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【アナザー北米戦役】 基地防衛戦

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【アナザー北米戦役】 基地防衛戦

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ダエーヴァ解析

 
 
 
 基地内部。鹵獲したギガースやコープスに対してイーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)ジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)は各種の調査・解析にとりかかっていた。
 二人はまず、米軍の技術者の力も借りて自爆装置などがないかを調べる。
 アナザーの米軍としては、各種兵器には取り立てて自爆装置をつけていないのだが(自爆させてもコープスに修復して利用されることからなおさらその傾向が強くなった)、念のためにということでX線などを浴びせて内部を透過するなどして調べてみる。
 それらの調査の範囲内では特に自爆装置などは見つからず、技術者も含めてイーリャたちは安堵をした。
「さて……【サイオニック・コネクター】起動。アクセス!」
 イーリャは機晶脳化をして機晶コンピュータに自身の脳を接続すると、各種の解析を始める。
 その間にジヴァはギガースに対して【テレパシー】で思念を送ってみる。
 すると、感情や思考自体は読み取れないものの、ギガースから何らかの思念が送り返されてきたことは感じ取ることが出来た。
「ねえ、ママ……」
 そしてジヴァはイーリャにそれを伝える。
「なるほど。どうやら何かテレパシー的なものは使用しているわけね」
 そこまでのことはわかった。だが、それ以上のことは現状の技術(アナザー、オリジン含めて)では解析不能だった。考えてみればインテグラルを研究しているアクリト・シーカーたちにもまだ解明できていない以上、専門家でもないイーリャたちには難しいことだったのかもしれない。
 とはいえ、コープス同士に関してはもともと兵器として存在する通信機能を利用していることは割とすぐに判明し、光学カメラ、赤外線センサー、集音センサーなどの各種センサー類を周囲の状況を把握するために使用していることもはっきりとした。
 そして、ジヴァはさらに【テクノパシー】がコープスに通用しないか試みた。
「あっ!」
 その途端、ジヴァは突然自分が複数に分裂したような錯覚を受ける。戦術リンクシステムの部分にアクセスをしてしまったのだ。
 そして、周囲に配置された複数のコープスたちがそれぞれの目で自分たちを見ていて、ジヴァは自分の視線で自分の全身をまじまじと眺めるという奇妙な体験をすることになる。
 さらに、ジヴァには理解できない思念が流れ込んでくる。だが、その中で一つだけ理解できること。それは目の前の人間たちの様子をつぶさに観察し、隙あらば殺せという命令。
(そうね。あの女とか隙だらけだわ……私がちょっと力を出せば……)
「っ!!」
 ジヴァは反射的に【テクノパシー】による接続を解除し、その場に座り込む。
「どうしたの?」
 心配そうに尋ねるイーリャ。
「コープス達、誰かの命令を聞いてた。目の前の人間たちの様子を観察し、隙があれば殺すように、って、テレパシーで命令を受けているみたいだった。そして、今ママを殺そうと私まで動き出したから、慌てて【テクノパシー】を解除したんだけど……」
 それを聞いたイーリャはジヴァの身を案じつつも、もたらされた情報に興奮を隠せないでいた。
「つまり、ダエーヴァは何らかのテレパシーを通じて命令を受け取っているのね。でもまって……それだと……」
 ふとイーリャは思いついてしまった。もしダエーヴァの兵器が常に上部からの命令を受けている状態にあるならば、これらを操ったりインテグラルナイトのように自軍の戦力として取り込むのは不可能なのではないか、と。
 現在捕獲しているギガースやコープスはすべて戦闘能力は失われるくらいにはダメージを受けているのだが、ジヴァの言葉によれば今現在でも自分たちを殺す機会を伺っているとのことらしい。
 つまり、それくらい造物主である指令級からの命令を受け取るための機構は破壊しにくい部位にあり、かつダエーヴァたちは超能力などの契約者が知っているものとは違う、現状では契約者の理解の範疇にある、何らかの原理を利用したテレパシーを通じて、命令を受け取っているということになる。
「いけない! 鹵獲しているダエーヴァの兵器をすぐに全部破壊して!!」
 二人の会話を聞いていた技術者たちにとって、イーリャが出したその指示は割と理解しやすいものだった。そのためにすぐにそれらは実行され、ギガース、コープス、その他の怪物たちは二度と復活できないように完全に破壊される。
「研究材料としては惜しかったのですが……」
 一人の技術者が、そんなふうにつぶやいた。
「とはいえ、あのままでは内部に爆弾を抱え込んでいるようなものでしたからね」
 別の技術者が、残念そうにしている技術者を慰める。
「しかし、どのような原理で命令を受け取っているのか。それを調べたくはありましたね……」
 さらに別の技術者が、悔しそうに言うのだった。
「そういえば、コープス同士は相互に通信して、カメラによる視覚や赤外線センサーによる視覚、それから集音センサーによって聞いた音を、相互に共有しているみたいだったわ。そして、それぞれの演算装置を並列にくっつけて、擬似的なスーパーコンピューターにしていたの。危うくあたしの脳も奴らの演算装置として利用されるところだったわ……」
 その言葉を聞いたイーリャは、ジヴァの身を案じつつもひとつの考えにとらわれていた。
(何らかの方法でコープスのリンクシステムを経由してテレパシーを受信している部分を特定できるなら、ダエーヴァの謎に迫るなり命令から切り離すなり、あるいは逆に指令級に対してこちらからテレパシーを送ることもできるかもしれない。とはいえ、それには奴らのテレパシーの原理を解明しないといけないのだけど……)
 そして、イーリャは今後の方針を練り始めるのだった。