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【アナザー北米戦役】 基地防衛戦

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【アナザー北米戦役】 基地防衛戦

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01 防衛開始

 
 
 
 基地の防衛が開始されてからの特記すべき事項の一つに、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の巨大化、があるだろうか。
 美羽は【巨大化カプセル】を使用して50メートルサイズの巨人に変化したのだ。
 もちろん身につけているものも一緒に大きくなるので裸になることはない。だが――だが美羽は上半身は特注蒼空学園新制服で、下半身はあろうことかマイクロミニスカートであった。そのため一部米兵からは色んな意味で感嘆の叫びが上がった。
「アメージング……」
「なんてファンタスティックなんだ!!」
 そんな米兵の声が美羽の耳に届く。
 それはともかく、美羽はスカートの中身を気にしつつも一緒に巨大化した光条兵器である【ブライトマシンガン】を、戦闘機コープスや戦車コープス、そして各種ギガースに向けて撃ち始めるのだった。
 巨大化したからといってそれと一緒に武器が強くなるということはないのだが、それでも美羽の契約者としての練度は、それほど強くないギガース相手ならば互角に渡り合えるレベルだったために、割と楽に戦うことが出来た。 また、ブライトマシンガンは光条兵器であり使用者の精神力の続く限りはリロードの必要もなく弾数も実質的に無制限である。そして美羽にはそれを可能にするだけの精神力が存在したため、巨大化カプセルの効果が切れるまでの三分の間に、美羽の攻撃が途切れることはなかった。
 
 そして美羽のパートナーのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は歴戦の飛翔術で美羽の周囲を飛び回り、美羽が対応できないような小型の敵を相手にしていた.
「ファイア……ストーム!!」
 吹き荒れる炎の嵐が、コープスのセンサーを破壊しつつ怪物たちもまとめて焼き払う。
 コープス系のダエーヴァは、元々が精密機器が満載の米軍の兵器に融合して乗っ取っただけあって、高熱には弱いようであった。一時的にでもセンサーが狂ったコープスたちは互いに衝突、あるいはコントロールを薄なって墜落し、はたまた味方を誤射して多大な被害を出したのであった。
 
『よし、俺達も続けえええええ!!』
 
 そんな美羽やベアトリーチェの活躍に、米軍の兵士たちも奮起する。
 戦闘機がチャフをばらまきつつ敵のミサイルを回避すると、基地に備え付けられていた対空砲が戦闘機コープスやヘリコープスに向かって唸りを上げるのであった。
 そしてベアトリーチェが今度は【アイスブリザード】を唱えると、先ほどとは逆に氷の嵐がダエーヴァ達を襲う。
 これに巻き込まれた火車は目に見えて勢いを落とし、ヘリコープスは回転翼が結露して動かなくなり墜落する。あるいは精密機器部分が結露などでエラーを起こすなどしてやはりダエーヴァに甚大な被害をもたらしたのであった。
 
 基地上空に浮かぶのはコープスや米軍の航空戦力だけではなく、契約者たちが搭乗するイコン、そして戦艦がある。その戦艦のうちの一つがダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の操るラグナロクだ。
 ラグナロクの甲板にはカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が仁王立ちをしながら周囲を飛行するコープスやギガースを睨みつけ、カッと目を見開くと【召喚獣:フレースヴェルグ】を召喚する。
 巨大な鷲の姿をした怪物はその羽ばたきで突風を引き起こすと、戦闘機やヘリのコープスを、そして飛行しているギガースたちを地上へと落とす。
 コープスはそれだけで戦闘不能――撃墜――となるのだが、さすがにギガースはそうは行かなかった。それでも地に落ちたギガースに対して米陸軍の戦闘車両やパワードスーツが集中砲火を浴びせるので、カルキノスの攻撃のおかげで米軍の戦果が上がったのであった。
 そして、ダリルはラグナロクの内部からイリノイ州の米軍基地まで通信を飛ばそうとする。
 アメリカの基地は核戦争を想定し、何があっても連絡が途切れないように各種ネットワークで接続されている。ダリルはそれを利用して防空火器の制御を奪うつもりだった。
「……見つからない? 接続されていないのか?」
 しかし、基地の中枢である火器のコントロールユニットや発令に使うシステム等はスタンド・アローンか基地同士をつなぐネットワークとは別のネットワークに接続されているらしく、そもそも物理的に接触することが出来なかった。
「……確かに、敵対国家からのサイバー攻撃で基地の中枢が奪われるようなことがあれば危険だしな……迂闊だった」
 ダリルはそんなことを呟きながらもラグナロクのコンソールを操作していた。
「……ん?」
 ふと感じた手応えは、大統領救出時にコープスの残骸を通じてハッキングした時と同じものだった。
「これは、ひょっとすると……」
 しばらく操作していると、コープスの、というよりも米軍がもともと使用していた情報リンクのシステムのために使う演算用のコンピュータと、そこからつながるネットワークにアクセスできたようだった。それらはやはりインターネットの原型となったネットワークとは個別に形成されているのだが、ダリルが飛ばしていた通信を偶然コープスが受信したために、リンクシステムのネットワークに侵入できたようだった。
「これは……思わぬ行幸だ」
 ダリルは前回行ったように演算用のコンピュータをハッキングし、その活動を停止させる。その途端米軍や契約者たちと交戦していたコープスの動きが鈍くなった。
 戦術リンクシステムを持つ米軍の兵器たちは、自身のCPUを他の機体と並列接続することで膨大な演算処理をこなしているが、それでも追いつかない場合などは基地に存在するスーパーコンピュータにデータを回し、また、すべてのリンクシステムから得られる情報を逐次スーパーコンピュータにアップロードすることによって正確な戦況の把握を行っている。だが、ダリルがそのスーパーコンピューターを停止させたことで、コープスから巨大な頭脳を奪うことには成功したのであった。