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リアクション
日奈森 優菜(ひなもり・ゆうな)の花火は、
大きくて雄大な花火、お父さんとお母さんと見た思い出の花火。白から青、桃、黄と広がってゆく。
花火を見つめたパートナーの柊 カナン(ひいらぎ・かなん)は優菜に寄り添いた。
「見て見て、優菜、上手く、キレイに出来てるよ、ほら優菜」
見えている、じっと見ている。思った以上に再現出来ていて、どうにもこうにも哀しい気持ちが湧いてきそうだった、のに。
「あっ、そうだ、最近、妹萌えってのに興味があるんだけど、やってみてくれない?お兄ちゃん、って言ってくれないかな」
怒り、軽蔑、不信感。そうしたものが一気に湧いてきて、そう、哀しみの代わりに湧いて来たから。
「バカじゃないの…」
優菜の顔が哀しみに濡れるのだけは、避けられたようだ。
セス・ヘルムズ(せす・へるむず)の花火は、
「いつもありがとう」の言葉に、アランをイラスト化した羽を添えた。
喧嘩をしていても、アランは僕を守ってくれた。それなのに。
パートナーのアラン・ブラック(あらん・ぶらっく)も素直に言葉を発せないでいた。
花火が上がったとき、いつもありがとうの文字がこの瞬間は、耳で聞くよりも心に響いた。響いた事がきっかけとなったのだろう、
「あの」
「あの」
と、言葉は重なり。この場で発する想いは一つ。
そう、伝える言葉は一つだけ。
「ごめんね」
ファル・サラーム(ふぁる・さらーむ)の花火は、
コユキに出逢った後に渡った橋。
花火を見つめて早川 呼雪(はやかわ・こゆき)は、も一度見つめた。
「あれは…」
封印を解いて貰って、初めて二本の足で立ってフラフラしている時に、コユキが手を引いて渡ってくれた橋。
「あの時のコユキの手、すっごく温かかった」
ずっとひとりぼっちで封印されていたボクには、とても嬉しかった思い出なんだ。とても大切な思い出なんだ。
「… ありがとうな」
呼雪はファンの頭をそっと撫でてやった。あの橋の画は、二人の永遠になろうと思えた。
シャラ・カプハ(しゃら・かぷは)とクラーク 波音(くらーく・はのん)の花火は、
ひまわりの花、そして青い光を発しながら高く空へ昇っていく。頂点に達した時に大きな音と共に現れる光は完全な球体。光は青色から赤色、さらに緑色に三たび色を変えながら広がって、一瞬光が消えたかと思ったら小さな破裂音が幾重にも重なる。破裂したのは広がった花火の先、小さな光が広がった球の周りを彩り、ゆっくりと光を弱めながら落ちてゆく
と、ここまで複雑なイメージであるのに、ほぼ完全に完成が見えている。
「あの花火を見た人は、見とれてくれたのかな」
「大丈夫だと思うけど、ダメだったかな」
「ううん、イメージ通り、伝えた通りだった。ありがとう」
「あ、うん、あたしこそ、ありがとう」
今日のこの場でこの広場の中で出会った友情。共に作り上げた結束も早速一つ、手に入れていた。
ジュリエット・デスリンク(じゅりえっと・ですりんく)とジュスティーヌ・デスリンク(じゅすてぃーぬ・ですりんく)の花火は、
人々が仲良く過ごす光景である。
が、何かが可笑しい。人と人が並んで立っているが、その手は隣の人の胸、もしくは股に当てられていて。これはこれで古代人類の壁画にも見えなくは無いが。
「どうしてあんな所に手が置かれるんですの!」
「どうしてあんなに中途半端な。マぐワって無いですわ」
「またそんなイメージをしたのですね、信じられません」
どうにも喧嘩になる、同じ思考にはならないようである。
しかし、人と人の繋がりとは衝突から強くなる。人々が仲良く過ごす光景、のイメージが一致する日は、きっと来るであろう、そう思いたい。
島村 幸(しまむら・さち)の花火は、
金色のハートマークである。
「どうして金色のハートなのです?」
パートナーのガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)の問いに、幸は自分の瞳を指差した。
「私の自慢、金色の瞳を。気付いてましたか?」
ガートナは、そっと目薬を幸に手渡した。
「せっかく美しい瞳をしているのですから、キチンとケアした方が良いでしょう」
