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【アナザー北米戦役】 基地防衛戦

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【アナザー北米戦役】 基地防衛戦

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ユニオンリング

 
 
 
 基地防衛において無双の活躍を見せているのは牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)とユニオンリングで合体したシーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)
 そして同じようにユニオンリングで合体したナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)だった。
 
「全員ユニオンリングセット、我々の今を試す」
 出撃前にそう言ってアルコリアの号令とともにユニオンリングを装着すると、アルコリアとシーマが、ナコトとラズンがそれぞれに合体する。
 前回は本気すぎると他の契約者の参考にならないということで、それなりに遊びを取り入れていたアルコリアだったのだが、今回は『自分たちの今』を確かめるためにそれなりの装備とそれなりの意気込みで、本気で生身でのギガース撃破を目論んでいるアルコリアだった。
 そして――
「シーマデバイス接続、機晶槍オンライン。……神の杖、ご存知でしょうか? 宇宙兵器、それを携行化したジョークグッズ。輪ゴムとは違いますよ」
 黒髪の中に幾筋か銀色の髪が混じった姿のアルコリア=シーマは、試作型巡航機晶槍をギガースに向かって撃ち出す。
 目標とするギガースを確認後、まずは機晶槍を4発発射。一本は正面に撃ち最速で飛ばし、他3本左右に撃ち分け時間差で着弾させながら距離を詰める。
 そして、自動的に戻ってくるその槍が戻り次第再度槍を発射。前回とは微妙に当てる場所をずらし、ギガースの装甲の弱い部分を観察する。
「そこか!!」
 戻ってきた槍を、アルコリアは【急所狙い】で先ほどギガースが過剰に反応したポイントへと突き立てる。
 接近すると【女神の左手】にて虚空に禍々しい巨大な腕を出現させ、それを用いてギガースを掴み押さえつける。
「我は人なり! か弱き人なり! 唯の人の身にして、巨人に挑む者なり!!」
 シーマと混ざったために、その性格の影響を受けて熱血気味になったアルコリアが叫ぶ。
 それは【クライ・ハヴォック】で行われる警告の叫びにして、味方の攻撃を強化するある種の魔術じみた叫びだ。
 メインの性格となっているアルコリアが考察するところでは、今の融合体である自分はアルコリアとシーマの力を複合させた上でさらにある程度強くなっている、という感触だった。
 今の自分ならばここにいるほとんどのギガースはもちろんのこと、CHP013【セラフィム】ですらも相手取って戦えるだろう。そう確信できるほどに力に満ち溢れていた。
 実際、今戦場で共に戦っている第二世代の動きが遅く見える程度にはアルコリアの各種知覚能力は上昇している。そして、同じ第三世代でもストークやジェファルコンならば、ある程度熟練のパイロットが登場しても遅れは取らないだろうと、そんな感触を受けた。
 
 一方でナコト=ラズンはアルコリアレベルの強さを振るっているという程ではなかった。それでも、第3世代のなかでもストークやジェファルコンならば、互角に渡り合えるのではないか、そんな強さでギガースと戦闘を繰り広げている。
 
「我が作り手の懸想人、我が現身に選ばれし者。我が作り手…そして、我が殺めた総ての悪魔よ。嘆き苦しむことが許された…現世に【束の間の帰還】を!」
 ラズンの部分が魔鎧の素材とされた知的生命体の魂の記憶を、闇の力で一時的に蘇らせる。そして、それらの魂の苦しみを糧として魔力を増大させると、【召喚獣:フレースヴェルグ】を召喚する。
「『フレースヴェルグ』とは、死者を飲み込む者という意味を持っている。『コープス』の遊び相手には相応しいだろう? アッハハハハハ」
 ナコトの哄笑が響く。
 そのフレースヴェルグはカルキノスが召喚したものと同じ召喚獣だ。だが、ナコトとラズンが融合したことによって強化された魔力と練度のために、その召喚獣はカルキノスが召喚した時とは比較にならないほどの猛威を振るっている。
 新たに侵攻してきたコープスはもちろん、カルキノスの時は一時的に地面に降りるだけだったギガースたちが、今度は地面に叩きつけられるように飛行能力を奪われていく。
 
『照準……ってぇええええ!!!』
 
 米軍の兵士たちは戦車の、あるいはパワードスーツの演算装置と自動照準補正装置を使って、基地のスーパーコンピューターにデータを送信し、並列計算されて送り返された照準データを元に、ギガースやコープスに自動的に照準を合わせ、最も有効的と思われるような砲弾や銃弾の雨を浴びせる。

「我らは魔の書と魔の鎧、魔の道具なり。武具は使い手に支配される者なり。そして、使われることで使い手を支配する者なり」
 アルコリア達の力の前に、幾多の巨人が屠られていく。
 だが、その中でもひときわ格上の巨人がいた。
 右手は銀色に光る籠手、あるいは義手であり、同様に光る巨大な剣を右手に持っていた。
 
「銀の腕のヌァザ?」
 例によって米軍の中で神話の知識のある兵士が、その巨人が元にしたであろう神話・伝承の中から該当するものを引っ張ってくる。
 そのギガースが右手の剣を投擲すると、それは幾つもの小さな光剣に分かれて戦場に降り注いだ。
「なんてこった、ブリューナクとごっちゃになってやがる!」
 それは、ヌァザと同じ古代ケルトの神々のルー、あるいはルグなどと呼称される神が持つ槍の名称で、投擲すると必ず命中して元に戻ってくる、あるいは複数に分かれて敵を貫くなどとされている。
「わっちの思いんすに 、サルヴァは色々と試して実現可能なものをすべて盛り込んだのでありんしょう」
 兵士の言葉を受けて、ハイナがそんな感想を漏らす。
 そして以後、その巨人はヌァザと呼称されることになったのであった。