曽禰 ジェライザ・ローズ(ながそね・じぇらいざろーず)は、訓練生たちを前に宣言していた。
 彼女は、以前の収穫祭の頃から生徒たちに独特の訓練を施していた。分校で生き残るために、少しでも上位のワッペンを手に入れるよう日々精進を施していたのだ。かなり厳しく鍛えているが、逃げ出す生徒はあまりいない。その甲斐あって彼らは見違えるほど成長している。いまや、彼女の率いる一団は分校内でも存在感を発揮できるまでになっていた。
「さて諸君、防災訓練であるッ! 日ごろの成果を試し、高位ワッペン獲得を目指すまたとない機会である。全力で取り組むように!」
「押忍!」
 道場の生徒たちから元気のいい返事が返ってきた。これまでの鍛錬の賜物だ。彼らはいいが、道場に来ていないパラ実生たちにはやんちゃな奴らが多いので、避難訓練はどこまで持つだろうか。企画した教師たちは何を考えているのかは知らないが、無事に訓練を終えることが出来るよう彼女は取り組むつもりだった。
 と……。
「何があろうとも、オレたちは高位ワッペンを手に入れるんだね? もう後戻りはできないんだね、姉貴?」
 釣竿のような武器を装備したベス夫という訓練生が聞いてくる。彼だけ雰囲気が違っていた。
 ただのモヒカンではなく、頭に緑色の菜っ葉を生やしたような髪型が特徴で気で目つきもロンパリ気味になっている。彼は、収穫祭の時から道場に参加しており決闘での勝利を経て一皮向けていた。釣竿のような武器は、最近新調したらしい。彼の必殺兵器となっていた。
「わかってるよ、姉貴。ブッ倒すって決めた時には! すでに行動を終えているんだね!」
 彼は、ドガッ! と傍にいる道場生を蹴り潰していた。不意打ちだったため対応が遅れた道場生は、そのまま倒れて動かなくなった。
「フゥゥ……。初めて人をやっちまったァ〜。でも、想像していたよりなんてことはないな」
「体罰ッ!」
 ジェライザ・ローズは、言い終わるより先にベス夫を殴り飛ばしていた。なんだか、間違った方向へ覚醒した気がする。鍛えなおす必要があった。
「な、何でいきなり殴るんだよ、姉貴ィィ!」
「無駄なことをしやがって、ベス夫。だが、まあいいそれも含めて今回の訓練だ」
 ジェライザ・ローズは、さらにベス夫に蹴りを叩き込んでおく。彼は愛の鞭に慣れすぎてしまっていて、多少の刺激では通じなくなってしまっていた。
「おぶぐぐぐぐ……。ぐはっ……!」
 ベス夫は、地面でじたばたともがいていたが、やがて青くなり動かなくなった。
「よし、では諸君らには、防災訓練の監視と、ヒャッハー! するモヒカンの排除に当たってもらうッ」
 ベス夫は置いておいて、ジェライザ・ローズは道場生たちに伝えた。ならず者たちとの実践で彼らの腕を磨くのだ。その経験は今後のワッペン獲得の戦いでも役立つだろう。
「押忍!」
 道場生たちは、キビキビと動き始めた。
「行くぞッ! ベス夫! お前が一番離れられたら心配だ。ついてこい」
 ジェライザ・ローズは、ベス夫を助け起こすと励ましつつ一緒に活動を始めた。怒るばかりではためにならない。飴と鞭を使い分けることによって自覚と成長を促すのだ。
「う〜〜いッ!」
「返事は、はい、だと言っているだろうッ」
 注意を促しながらも、ジェライザ・ローズはベス夫に立派なワッペンをつけてほしいと思うようになっていた。いや、彼だけではなく全員にだ。バカな子ほど可愛い(?)ものだ。いつしか彼女は彼らを気にかけ愛情を注ぐようになっていた。
 その彼ら、道場の生徒達を引き連れて邪魔者を排除する。
 彼らはどこまで活躍できるだろうか。後ほど判明することになる。