この金色の瞳で、もっとずっとあなたを見つめるの。あなたの優しさも厳しさも、ううん、優しさと笑顔をたくさん、この瞳で見つめ続けます。覚悟してくださいね。
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)と和泉 真奈(いずみ・まな)の花火は、
小さなハートが付いた矢が、大きな赤いハートを射る絵が出て、時間差で「 Love & Piece 」の文字が浮かび上がる。
「やったぁ、成功だよ」
「えぇ、素晴らしいですわ」
真奈は表情よりも、ずっとずっとに嬉しかった。
「私が好きな言葉を使ってくれるなんて。愛があるから生きていられる、平和があるから生きたいと思える、この想いを伝えられるのは言葉じゃないかもしれない、そう思っていたけれど」
打ち上がった花火を見てみれば。
「言葉にして、文字にしても伝えられるかもしれない。いや、伝えられないかもしれないと考えた時点で、きっと伝わらなくなってしまうのでしょう」
無邪気に喜び笑うミリィ。その笑顔を見ているだけで。
愛と平和。ミリィと居る事で、私の愛と平和が欠ける事は無いと思われますわ。
藍玉 美海(あいだま・みうみ)の花火は、
「いつもありがとう」の言葉に、パートナーの久世 沙幸(くぜ・さゆき)の笑顔を添えている。
花火を見て、沙幸は問い寄った。
「どうして私の顔なの? 美海ねーさまの笑顔でお願いって言ったのに」
「さぁ、そうでしたかしら」
「あっ、やっぱりワザとなんだ、どうして」
「そんな事より、本当につけてきてないんですのね」
そう言って美海は沙幸の背後に回って沙幸のお尻を撫で触った。
「ひゃっ、ちょっとっ、ねーさまっ、やめてっ」
「百合柄の浴衣にも、サイドテールは似合うのですね」
続いて頭も撫でてみて。照れ隠し、なのでしょう。イメージを依頼したのは沙幸でも、その想いは美海も同じ。いつもありがとう。ストレートな表現には、やはり嬉しい、そう感じる。
日下部 社(くさかべ・やしろ)の花火は、
仲良さそうにしてる寺美と友達、である。
花火に自分の姿が映ったのはパートナーの望月 寺美(もちづき・てらみ)、寺美は花火をじっと見つめて、花火を見つめたまま社に言った。
「ねぇ社〜、どうしてあの中に社が居ないのかなぁ〜」
「ぁん?」
花火をイメージしたのは社。寺美と一緒に笑っている社の姿は、花火には居ない。
「アホ、自分が笑てる姿なんて、細かく思い出してイメージ出来るか?」
「… イメージしづらいから、省いたって事?」
「そうや。悪いか?」
「ふぅん」
寺見が笑ってるあの場に。自分が笑ってる姿はイメージしづらい、だから加えなかったという事は。
「よかった、私と居る社は笑ってたんだね」
「アホか、黙って見とけ」
顔を赤らめて背ける社。慣れない反応は、よう上手く誤魔化せんもんや。
佐野 亮司(さの・りょうじ)が開いた「やきそば」屋台。ベンチを設置してあるために、収容客数は意外に多い。水神 樹(みなかみ・いつき)とパートナーのカノン・コート(かのん・こーと)、リアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)とパートナーのパルマローザ・ローレンス(ぱるまろーざ・ろーれんす)、そして時枝 みこと(ときえだ・みこと)とパートナーのフレア・ミラア(ふれあ・みらあ)は顔を見合せ話し、やきそばを突きながら打ち上がる花火を見上げていた。
そんな屋台に宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)とレイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)も顔を見せた。
「そういえば、お前たち付き合うことになったんだってな、おめでとう」
「止めてよ、まだ上手く整理できてないんだから」
「さっき未沙の花火を二人で見たんだ。複雑だよ、今も」
「何を暗い事を言ってんだ。勝ち取った奴は胸を張ってなけりゃ、誰もが救われねぇだろ、ほれ、食え、サービスだ持ってけ」
屋台に客が途絶えない。亮司のパートナー、ジュバル・シックルズ(じゅばる・しっくるず)は屋台の隣でかき氷の出店を出している。亮司のキャラと品揃え。人が人を呼ぶようだ。
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