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【アナザー北米戦役】 基地防衛戦

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【アナザー北米戦役】 基地防衛戦

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イリノイ州へと
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 基地での攻防の一方で、イリノイ州へと向かう契約者の一団がいた。
 まずはリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)とユニオンリングで合体したシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)および恐竜のキャロリーヌである。
 状況開始からすでに4時間以上が経過している。契約者たちは1000キロ以上の距離を移動し、イリノイ州の基地の防空圏内へと接近すると、コープスやギガースとの戦闘を開始した。
 リカインは防空圏外で、ギガースを相手に激しい戦いを繰り広げていた。
 リカインとシルフィスティの練度で融合すると、第二世代のイコンに相当するギガースは割と格下で、楽にあしらうことができた。そのためにイコンやギガースと戦いたがっていたシルフィスティは、結構欲求不満を解消できたのであった。
 とはいえ、高い練度のパイロットが乗る第三世代のイコンと対等に渡り合えるほどの強力なギガースには、今の自分たちの練度ではまだ手を出すことができない。そんなふうに感じるのであった。
 そして、現場に来ることができなかったパートナーのヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)に頼まれた通り、リカインはコープスたちに対して幻を発生させる【夢幻の宴】を使用してみせる。
 幻影で作り出されたキャロリーヌに対して、まずはギガースたちが攻撃を仕掛けてきた。次いでコープスも幻のキャロリーヌに対して攻撃を仕掛けてくる。さらに、【ミラージュ】でもう一人の自分を作り出すのだが、そちらに対してもギガースコープスともに攻撃を仕掛けてくる。
 このことから、ダエーヴァは幻が見えるしコープスも同様であるということが理解できた。
 そして、ここで思ってもみない出来事が起きる。シルフィスティの持つHCが、1000キロ以上離れたワシントンにいるHCを持った米軍の指揮官たちと情報的に連結されたのである。
「聞こえるかこちら……」
 米軍の士官からの通信に、リカインはHCの機能を思い出す。
(確かこれ、通信距離に制限はなかったっけ……)
 そして同時に、ヴィゼントのテクノコンピューターとも通信が繋がり、ヴィゼントの声が聞こえてきた。
「姐さん、聞こえますか!?」
「聞こえてるよ。どうしたんだい?」
 リカインはヴィゼントに対して聞こえてる旨を伝える。そして、ギガースもコープスも幻を認識して攻撃をしてきたことを伝えた。
 そのことに興奮を示したヴィゼントに半ば強引に押し切られる形で、リカインは20キロ圏内に入り込むことにした。上空を飛行するものが存在しない20キロ圏内。そこに入り込んだリカインは通信を維持したままでヴィゼントに語りかけてみた。
「20キロ圏内でも、契約者の通信手段であれば通信として機能するみたいですね。既存の技術で作られた通信機器はすべて使用できないと聞いていたから、自分たちの通信も使用できないのだと思い込んでましたが、我々契約者の通信技術はアナザーの通信技術とは全く体系が違います。だから、ダエーヴァの通信封鎖の効果も我々には及ばなかったのでしょう」
 ヴィゼントはコンピューターゲームの裏技見つけた子供のように興奮しながらリカインに話しかける。
「なるほど……これは盲点だったね」
 リカインがそうつぶやいていると、ヴィゼントが周りの契約者たちに何事かを話し掛けてる声が聞こえてくる。
「姐さん、防空圏内で戦闘しているイコンとの通信が繋がりました。これで戦闘が有利に運べます」
 この発見によって、契約者たちの通信網は復活した。そして、契約者の通信を起点にして防空圏内の米兵と米軍司令部との通信網も回復したのであった。
 これが、これこそが一輝が米軍の司令官たちにハンドヘルドコンピューターを配布したことの思わぬ副次効果なのであった。
 圏外に戻ってきたリカインはキャロリーヌの支援砲火を受けながら、再びギガースとの戦いを始める。
 
 その一方で密かに潜入しているのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だ。
 二人はいつものきわどい格好ではなく、海兵の偵察部隊のような重装備で全身を固め、教導団の特殊部隊の訓練で身につけた基本動作に忠実に都市部への潜入行っていた。
「これがセガール映画なら、どんな相手でも合気道で蹴散らせるけど……現実は甘くないわね」
 その言葉通り、セレンフィリティは戦闘は極力避けて巨大砲へと向かって進んでいたが、時折遭遇するレッド・キャップやクー・シーとの戦闘を避けることはできなかった。
 短距離だが敵の守備が堅いルートを選んでることもあり、基地に近づくにつれて戦闘の回数が次第に増えていった。それでも、敵を撃滅するよりは一点突破で敵の防衛網を突き破り、その間隙を縫って進んでいくのだった。
 
 そして、対空砲に攻撃されないように地面すれすれを超低空飛行で進んでいくのは富永 佐那(とみなが・さな)ソフィア・ヴァトゥーツィナ(そふぃあ・う゛ぁとぅーつぃな)が操るユノーナ・ザヴィエートと、柊 真司(ひいらぎ・しんじ)ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)の乗るゴスホークだった。
 佐那は、事前に撃墜された米軍機の交信記録から判明した対空陣地のおおよその数や位置の割り出しを図り、さらには現地米軍部隊との誤射を避ける為、現地の各部隊が最後に連絡して来た際に報告した部隊の大まかな位置を地形図にマークする。
 そして、イコンで歩行して現地を目指す、というのはエネルギー消費の観点からも疑問があり現実的とは思えまないと考えた佐那は同様の考え持つ真司とともに河川の上を低空飛行で移動しようとしていた。
 だが、イリノイ州にある空軍基地の周囲20キロには佐那が考えたような目立った河川がなく、州間高速道路64号線の跡地を利用して基地に近づいていったのだった。
 乗り捨てられ、或いはダエーヴァによって破壊され、放置されたままの車を吹き飛ばしながらユノーナ・ザヴィエートとゴスホークは進んでいく。
「大丈夫ですよ、ソフィーチカ。信じて下さい――私達なら出来る、と」
 ソフィーチカ――ソフィアのロシア名に呼びかけながら、佐那は進む。
「敵補足。ギガース……4」
 ヴェルリアがギガースを発見し、真司と佐那に報告する。
「了解。とっとと片付けようぜ」
 真司はそう言って剣にパイロキネシスの炎を纏わせる。
「ジナマーマ、行きます」
 ソフィアは佐那に補佐を頼むと、イコンを加速させた。
 そして、幾度かの戦闘を終え、ユノーナ・ザヴィエートとゴスホークはイリノイ州の基地へ、接近したのだった。