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作れ!花火を!彩れ!夜空を!

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作れ!花火を!彩れ!夜空を!

リアクション

 トラブル歓迎、ドンと来い!
 姫宮 和希(ひめみや・かずき)は広場の隅を警備していた。やましい気持ちがあるならば、それは隅へと誘われるだろう。
「おっ、アイツ、怪しいな」
 直感とも言える思考で広場の隅に移動してみれば、早速、不審者を発見した。しかし。
「んぁ? あぁ… 、んぁぁ」
 声をかけても返事がない。執事である事は服装で分かる、関貫 円(かんぬき・まどか)は俯いたまま、体も首もをフラフラと揺らしている。
「ん、んぅ、うんんん」
 関貫の顔が上がって、ん?瞳が閉じている、眠っている?
「おい、おまえ」
 姫宮が手を伸ばした時、関貫の体が大きく傾いた。膝が折れた故に、体が倒れてゆく。
 あっ、と姫宮が発する前に、関貫はセス・ヘルムズ(せす・へるむず)にぶつかってしまった。


 アラン・ブラック(あらん・ぶらっく)のパートナー、プリーストのセス・ヘルムズ(せす・へるむず)は俯きながら歩いていた。考えているのはアランの事。
「やっぱり言い過ぎた、かな。うん、少しだけ」
 ランチを一緒に食べた時、サラダしか注文しないアランに余計な一言を。
「うぅん、余計じゃない。アランは体を鍛えてるんだから、ベジタリアンでも、肉も食べなきゃ効率悪いんだ」
 アランの怒った顔。ラグビー弾は貰って来た、でもアランは姿を見せてくれない。
「分かってるんだ、余計な一言だったって、アランにも考えがあるんだって。でも、でも」
 どんな顔をしているのか、アランに会った時どんな顔をすればいいのか。分からぬままに歩いていると、いつの間にか広場の隅を歩いていた。そこへ、関貫 円(かんぬき・まどか)が、よろけぶつかってきた。
「あっ」
 関貫とぶつかった拍子に、持っていたラグビー弾が落ちて転がってしまった。ラグビーボールの如く、ラグビー弾は弾力良く不規則に跳ねて逃げてゆく。そんな忠実さは要らんだろうに。
「ん?何だ、あの光は」
 ラグビー弾を追うセスの先の足元に、薄い水色の光線が横切っている。よく見れば、広場の中に張られているように。
 ラグビー弾が光線を跨いだ、その瞬間、ラグビー弾が光り輝いた。
「えっ」
 追いついて、手を伸ばすセス、刹那に弾は爆発した。
 バアァァン。
 爆発音。セルは地面に飛ばされていた、しかし、その体を包んでくれている体があった。
「アラン?」
「大丈夫ですか? セス」
 アランはセスの体を心配そうに見ていった。
「アランこそ、大丈夫?」
「当然です、何の為に鍛えてると思っているのです」
「アラン…」
 駆け付けた姫宮も安堵した。爆発の規模も大きくない、弾は粉々になってはいるが、怪我人は無し。コンクリートも削れているが、直径一メートル程も無い。
「なるほど、広場から持ち出せないとは、こういう事か」
 葉月 ショウ(はづき・しょう)は目を光らせ、光線をなぞり走らせた。光線を跨ぐと起爆装置が作動する、つまり広場から火薬は持ち出せない。なるほど、ならば光線は広場を囲んでいるのだろう。
「光線を出し、エリアを構築している機械があるな。それが要か」
 勝利への道が見えた! 笑みを浮かべて葉月は再び人混みの中へと姿を消した。


 花火玉制作機の水晶に向かって気持ちを落ちつけようとしているのは蒼空学園のメイド、朝野 未沙(あさの・みさ)である。花火に込めるのは自身の想い、二人への想い。
「さっちゃん、ごめんね、辛い思いさせちゃったよね。レイちゃん、大好きだったよ」
 レイちゃんを好いた事、そして笑みを見せてくれた、さっちゃん。
「前の私に戻るから。整理して、乗り越えるから」
 肩の力がどうにも抜けない。花火を上げて、ケジメにする、そう決めたのに。
 焦りが焦りを生んでいる、落ち着かなきゃ、落ち着かなきゃ。そうして、ますます焦ってゆく。
 部屋の外から未沙を心配そうに見つめているのはパートナーの朝野 未羅(あさの・みら)である。
「がんばって、お姉ちゃん」
 小さな手を合わせて祈っている。瞳を閉じて、未沙以上に肩を震わせて。
「未羅?」
 振り向いた未羅は瞳を見開いた。広場を警備中の宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)が未羅に声をかけたのだった。
「あぁ、あぁ〜 あっち行こうよ、ねっ、私ばっちり案内しちゃうから」
「ちょっと未羅、案内って、どこへよ」
「あっちに屋台も出てるです、一緒に行こう、ねっ」
「いや、俺たち警備してるから」
「あっちを! 警備するです。ねっ、ねっ」
 背中を押して速やかに。お姉ちゃんが集中できるように。さっちゃんとレイちゃんを速やかに。お姉ちゃんを動揺させないでぇぇ〜。


 カメラを構えるは樹月 刀真(きづき・とうま)、顔を赤くしてマイクを向けているのは、パートナーの漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)である。
「あの、その、花火にはどんな想いを込めたの、ですか?」
 マイクを向けられてるのは蒼空学園のローグ、色無 美影(いろなし・みかげ)とパートナーのナイト、ミントラム・マリウォーター(みんとらむ・まりうぉーたー)である。美影は楽しそうに口を開いた。
「よく考えたら、あたしもミントも魔力無かったんだよね。困った困った、あはははは」
「笑い事じゃないよ、もう。大変だったんから」
「ミントが誘ったんじゃない。そこはちゃんと調べておいてくれないとぉ」
「うぅ、そうなんだけど。ごめん」
「そんな事ないよ、おかげで楽しかったから、許しちゃう」
 二人で話して進まり進む。大きな声を出して、月夜は割り入った。
「あのっ、花火には、どんな想いを…」
「あぁそうか、忘れてた、ごめんゴメン」
「ハートの形にしたの、大きなハート」
「そう。魔力が無いなら、どうやっても歪になるって言われたから、簡単な形にしたんだよね!」
「えぇ、心配だけど、楽しみだわ」
 浴衣姿に一杯の笑顔。美影の黒髪ポニーに、ミントラムの金髪ロングウェーブのコントラストが二人の笑顔を一際映えさせていた。
 シャッターチャンスは山の如く、波の如く。カメラを構える刀真は、固く困っている月夜の顔も、しっかり撮っていた。


「お次は、この二人ネ、どんな花火を作るつもりネ」
 マイクを向けてインタビューをしているのは、レベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)であり、向けられたマイクに動揺しているのは百合園女学院のプリースト、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)である。
「えっ、あっ、私?」
 レベッカの明るい瞳を受けて、メイベルはパートナーのセシリア・ライト(せしりあ・らいと)の顔を見て、困惑した。
「作る? って何の事?」
「あ、いや、それは、その」
「あっ、アナタ、こっち来テ」
「えっ、何? 何?」
 慌てるメイベルを見て、レベッカはセシリアの手を引いて連れ出した。
 連れ出すレベッカがパートナーのアリシア・スウィーニー(ありしあ・すうぃーにー)とすれ違った時、瞳だけでマイクを託した。
「承知しましたわ」
 マイクと共に渡された。場に残りしはアリシアとメイベル。アリシアはマイクをメイベルへと向けた。


 凛と立って、静に歩む。
「待て」
 広場を警備中の比島 真紀(ひしま・まき)は、仮面の男であるブレイド・オーバーウェルム(ぶれいど・おーばーうぇるむ)に声をかけた。
「あぁあ゛ん!」
 何て言いたかったが、怪しまれない事、これが優先だった。だから無言で応えた。
「なぜ二つも持っている」
 ブレイドは両脇にラグビー弾を抱えていた。列に並んで貰えるの一人に一つのはずで。
「我は今現在、親友の分の弾を運んでいる所だ。親友は昨日走りすぎて、足が痛くて動けないのだ、だから我が運んでいる。一つは我のだ」
 刺すようにブレイドの全身を見る真紀。
「よし。よい」
 表情を変えないように集中しながら振り返り、ブレイドは走り始めた。同時に一気に汗が溢れてきた。
「危ねぇ危ねぇ、声かけて来るなんて、思ったより警備が厳しいな。アイツ等、大丈夫か?」